電話 - 離れていても -
「もしもし?今いい?」
「うん、いいよ。どうした?」
「急に声が聞きたくなった。眠くない?」
「大丈夫だよ」
「きょう会社で怒られちった(笑)」
「何やらかしたの?」
「クリアファイルの中身、入れ間違えちゃった」
「重要なもの?」
「ううん、そうでもない」
「なのに怒られたんだ?」
「うん」
「ついてないね~。こっちは褒められたよ」
「何したの?」
「盲目のお客さんに一日中ついて、廻ってあげた」
「えらいね。大変だったでしょ?」
「まぁね。でも、しゃべりながらだったから退屈しなかったよ」
「やさしいなあ~」
「仕事だもの、それくらいやらなきゃ」
「わたしも褒められたい」
「褒めてあげようか?」
「褒めて・・・」
「毎日小さな手で一生懸命電卓叩いてキーボード打ってえらいね」
「もっと褒めて!」
「毎朝早起きして、お弁当作って、地下鉄で通ってえらいね」
「もっと!」
「いつも目が綺麗でかわいくて、タバコも吸わなくてえらいね」
「・・・」
「どうした?眠くなった?2時半だもんな。寝る?」
「逢いたい」
「俺だって」
「どうしてそんなに遠くに住んでるの?」
「そっちこそ。こっちにおいで。ディズニーランドあるぞ(笑)」
「行きたいけど行けないもん」
「まあ確かに・・・」
「早く逢いたい」
「もうすぐ逢えるよ。すぐ飛んでいくから」
「待てないよ」
「もうちょっと我慢して。プレゼント選んでる。楽しみにしてて」
「何くれるの?」
「今はナイショ。お楽しみに」
「わかった。楽しみにしてるね」
「もう寝る?」
「一緒に寝ていい?」
「もちろん」
「じゃあ左側に行くね」
「はい、おいで」
「あ~あったかい」
「これで眠れる?」
「うん、眠れる」
「じゃ、一緒に寝よう」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「ねえ」
「ん?」
「やっぱり早く逢いたい。あってほんとに一緒に寝たい」
「3週間後に511マイル飛んで行きますから(笑)」
「わかった・・・でも眠れない」
「じゃ、朝まで話そうか?」
「うん!(笑)」
「仕事で怒られても知らないよ」
「明日は怒られないから」
「じゃ話しよう」
「子供の頃のこと、聞かせて」
「わかった。あのね・・・」
朝6時まで
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