おそらくは優しいのだと思う
あれは3年ほど前、日光へ旅行に行った時のこと。
自由気ままに動き回っているうちに、予定のホテルに到着するのが遅くなった。
あちらの暖かい訛りのあるイントネーションで、『誠に申し訳ありませんが、このお時間からですとレストランが予約で満員です。』とのこと。『もうブッフェしか空いておりませんので・・・、でも、すぐそこにコンビニもありますしホテルの売店で軽食をお買い求めいただけます。』
Kちゃんも私も『ブッフェで良いですよ。ブッフェで。』と答えたところ、ホテルの方が『え?!そんな。3千円もしますよ。』というのでぶったまげた。
いや、3千円という値段は高いけれど、その値段の高さに驚いたわけではない。二人がそれを申し込めばホテルの売り上げになるではないか。
それに、ちゃんとレストランの入り口に値段も書いてあるので承知の上で申し込んだのだが。
『コンビニとか、売店とか・・・あ、あと、少し歩いたところになら飲食店がまだ空いているかも・・・』と、一生懸命力説する若きホテルマン。
な、何故にどうしても売店やホテル外の飲食店に行かせたがるのか。
もう歩きたくないし、せっかく旅行に来たので、何卒レストランに入れて下さいと頼み込んだ。
『ええっ?!ほんとに良いんですか?』と申し訳なさそうに、やっとのことで通してくれた。
もう、その従業員さんの言葉の全ての語尾に声には出さねど(たいして美味しくもないのに!3千円なんて!気の毒です!)という声がもれなく付いている気がした。
結果、そんなにまずくもなく、とびきり美味しいわけでもなく、旅をしているとそんなこともあるわいな、ということで楽しく遅い夕食を楽しんだ。
しかし、あの人は、客とこんなやり取りをしていて、上司に見つかったら怒られるのではないか?と不思議に思った。要するに『親身』という言葉が浮かぶ。
地方とは言え、誰もが知っている有名ホテルなのに、地方では、もれなく『親身』が付いて来る。(無駄使いして大丈夫ですか?)ということだろう。
そんなことを思い出したのは、今回の旅の途中で姫路駅に立ち寄った時のこと。
これも、誰もがご存じで古くからあるコーヒーショップ。多分全国展開しているのだろう。分煙方式でタバコも吸える。
で、そのカウンターで、Kちゃんは『カフェオレ』と言い、若い店員さんは『かしこまりました。』と言った。そして、私は『エスプレッソ。』と言ったのだ。
すると、返事が返って来ない。
顔をまじまじと見つめられ、その青年が小さなカップを私の顔面に近づける。『エスプレッソって、こーーんなに小さなカップですよ。』
・・・・・・・・・・・・。これまた暖かい訛りで独特のイントネーション。
すぐに我に返り、ええ、はい。そのエスプレッソカップにエスプレッソ、入れて下さい。(エスプレッソなんだから。)と答えた。
それだけでも充分驚くべきことなのだが、さらに青年は言う。『苦くて濃いですよ。大丈夫ですか?量も、こーんなに少ないのにこの値段ですよ。』
大丈夫です。どうかお願いだからエスプレッソ入れて下さい。
いくら地方とは言え、天下のド〇ー〇ですよ。
こういったことが一度や二度でないのは私だけか。地方だともれなく『親身』と『思いやり』に遭遇する。しかも、面白すぎる。
ちなみに、この旅の帰りに、再び姫路に立ち寄り、今度はスタバに立ち寄ったのだが、『トリプルエスプレッソをアイスで。』と注文したのだが、若干緊張した。何を言われるんだろ?と。
しかし、スタバは普通に出してくれたのでホッとした。
***
何、何?!
今度は、何見つけたん?!