まるでドラマーのように
最近、仕事へ行くと燃料を使い切ってしまい、よくKちゃんが「何か食べて帰る?」と言ってくれる。
いやいや、あるもので作るよ。と言えるのは一滴の元気が残っているとき。
しかし、それくらいになると、店を選ぶ気力もなくなって来ている。
そんな時に寄るお店の一つに、そこがある。女性シェフが一人で作っては出してくれるイタリアン。
もう一名ほど給仕のバイトらしき人はいるが、ほとんどその女性一人で全てを作り提供している。
予約なしの2名様?と訊かれる場合は、大抵カウンターに通されるので、料理している様が真近で見れるわけだが、いつものことながら見事。
あのう、なんというのか、博多の屋台のぴょん吉さんを彷彿とさせる。素晴らしく無駄のない動きである。客は一切待たない。
ドラムをたたいているかのように、四肢の全てを使ってスピーディーに料理するんだよね。
味はもちろん美味しい。でも、私たち日本人が馴染んでいるイタリアンとは少し違う。
フランチャイズに慣れていて、口当たりの良いクリーミーなソースを美味しいと思っている馬鹿舌なのだが、出て来るパスタに良い意味で期待を裏切られる。どのメニューのパスタでも茹でた後、手早くフライパンの上でソースを絡ませているのだが、これがどちらかというとパサパサ。トマトソースならば「ドライトマト?」という感じになる。
昨日の暗殺者のパスタと呼ばれるアラビアータ風のパスタは、何とかた焼きそばのように一部がパリッとしていたりする。本当に変わっている。
揚げたかのようにパリパリの皮つきニンニクが載っている。これがまた美味しい。
スプーンとフォークを使って食べるのは日本人だけだと聴いていたけれど、この店もフォークのみしか出て来ない。そんなことも忘れるほど夢中で食べてしまうのだが。
先のお客様が出て行くときと同じことを言ってしまう私たち。
「いやあ、幸せになりました。これでまた頑張れます。」と。
見るからにストイックそうな女性シェフの顔が笑顔でいっぱいになる。
プロの仕事って、どの業界でも凄いなあ。