鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 感想※ネタバレあり
いつも通り、箇条書みたいな感想で話があっちこっちしてしまってます。でも読んでくれると嬉しいです。
最後の方に、味方との間で少しいざこざがあるのが珍しいのかなと思った。マスタング大佐が復讐に燃えてしまって冷静でなくなっているのをエドワードが察知するシーンもあったりして、それだけマスタング大佐のヒューズへの愛が強かったことがわかったし、周りがマスタング大佐を信頼していて、普段と違うことに気付くのがまさに「人間」の「仲間」という感じだった。このシーンは頭に残った(終盤だからってのもあるだろうけど)。人間とホムンクルスの対比の大きな項目に仲間意識とか絆の有無があったと思うが、そこを意識させた後でのあのシーンだからなのかもね。
また、リコリス・リコイルとか炎炎ノ消防隊でも思ったが、主人公が敵を全然殺さない、故に苦しむ、という展開が煩わしく感じることが結構あった。しかし今回はまわり全員がそのようになるのではなく、マスタング大佐は自分には賢者の石をしっかり使って個人の考えを貫いていて良かった。
全体的なテーマとして感じたのは、「若さ」だ。第一印象で若いとは思わなかったマスタング大佐も、思想面でも見た目の面でも(2年後のシーンでちゃんと大人っぽくなっている)若かったのだとわかった。彼は自分がイシュヴァール戦で決めた、若く組織に染まっていないがゆえの青臭い思想を最後まで通したのがかっこいい。また、先ほど述べたような、エドワードやアルフォンスの人を殺さない、巻き込まないやり方を貫き通す姿勢も若さゆえである。リンの、自分の体を危険に晒してでも賢者の石を手に入れようとする様子も若さゆえだと思う(覇権争いもあると思うけど)。ホーエンハイムはこの物語の中心人物だと思うが、それでもどこか蚊帳の外にいるような、エドワードやアルフォンスたちの冒険には直接的に関わっていないような様子が感じ取れたのだが、それも若さという点で少し距離の遠い人物だから、とも思ってしまった。あとはアームストロング少将の「察してくれ、と言った時のエドワードの目が羨ましかった」というセリフにも彼の信念を突き通す若さへの憧れが現れていた。他には、エドが「殺さない」という信念を突き通すのを応援するような、見守るようなサブキャラクターたちの存在もよかった。マイルズ少佐との、キンブリー戦の前の場面とか、他もあった気がする。全体的に若者の情熱とかエネルギーとかを感じる、まさにアツいと思うような作品だった。そう思うのも、自分が今20歳になって、なおかつ中学高校生の頃のような楽天的な考え方とか自信とかを失っている状態だからこそ、かもしれない。より一層輝いて見えるのかもしれない。
全然関係ない話だけど過去の栄光に縋る、みたいなことはあまりいいこととはされないけど、こういう世界を救った、とかはずっと自慢話みたいに話し続けてもいいんじゃないのかなーと思う。(エドとアルに対して)
展開の構成について
物語が終盤に近づくにつれて「一方では劣勢だけれど、もう一方では優勢」みたいな展開が多くて、「あー絶望の時間かー」みたいに思うことが少なかった。たとえばブリッグズあたりからは別行動が多かったが、アルの方は順調だけどエドの方が危なくて、とか、どっちも危なくなったら今度はマスタング大佐の方がいい感じで、みたいな展開で面白かった。
常に謎を残す感じも良かった。「これが謎ですね…」みたいなあとに別の場所のシーンを続けるから少し忘れた頃に「あ、本当だ、これが謎だった…」とか、「あ、言ってたな、こういうことだったのか」と伏線回収的にも機能したりしていて面白かった。(「この国の地下はなんだか無数の人がいるみたいです…」の回収とかね)
リエールという最初の町に最後の方の場面で戻るのもあつかったな。
最後の方
エドワードは右腕だけ返してもらって足はまだオートメールだったが、それでも旅を経てそれでいいと判断したのがよかった。ウインリーとの恋が自然に進んでいて、体を元に戻すために旅に出たのに戻らなくてもいいや、と落ち着いたのが何だか嬉しい。だって、やろうと思えばアルフォンスが真理の扉に行って錬金術とエドワードの左足を等価交換すれば良かったはずだもん。
真理がフラスコの中の小人については「間違いだ」みたいなことを言って、エドワードには「正解」と言った。全てを求める貪欲なホムンクルスは間違いで、身の回りの幸せで満足そうなエドワードは正解。それが真理、というのは作者の考えなのだろうか。
ホムンクルスについて
ホムンクルスは化け物で全く人の持つ感情とは別物の感情で動いている、というような印象を最初の方は受けていたが、死ぬ間際になると人に憧れていたのが意外だった。エンヴィやセリム、グリードは「仲間」を羨ましがっていた。完全な存在になるため「お父様」から切り離された存在で人間を見下しているのにもかかわらず、どこか憧れがある様子がまさに人間のアンビバレンス、両面性そのものではないかと思った。
スカーについて
最初は復讐をしていただけなのに兄に託された命で本当の使命を果たそうとし、協力し始めてよかった。マスタング大佐の正気を取り戻させたところが特に良かった。
ブラッドレイについて
ブラッドレイは生まれた時からあんな環境で、自分は与えられた責務を全うしただけだ。死ぬ時に満足そうな顔で死んでいたのが、少し同情を誘った。
ホーエンハイムについて
ホーエンハイムも可哀想だと思った。最初は彼も黒幕なのでは、とか思ったが彼もなかなか強いられた道が困難だった。にも関わらず息子には愚弄されなかなか理解されなかった。最後にはクソオヤジ、と言われたことを嬉しがっていて、幸せの中往生を果たしたことがめでたく思われた。
少し疑問に思ったのは、何ですぐに殺さないのか、ということだ。アームストロング少将とかはセントラルに来るぐらいにもう殺してしまえばホムンクルス側としては良かったのに、とか思ってしまう。ヒューズはすぐに殺したのにな、って思った。
あと他の作品でもそうなので自分が苦手なだけだと思うが、この人物はここまで事実を知っていて、あの人物はあそこまで、とかが難しかった。
やる気になればストーリーを追ってこのシーンは、みたいなこともしたいが結構一気に見た感じで最初の方のストーリーは細かくは覚えていないことがあるので流石にやめておこうかな。
まあ気が向いたら追記とかします。
追記
マスタング大佐って名前、めっちゃいい