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前振り的に、異邦人

映画を観るのは年に一度かニ度。そう相場が決まっていたのが、ここのところやたら映画づいている。
ノマドランドにミナリ、そしてアンモナイトと立て続け。その前に観たのは一昨年末の「お帰り寅さん」で、さらに前は『虎狼の血』だったかフリードキンの『恐怖の報酬』(ともに2018)だったか。
京都で観た『ヤクザと憲法』はもっと前。

◆ヤクザと憲法(予告編)

https://youtu.be/Ez7-yISNtI8

友人の会社が「日本映画作品大事典」を刊行。6月10日に出ましたからぜひ買ってください。
4万なんぼするけど。

【特設サイト】日本映画作品大事典|三省堂
百年を超える日本映画史を一望に見渡す、空前の作品データベース。『日本映画作品大事典』特設サイト

dictionary.sanseido-publ.co.jp

Facebookに宣伝兼ねて彼の書き込みが。俺は直ちにコメントした。「貴社ならやると思ってました」と。
※いつもなら「今すぐ買います」、そうコメントして実際に購読するのだが、今回ばかりはお値段が、その。

で、映画の話に。
俺は「ここんとこ映画づいててさ」。すると氏は

「ゴッドファーザーを観て原作を読んだら、気づきが沢山ありました」

うむ、俺もマリオ・プーゾは読んだぞ。映画を観たら、ふつう原作読むでしょう。
彼は外大のスペイン語を出た、ラテンアメリカの碩学。カルペンティエールにせよバルガス・リョサにせよ、友人に教えてもらったもの。そしてラテンアメリカ文学は恋愛だの反体制だのそんな小っちゃいことじゃなく、「世界」を表しているのに瞠目。驚愕した。
こんな文学があったのかと。

ドストエフスキーも確かに偉大である。が、あれは「人間」(とロシアの神)を描いているので、ちょと違う。
ガルシア・マルケス『百年の孤独』(※)を読んだ向き多かろう。あれもめちゃくちゃ面白いけど、入門編的にはアレホ・カルペンティエール『この世の王国』を読んでみて下さい。
『百年~』みたく長くはないし、とにかく感動的です。
※Facebookでの俺の名前、主人公の1人アウレリャーノ・ブエンディーア大佐からとってます。だって彼、俺にそっくりなんだもん。
※なのでワタクシを知りたい方は、『百年の孤独』をご一読方。

友人はラテンアメリカ専門だった ー 加えて言うなら女性ボーカリストと古いソウルミュージック好き ー のが、付き合ううちに徐々に、チャンドラーだのその元ネタたるフィッツジェラルドだの読むように。そしてゴッドファーザーというね。
でも松田優作ファンなのは昭和43年生まれだから。生年が昭和40年を境に、ショーケンファンか松田優作ファンかが峻別されます。←俺はもちろん前者です

とまれ、偶然同時期に件の友人と映画で一致したわけ。親友ってそんなもんよね。

先日『アンモナイト』の鑑賞前に、この予告編をやっていた。

◆ルキノ・ヴィスコンティ監督『異邦人』(1967)

https://youtu.be/qbzX83KzWnw

オリジナル・イタリア語バージョンでのデジタルリマスター復刻版。レアとか。
あっ、マストロヤンニだ! と思ったら異邦人でした。

アルベール・カミュの原作はマスト本。『ペスト』ほど骨太ではないし中編と言っていいほど短い作品だが、ガツンと来ますよ。「サラマノの飼い犬と(死あるいは生、なんならお前らも)等価なのだ。何もかも、何もかも等しいのだ」という。
「今朝ママンが死んだ」「何も変わったことはなかったのだ」という。この諦念というかニヒリズムというか実存的たるは、コーマック・マッカーシーにも通ずるが、マッカーシーおじいちゃんの方がずっと攻撃的。

◆『異邦人』と歌詞繋がりで『カーニバル』

https://youtu.be/_kSeK81zKOA

これ、俺の葬式で流される歌な。

しかしこの人(↓)に言わせると、映画版『異邦人』は原作とかなり違うそうな。

https://youtu.be/ty1MRO8gWDg

映画が原作と異なるのは宜なるかな。それはよろしい。いっぽう彼が指摘しているのは主人公ムルソーの表し方。
そすか。

詳しくは上記動画を見ていただきたい。が、そもそもムルソーを発達障害と断じているあたり、いかにもきょうびの若者。
特定の病気に固定しちゃった時点で原作の魅力が半減するし、哲学的な意味も毀損される。そういうことがこの人は分かっていない。末尾で「哲学的な意味」とか付け加えても、もう遅いのだ。『異邦人』、ちょっと読んでみよっかなーいう人々をドン引きさせちゃう、これは罪と言っても過言ではない。

まあ、そんな読みしか出来ない者の言うことだから、映画版だってホントかどうか。眉唾よね。

事実そうであるのかないのか。来月(?)この目で観て確かめます。異邦人言うても久保田早紀じゃないです。

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