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愛知県岡崎市QURUWA戦略から学ぶ水辺空間活用とウォーカブル@那珂川みらい会議公開セミナー2023レポート

 Plat Fukuoka cyclingが今年の5月開催した自転車利用者交流イベントPlat Recontre2023spring。このイベントは福岡市の南北を流れる那珂川の河川敷の活用し、ウェルビーイングな空間創出を目指す公民学連携の組織那珂川みらい会議に企画を行い実現したものになります。
 2023年10月14日に那珂川みらい会議の実証実験イベントに向けた公開セミナーが開催され、Plat Fukuoka cyclingとして5月の報告を行いましたので、なぜ那珂川に関わるのかも含めてレポートいたします。

那珂川みらい会議のサイトは下記になります。

那珂川がもつ福岡市の南北のグリーンインフラと自転車利用のポテンシャル

 那珂川は福岡市を南北に流れる河川で那珂川市を源流に福岡市の天神と博多の間、中洲を経て博多湾に注いでいます。都心部ではリニューアルした天神中央公園や、今後リニューアルする春吉橋仮橋空間と清流公園が加わり川沿いの賑わうことが予想されます。都心部から少し上流の百年橋あたりから上流部は工場が移転したところに大規模集合住宅が建設されるのに伴い河川空間が整備されてきました(那珂川ふるさとの川整備事業)。

安樂発表スライドより

 これまで竹下駅で終わっていた河川敷ルートが近年河川改修工事(川底を掘ることで流れる水量を維持、効率的に流すことで河川敷に土地を生み出す防災工事)により西鉄大牟田線の鉄橋より先にある河川敷とつながろうとしています。
 これにより将来、福岡市の真ん中を南北に貫く緑道空間が誕生することになり、自然豊かな那珂川市エリアまでを自転車で散策できる貴重なグリーンインフラのポテンシャルを感じています。これが那珂川でPlat Fukuoka cyclingが自転車利用者の交流イベントPlat Recontreを開催した理由です。

 グリーンインフラの例として紹介したのがドイツのフランクフルトにあるグリーンベルトです。フランクフルト市の3分の1にあたる森林や畑が1991年グリーンベルトの制度により保全されること。仮に保全エリアを開発し、その分緑地がなくなる分は別の場所で緑地を確保することを決めています。

JAL『ARORA』2021年11・12月号より
https://www.jal.co.jp/jalcard/service/agora/2111/html5.html#page=13

記事の写真でもわかるように自転車はスポーツウェアではなく、普段着でのんびり走っている様子が伺えます。このような自転車を含めた楽しみ方はスポーツというよりも都市に住む人が身近な自然環境と周辺施設をあくまで日常の延長である普段着でアクティブな方法でアクセスし、楽しんでいる姿といえます。
 那珂川の河川敷はこのようなアーバンアクティビティとしてのポテンシャルを持っていると感じています。

 公開セミナーでは九州大学名誉教授の島谷幸宏先生と名古屋大学准教授の三矢勝司先生による基調講演が行われました。

川を活かすー那珂川の過去と未来ー島谷幸宏先生

 九州大学で流域システム工学という研究室を長年率いられてきた島谷先生のレクチャーは、福岡市の河川を古代の歴史からその河川がどんな岩石から流れているかにより、川底の色が違うこと(那珂川の河川敷の道が白い理由)。また川の水というのは、農業において最も重要であることから土木技術を駆使した争奪戦(那珂川では佐賀側に流すための水道・蛤水道(はまぐりすいどう)まで造られ土木遺産)の歴史にはじまり、那珂川水系にある日本最古の用水路といわれる裂田溝などの日本の川づくりにおいても重要な川であることからスタートしました。

 那珂川の川づくりの参考例として、島谷先生が紹介されたのが福津市の上西郷川でした。ここでは一旦地域で合意がとれた案を覆して、ワークショップで揉めに揉めて合意形成にこぎつけたそうです。下記サイト参照ください。

 上西郷川の着手前のような風景はどこでも見かけると思います。上西郷川の例は、河川面積を拡幅して治水機能を持たせ、かつ角度を滑らかにすることで、人と水辺との親和性が創出されています。このプロジェクトは小学校との環境学習が当初から組み込まれており、川底の清掃などを授業の一環で行うことで常に作業がある環境を創出しています。福津市でのプロジェクトが周辺の住宅地としての価値や小学校の児童数などどれくらい変化があったのか今後川づくりとエリアリノベーションの観点から調べていきます。

 また福岡市を流れる樋井川では2009年に大規模は氾濫がおきたことをきっかけに流域の市民により会議体が発足し、流域治水の検討が島谷先生も入られて検討されました。

この市民会議の提言は実際に河川を管理する福岡県の河川整備計画にも盛り込まれ、ため池などの活用が盛り込まれており、川を管理する県とため池を管理する市が連携したかたちを形成した珍しい事例となっています。

 国土交通省の関東地方整備局には流域治水専門部署まで設置されています。

 島谷先生は水が下水道など見えないところを流れすぎることの恐ろしさから、都市のあまみず社会、コミュニテイ治水の考えを示していただきました。そして水辺のまちづくりには、多面的で重層的仕組みが必要で、例えばミズベリングはミドル世代や子育て世代には向いてるが、未就学児は難しいし、シニア世代には響きにくい、だから他にもいろんな多面的に働きかけを行う取り組みが必要でレクチャーを閉められました。

 那珂川はあらゆる世代、さらには国籍の人びとが行き交う空間になりつつあります。那珂川の将来像がみえたレクチャーでした。

岡崎市QURUWA戦略に学ぶ那珂川の河川敷からのまちづくりー三矢勝司先生

 名古屋県岡崎市の河川活用を含めた公園や道路空間活用を公民連携で進めたのがQURUWA戦略です。2023年にグッドデザイン賞金賞を受賞し注目を集めています。三矢先生はこの岡崎市の取組みに長年関わられてきました。

 注目を集めるQURUWA戦略の中心にあるのが籠田公園です。この公園がいまの姿になるもう一つ前のエピソードが非常に興味深い内容でした。まだ芝生もない土埃が舞うようなこの公園の再整備が動き出きました。土埃が舞う公園から芝生にしてほしいというのが地域の要望でした。しかし芝生の維持にお金かかるので難しいという行政の回答に対して、市民からお金があれば芝生にできるのか、ならlどうやったら市民と行政が一緒に考えられるのかを取り組まれたのが、公園愛護会の方々でした。メンバーの方には日々公園のジョキングしなぎらゴミ拾いをしながら思案し続けたそうです。

 その時籠田公園で開催していた手作り雑貨市である青空クリエイターズフェスタが盛況で回を重ねるごとに出展者が増えてました。そこでイベントの売り上げを公園の芝生の維持管理に活用しようという考えに至り相談がスタート。最終的には県の緑に関する税金を活用してプロの監修のもと、市民参加で芝生をはるイベントを開催。100人集まるかなと思っていたところに150人が集まり実現しました。 そして2016年に再び再整備が動き全面リニューアルしたのがいまの籠田公園になります。
 自治会などの広域連合による組織の他にも籠田公園は多様な世代が当事者意識を持って関わられているのがわかります。籠田公園みらい勉強会は子育て世代の方々がいまも継続して取り組まれています。

 水辺の活用において、三矢先生からは活用におけるポイントを示していただきました。一つは視点場をつくること。乙川では橋詰部分にデッキをつくり、橋の欄干をバーカウンターにしたり、川を眺めるポイントをつくり、人びとが川辺で足を止めるきっかけを増やしていきました。
 もう一つは河川敷の活動を周辺にアピールする
ことです。情報発信拠点を置いてみたり、情報交流拠点があるといいがそこではハコだけでなく、ヒトが重要で、三矢先生は丁寧な世話人として岩ヶ谷充氏のような、いつでも思いをどう受け止め、いろんなひとを繋ぐ仕組みが必要として、岩ヶ谷方式と紹介されていました。 

 最後に岡崎のQURUWAと福岡の那珂川エリアの地理的な関係は非常に似た配置をしていること。那珂川みらい会議がエリアのネットワークを広めつつあることから、岡崎乙川と福岡の那珂川は兄弟のような関係にみえるとしてエールをいただきました。

川づくりに自転車ができること

岡崎のQURUWAの川づくりでは、重要な役割を担っているのがONE RIVERで乙川リバーフロント地区かわまちづくり事業の実施主体の市民団体です。このコアメンバーである井上徹さんで、本業はサイクルぴっとイノウエという地元の自転車屋さんです。

自転車とアウトドアアクティビティの親和性は岡崎市での井上さんの活動からも改めて実感するものです。河川敷の広い空間で自転車のチャイルドトレイラーの試乗会や、上流部の山間部を利用したマウンテンバイクの取り組みも山で遊ぶことで川への関心やアクティビティによる新しいお金の流れも生むことに繋がっています。

そして、QURUWA戦略は、岡崎中心市街地の回遊性の向上とウォーカブルなまちづくりに向けて交通戦略も打ち始めています。自転車、ウォーカブル、交通戦略、道路空間再配分など先に進まれている先進事例が国内でも出てきました。那珂川エリア含め福岡市も追いつけるように活動していきたいと考えています。

公開セミナーの後半は今後の活動にいける地域や参画されている企業の方々のクロストークが続きます。この模様は今後のイベントと合わせての紹介しようと思います。
Plat Fukuoka cyclingは今後も那珂川エリアで活動していきますので、どうぞよろしくお願いいたします◎

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