身近なのに見えていない 都市の裏側の風景を映し出す展覧会 ーー「SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット」(ワタリウム美術館)
ワタリウム美術館で、「SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット」が開催されています。
▍SIDE CORE とは
SIDE COREは、高須咲恵さん、松下徹さん、西広太志さんを中心とした、公共空間や路上を舞台としたアートプロジエクトを展開するアートチーム。
今回は、「SIDE CORE」の東京では初の大規模個展で、3つのフロアを異なるテーマで構成した展覧会となっています。
2F:「視点」主に路上のマテリアルを用いて、都市のサイクルをモデル化する立体作品の新作シリーズ
3F:「行動」都市の状況やサイクルの中に介入した行動/ 表現の映像・写真のドキュメント
4F:「ストーリーテリング」2023 年から継続している、東京の地下空間をスケートボードによって開拓していくプロジェクト「under city」の最新版の展示
▍都市の身近な風景をモチーフに、目を引く作品と展示方法
今回の展覧会で印象的なのは、都市の中で、とても身近にありながらも、普段は気づかない存在やあえて着目しないようなものに目を向けた作品群。その展示方法はとにかく目をひきます。
例えば、今回の展覧会でも最大サイズの、2Fから3Fの吹き抜け空間を使った《コンピュータとブルドーザーの為の時間》。工事用の鉄パイプがスライダーのように組まれ、時々、その中をセラミックの玉が大きな音を立てて転がっていきます。
その背後には、工事用の看板のピクトグラムや文字をコラージュした作品《東京の通り》。こうした工事用のピクトグラムって、実は標準の規格がないのだそう。似てるけど、実はちょっとずつ違う。そんなズレが面白い作品です。
そしてこの壁、なんと回転し続けているんです。鉄パイプを転がる玉に気を取られて見上げていると、その壁にぶつかりそうになったり…
作品や展示方法に様々な「動き」や「音」があり、それが、常に変化して、動き続ける「街」のイメージにつながるようにも感じられます。
▍普段は見えない都市の風景を探る
個人的に一番好きだったのは、4Fに展示されている映像作品。東京の地下空間をスケートボードによって開拓する《under city》という作品です。
映像の舞台は、東京の地下にある「地下調節池」。集中豪雨の時とかに川からあふれた水を流入させる空間で、台風の際などに機能する場。作品の中では、地下水路の神田川・環状七号線地下調節池や、上高田調節池といった地下に広がる真っ暗な空間を、スポットライトを背負ったスケートボーダーが走って行きます。
その空間は、水が溜まっていたり生き物がいたり…少し不気味な雰囲気もありつつ、暗闇がスポットライトで照らされて開けていく感じや、スケボーのスピード感でその広さが伝わってくる感じなど、日常では知らない空間が目の前に開けていくような臨場感があります。
本作は、2022年に目黒観測井で上演された後、天王洲での「MeetYourArtFestival」、SusHi Tech Squareなどで公開されましたが、毎回演出になっています。(音も会場にあわせて調整されているのだとか。)
今回は複数のディスプレイを使ってさまざまな視点からの映像を楽しめる様な展示になっています。(約20分の上映で、毎時00分、20分、40分からの上映です。)
地上は、例えばGoogle Mapを見れば立体的に地図を見ることが出来たりと、大部分がデータ化されているのに対し、地下空間はまだあまり人目には触れない空間なんですね。そんな地下空間を3Dスキャンでデータ化も行っているそうです。
▍データ化できない都市の雰囲気も残す作品
文字通りの「スキャン」も行う一方で、データとは違ったかたちで、その時の都市の雰囲気を残すような作品も。
例えば3Fは、都市に介入するタイプの映像と写真の作品を集めた展示。
その中のひとつ《empty spring》は、コロナ禍当時の誰もいない街の中、パイロンがひとりで横断歩道を渡っていったり、封鎖された喫煙所でタバコの吸い殻が隊列をなして移動していったりという映像作品。
コロナ禍の2021年にワタリウムで公開された本作は、今見ると、ほんとに数年前ながらも、本当にパイロンが勝手に動いていたとしても誰も気づかないくらい、人がいない時期があったことを思い出して驚きます。
(↑こちらは個人で書いたnoteですが、本当に通勤電車にもほとんど人がいなかった…)
その様子は、本当にその時代の街の雰囲気を「スキャンする」ようです。
また、作品とワタリウム美術館の建築の構造から、自分が一方的に見ているとき、自分も誰かに見られているということを感じたり。そんなところも、今の時代の雰囲気を感じるようです。
▍美術館を出て、屋外にも作品展示が
今回の展覧会では屋外にも作品展示があります。
目の前の空き地やビルのほか、青山通りのマックがあった第一青山ビルという場所でも展示が行われていました。
また、現在は、ファサードを覆う20×20メートルもの大きな工事幕にも、SIDE COREの作品が登場しています。
▍まとめ
「SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット」は、現在の都市のエッセンスを閉じ込めたような作品群で、まさに今生活している都市を違った視点から楽しめる展覧会でした。
本展のチケットは、フリーパス制、何度か訪問して、変化する街の雰囲気も感じながら楽しみたい展覧会です。
【展覧会概要】SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット
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