見えて来るものもある
ある雨の夜のこと。
同じ街に住むナースさんが施設の玄関で私を待っていた。そう言えばこの人と、もう1年強一緒に働いて来たなあ…。と振り返る。
私が派遣で入って来た頃、丁度この施設は過渡期で前の看護主任さんが退職しようとしている時期だった。それで比較的古株の彼女が主任を継ぐはずだった。
右も左も分からない入職したての私は派遣だったので基本的には依頼されたこと、指示されたことだけをやって行こうとしたものの、その時この施設はそうも言っていられない時期だった。色々と間違っていることが沢山あったのだ。
それでやむを得ず言いたくもないことを意見しているうちに色んなことを任せられるようになってしまい……、今に至る。
そんなわけだから割と色んな人に嫌なことをされたし、特に元々の主任候補だった人がいい気持ちがするはずもなく敵意剥き出しにもされたが、しょうがないのよ、正しいから負けてあげられない、どうしても。
人の考え方のは色んな価値観があって良いけど医療だの福祉には最低限守らなければならないことがある。
色んなことがあったなあ。
先日の帰り道、時折色んなことを思い出しながら一緒に帰っていた。
歩幅が違う。話し方が違う。スピードも違う。でも一緒に歩ける。
雨が結構な勢いで降っていて、風が強い。
彼女の傘が風に煽られて、突然ボン!と裏返ったので、思わず夜道で爆笑してしまった。「漫画みたいだな!」
一頻り笑った後、「あのね」と彼女が言う。「Ohzaさんが主任やってくれて本当に良かったです。この間、皆んなとも話してたの。」
知ってる。
つい先日の、kさんの送別会の日、話しているのが聞こえた。照れくさくてトイレから出て来辛かった。
好きなものが違う。環境は違う。体格も違う。その他諸々色んなことが違う。
でも、だからこそ、面白くなって来ることってあるよね。
人と人との出会いとは不思議なもので、別々の道に分かれるまでに何度もツボにはまって爆笑してしまった。一年前は「何だと?この野郎!」ってな勢いだったのに。
出会ってから何度も降った雨が余計なものを流すかのように、良いところを沢山見つけられて、何だか、とても楽しくなって来た。