旅するブレス
2~3日前の朝、勤務先のロッカーに着いて、さあ着替えようという時にブレスが弾け飛んだ。
天然石が周りにバラバラ!と飛び散る。
他の人も居るので恥ずかしいのだが、誰かが踏んで転んではいけない、そして守って来てくれた石だからなるべく拾いたいと思って拾った。
また使えるのかどうか?は、石を観てからでないと分からないが、とりあえずは出来るだけ回収。全部拾ったな?
そして、そのことを忘れていた帰り際、医務室に2粒ほど落ちているのを発見。シトリンとフローライトだ。
そして翌朝もいい加減全部拾い集めたと思っていたはずの更衣室に二粒発見。ラブラドライトとラピスラズリと水晶だ。
そして、二日後、何故だかマンションの玄関先に発見。どういうこと?
遠く離れた施設ではじけ飛んでから時間の経過と共に、全然違う場所から発見されている。というよりは、コロコロと私の目の前に現れるのだ。
弾けたときは何か変化の時、あるいは邪気を受けてくれた時と思うのだが、結局また集結して来ているというこの不思議。
まだある。
駅から施設までは結構距離があるのだが、その中間地点あたりに白い犬が居る。おそらくは地域に愛されている白柴。とあるお店屋さんの前に繋がれていて、夕暮れ時にいつも『可愛いなー。』と思って通り過ぎるのは、あえて道路向こうから。
というのも、この大型寄りの中犬、とっても可愛いのだが、どこか危険な匂いがする。元々柴はつんでれだと言われているけれど。
なので、怒らせないように、いつも道路向こうを通り過ぎる際にさりげなく見ているだけ。
それが、今日は『あれ?店頭に居ない?』と思っていたら、店の奥にペタッとうつ伏せに寝ているのが見えた。
『いたいた。良かった。今日も健在だ。』
そう思った瞬間、白犬がピン!と耳を立て顔を起こす。まっすぐに私を観た。道路向こうである。10メートル以上は離れている。ざっ!という音と共に起き上がり、まっすぐにこちらを見ている。
え?私?今まで目を合わせたことなど一度もないのに。
そして間違いなく私めがけて走って来た。
危ない!車にはねられる!と思った瞬間、今度は店の奥から伸びているリードがピーン!と張って止まった。ずいぶん長いリードだな。ビックリした。
今日ばかりは、とうとうその道路を渡り『覚えてくれたんですか?』と目の前に座り込んだ。ワンとも吠えない。ただ無言で尻尾を振っている。どうやら撫でさせてくれるようだ。
そう思って頭や背中や顎のあたりを撫でたのだが、大人しく撫でさせてくれて、あー、良かった、良かった・・・・では済まなかった。
この白犬が私の手のひらをペロッと舐めつつ、何かを手のひらに吐き出したからだ。
!!!!
ここにラブラドライト1個!何で持ってたの?
もはや訳が分からないのだが、犬はまた店の奥へすぐに立ち去ってしまった。
そう。まだ・・・というよりこれからも分からないままかも知れないけれど、一施設の狭い更衣室で弾けた天然石が一粒づつ私のところへ帰って来ている。
皆、(ビーズたちよ。)何しに行った?
それはともかく、一番謎だったのは、犬が渡してくれたこと。
あたかも式神を回収するかのように、この作業は当分続くような気がしている。