スピーカー人間(しかも壊れてる)
壊れたようにずっと喋っている人がいる。3ヶ月前だったか4ヶ月前だったか、私が派遣として働いている頃と全く変わらない。利用者様にもそうなのだが、介護職員にもずっと話しかけている。
私の姿を見つけるとしばし止まる。最初の頃からずっとそうだ。そして何か考えている様子が見受けられるが、構わずに仕事をしていると、すーっと近づいて来る。
本人は気づかれていないつもりなのだけど、私は職業病とでも言おうか、魚眼なのだ。前を向いていても下を向いていても、一挙一動が見えている。特に不穏な人の動きが。
そして介護職員の誰それがこうだった、ああだった、こんなことを言っていたと、耳打ちして来る。
本当はこの人、介護職員をかまっている場合ではなく看護の仕事を覚えなければならないのだが、何か月経ってもてんで覚えない。それもそのはず。人のことばかり見ていて喋ってばかりいるからだ。
反応が薄いので余計に混乱している様子だが、他の話題をふって来たりもしているが、それも人の悪口なので同じ。いくら頭を捻っても人の悪口か施設のアラしか話題が思いつかないらしい。
そうするとますます声が甲高くなって来て、こちとら頭痛が始まる。それだけなら良いのだが、利用者さんが不穏になる。
その人が居ると事故率、急変率が高い。こんな看護師や介護士がどこの病院・施設にも見受けられる。
『私、急変にあたるんですよ。だからその時、どうしたら良いのか詳しく知りたい。』と決まって仰るのもこの手のタイプ。
あたるのではなく自分が不穏な空気を作っているのだ。しかも、急変時の対応を訊いて来るものの、いくら説明しても覚えない。そうだった、そうだった。話している内容などこの人には関係がないのだ。できるだけ長いこと相手と話すことが目的なのだから。
『不安です。もう、ほんと、不安です。』
看護師さん。周りも不安です。
お願いだから喋る前に考えて。
自分と同じくらいの年代だが、ずっと壊れたように喋り続けて来たのだろう。
『こう見えて私、Ohzaさんと同じ年代なんですよ。』と彼女が言った時、全員が『いや、分かるよ。そう見えるよ。』という言葉を飲み込んだ。
人生はあっという間だ。
会話とはよくキャッチボールに例えられるが、投げるばかり、しかも暴投やデッドボールばかり。構えてもいない相手に投げつけて、自分は何一つ受け止めず中年・高齢になって行く人もいる。
仕事や職場を寂しさを埋める場所に使ってはいけない。願わくば看護や介護をそれに使って欲しくはなかった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?