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写真の展示会に参加していました

 バーチャルフォトグラファーのみくにきです。ついこの間までスギ花粉でむせび泣いていたかと思えば、いつの間にか桜咲き、すでに散り始めています。今年は早咲きだったこともありますが、春という季節は、瞬く間に過ぎ去ってしまいます。え、次はヒノキ花粉? もうやめてくれ……。

 さて今回のお話ですが、2023年を迎えてすぐの1月。わたしと共に『Platform』の写真を担当しているオージュさんが主催するイベント「投稿写真展示会」に掲載される写真の募集が開始されました。

 当該のイベントは3ヶ月に1度、季節ごとにテーマが用意され、それに合った写真をVRChat内で撮影し投稿、展示してもらうという企画で、今回で7度目の開催となり、わたしは第2回から参加させて頂いています。
 今回のテーマは「冬」そして「影」の2つで、それぞれのテーマで撮影した計2枚の写真、もしくは2つのテーマを複合した1枚の写真を投稿することになっています。わたしは今回、それぞれのテーマで撮影することにし、どんな写真を撮ろうか、とワールドをふらふら散策していました。

 季節のテーマは開催時期に合わせて、春夏秋冬が順繰りに選ばれているのですが、去年の「冬」の展示会で、印象に残る作品が展示されていました。畳の敷かれた一室から、ガラス戸越しに外の冬空を見ているような写真でした。撮影者の話を聞ける機会があり、その内容に感銘を受けたのもありますが、ワールド自体の魅力に惹かれ、いつか訪れたいと思っていました。
 ある日Twitterを見ていたら、そのワールドの情報がタイムラインに流れており、それを手がかりにいざ出発(件の撮影者の話を聞いた際、どこで撮ったのかを聞きそびれていました)。ファーストコンタクトから約1年越しに訪れたその場所で撮った写真が以下です。

from autumn to winter|miyanohara

 撮って出し(撮影して加工をしないままの状態)がこちら。全体にピントが合っていて、パキッとした印象です。ここから自分が表現したい雰囲気、具体的には「冬の冷たい空気感、掠れた視界」を出すためにレタッチ(加工)をします。

タイトル「特別じゃない日」

 コントラストを下げ、テクスチャをぼかしてみました。撮って出しの物と比べて「冬っぽさ」が増したのではないかと思います。
 写真の意図としては、他の展示会参加者がクリスマスや年越し、初雪など、冬の「イベント」を投稿することが容易に想像できたため、そうではない「当たり前の冬の1ページ」を切り抜きたかった、というものがあります。自室のカーテンを開いたらそこにある、昨日と同じ風景。通行人が写っていても気にしない。別に狙って被写体に選んだわけでもなく、ただ偶然、そこに居合わせただけの知らない人。そんな不変的で、つまらない日々の中にある「寂しさ、冷たさ」を、冬というテーマに合わせてみました。
 強いて物語性を出すとするなら、公衆電話の中に居る人は「うわー、また雪降ってきたよメンドクサー」と思っています。それだけです。

 もう1つのテーマ、今回は「影」です。影を表現するためには「光」が必要であり、光を表現するためには「影」が必要である。表裏一体、切っても切り離せないこの2つから、如何に「影」を魅せるのか……という、なかなかに奥深いテーマでした。
 実は、このテーマを見た時から「やりたいこと」は既に決まっていて、それをどう表現するか、ということだけを考えていました。早速ですが、投稿したレタッチ後の写真を見てください。

タイトル「背中」

 河川敷の向こうに沈む夕日を、カメラに収めようとしている人の背中を撮った写真(という設定)です。
 色々な工夫が隠れています。まず撮影時、テーマが「影」であることから、光(この場合だと夕日を指します)にあまり目立ってほしくない。けれど上述の通り、光なくして影なし、だから光も最低限必要。その加減をどう落とし込むのか、頭を左右に揺らして、夕日の隠れ具合を調整しながら撮っていました。レンズフレア(太陽を写した時に現れる光の輪のようなもの)についても、わたしが普段使っているVirtualLens2というカメラと、VRChat標準搭載のカメラとの組み合わせで、角度を調整することが出来たので、綺麗に見せられる角度を探しました。
 次にタイトルです。撮影でどんなに工夫しても、人の目は暗い所より明るい所を見てしまうので、タイトルを「背中」とすることで「この写真の見せたい部分は背中なんだ」と、事前に情報を提示する方法を取りました。

Yayoi Riverbed|猫屋敷やよい

 こちらはレタッチ前の写真です。夕焼け空を燃えるような色合いに見せたかったので、そのあたりの調整と、陰影がはっきりと分かれるよう、影がより暗くなるように、コントラストを上げています。そうして出来たのが先の写真、ということになります。
 展示会場でレタッチ後の写真を見た方から「かなりがっつり(加工)やってるでしょ」と言われましたが、比較的ソフトな加工で済ませたつもりです。そう思わせてしまった原因がもう1つの工夫であり、アバターのシェーダー(見た目や質感に影響する設定)を「Standard Shader」に変更して、これ用にアップロードしたものを使用しました。

左はlilToon、右がStandard Shader

 VRChatのアバターは3Dでありながら「二次元的」な表現がされているため、所謂「トゥーンシェーダー」がよく用いられています。そのため(設定値によって変化はありますが)基本的には明るく、影が落ちにくい描画になっていることが多いです。それを逆手に取って、Standard Shaderの「三次元的」な描画を利用して「リアルな存在感」を写したのが今回の写真でした。
 これはかなり好評で、フレンドには「この写真が一番好き」と言ってもらえたり、展示会参加者による座談会が催された際には、他の写真もStandard Shaderにして撮り直したらどうなるのか、と「Standard Shader教」なる新興宗教が発足しそうになったりと、ともかく強烈な印象を残すことが出来たようです。

 第7回の投稿展示会については、すでに閉会となっていますが、現在第8回となる、春の「投稿展示会」の受付が始まっています。もし興味のある方がいらっしゃいましたら、参加してみるのも楽しいかもしれません。因みにわたしはすでに提出済みです。公開を楽しみにお待ちください。
 それでは、また次回。

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