耳軟骨、鼻中隔軟骨、肋軟骨の中でどれが良いか?(3)
インターネットで調べると、耳軟骨、鼻中隔軟骨、肋軟骨、提供肋軟骨、メッシュ、人工骨(メドポア)など、鼻先を高くする際に使用される移植材料や物質に関する情報が数多く見つかります。
ただし、それぞれの長所や短所については、各クリニックが主に使用する移植材料や物質の長所をより良く説明する記事が多いため、これが混乱を招いているように思えます。
メッシュや人工骨(メドポア)、提供肋軟骨などの人工物質の短所については、多くの方がすでにご存知だと思いますので、ここでは当院で使用している耳軟骨、鼻中隔軟骨、肋軟骨について説明します。
重要な前提
• どの物質を使用するか、その論理的根拠については、医師によって意見が異なる可能性があるため、この文章が絶対的に正しいとは言えません。
• 当院では、提供肋軟骨は自家組織ではないため人工物質と分類し、使用しておりません。
また、長所と短所を単純に分類することは難しいです。なぜなら、短所と思われる点が別の目的では長所になり得るなど、これらは相対的なものだからです。そのため、長所・短所ではなく、臨床で使用する際の特性を述べる形で説明します。
さらに、当院では鼻中隔軟骨を採取する際、曲がった部分を矯正できる範囲でのみ採取することを基本としています。必要以上に採取しないことが重要です。もし曲がりがなければ採取しません。この部分について詳しく知りたい方が多いため、予めお伝えしておきます。
耳軟骨
1. 量が一定
• 耳軟骨を採取する際、耳の中心部分を軸として残し、上下の部分から採取します。両耳を考慮すれば、量的には十分と考えられます。
2. 形の変化のリスク
• 採取量が多すぎたり、採取すべきでない部分から採取した場合、耳の形が変わる可能性があります。特に耳の上部は、もともとの形状によってわずかに採取しても形状が変化する可能性が高いです。
3. 丸みの特性
• 耳軟骨が丸い形状であることを短所とする意見もありますが、実際にはほとんど問題になりません。医師がその形状の短所を克服する手技を持っているからです。
4. 硬さの個人差
• 軟骨の硬さには個人差があります。この短所を克服するために2層または3層に重ねて使用することが可能ですが、その結果鼻柱が厚くなる可能性があります。
5. 長期的な変性
• 元の鼻先軟骨が小さく薄い場合、時間が経つと移植された軟骨が硬さを失い、瘢痕組織のように変性して支持構造として機能しなくなることがあります。
6. 術後の痛み
• 耳軟骨を採取した後、1ヶ月以上経過しても耳を触ると痛みがある場合がありますが、これは大きな問題ではありません。
7. イヤホン使用時の不便
• 耳軟骨採取後にイヤホンが耳にしっかり固定されない場合があります。
鼻中隔軟骨
1. 歴史的背景
• アメリカでは耳軟骨よりも鼻中隔軟骨が基本的な移植材料として使用されてきました。
2. 厚さの個人差
• 鼻中隔軟骨の厚さには個人差があります。
3. 骨の侵入
• 軟骨部分に骨が侵入している場合があります。
4. 年齢による変化
• 中年以降になるとカルシウムが沈着し、軟骨としての特性を失う部分が発生することがあります。
5. 形状の誤解
• 鼻中隔軟骨は直線的と思われがちですが、実際には曲がっている場合が多く、曲がり具合によって使用可能な量が制限される場合もあります。
6. 採取後の安定性
• 鼻中隔軟骨を適切に採取し、安定性を確保することで、鞍鼻(鼻背の凹み)を防ぐことができます。
自家肋軟骨
1. 硬さと構造
• 肋軟骨は非常に硬く、骨のように内部組織と外殻組織に分かれています。
2. 量が十分
• 肋軟骨は量的に十分に確保することができます。
3. 長い使用歴
• 鼻形成以外にも、耳介再建などの形成外科分野で長い間使用されてきた実績があります。
4. 採取後の歪みのリスク
• 採取後に歪みが生じることがあります。この歪みは、内部組織と外殻組織の特性の違いが原因であると考えられています。
5. 感染リスクの低さ(推測)
• 明確な研究結果はありませんが、他の軟骨と比較して、細菌感染による炎症が少ないように見受けられるという特性があります。ただし、これは証明されたものではなく、臨床経験に基づいた推測に過ぎません。
6. 支持構造の再建
• 鼻先軟骨がもともと小さかったり弱かったり、過去の手術で損傷していると推定される場合、支持構造の再建とともに損傷した鼻先軟骨の修復が必要です。肋軟骨は他の軟骨と異なり、わずかな厚さで修復できるため、鼻柱が厚くなるといった問題を軽減するのに役立ちます。
7. 長期的な安定性
• 時間が経過しても弱化や変性が少ないと考えられます。ただし、「少ない」と断言しない理由は、耳介再建の歴史と結果ではそのような問題がありませんが、鼻形成での長期使用経験はまだ数十年に満たないためです。
8. シリコンの代用としての使用時の問題
• 肋軟骨をシリコンのように削って鼻背に使用した場合、時間が経過すると歪む現象が多く見られます。過去にアメリカで、軟骨の中心部に手術用金属を埋め込み、歪みを防ごうとする試みもありましたが、完全な解決には至りませんでした。そのため、肋軟骨をシリコンの代わりとして丸ごと削って鼻背に使用する方法は、美容形成ではほとんど採用されていません。
結論と考察
この内容は書籍に基づいたものではなく、臨床で患者を診察し手術を行った中で得られたフィードバックをもとに記述しています。この文章が絶対的に正しいとは言えませんし、時間の経過とともにこれらの経験や研究が変わる可能性もあります。
しかし、「これが良いから良い」「あれが悪いから悪い」という単純な長所と短所の羅列ではなく、実際の臨床においてどのような点に悩んでいるのか、また、なぜある患者様にはこの軟骨の使用をお勧めし、別の患者様には別の軟骨を用いる方がより適していると考えるのか、そうした実際の形成外科専門医の判断について記載した内容となっております。