見出し画像

お母さんが楽なやり方でいいよ。小児訪問看護師として現場で感じる課題と展望

株式会社PLASTの「プラスト訪問看護ステーション」で働く浅井琴美さん。NICUでの勤務経験の後に、在宅の現場を知るために株式会社PLASTへ入職されました。今回、転職のきっかけ、地域の現場で働くことで感じた課題やおもしろさ、これから取り組みたいこと等についてお聞きしました。

浅井琴美(プラスト訪問看護ステーション)
看護師免許取得後、急性期病院のNICUにて勤務する。2022年より株式会社PLASTに入社、現在は「プラスト訪問看護ステーション」に所属し小児領域を担当している。やっとコロナ自粛も解除されてきているため日本各地へ旅行に行きたいと思っている。

ちっちゃい頃に関わり合える環境を「素敵」と感じて

-まず、これまでの経歴や転職の経緯を教えてください。

前職はNICUで勤務していました。そこで退院に向けた家族指導を行っていたのですが、在宅医療がどのようなものかイメージすることができずに気がかりな経験をたくさんしました。例えば、病院では吸引カテーテルは使い捨てだけど、自宅だと洗って使いまわさなければならないということがあるんです。そういう場面を十分にイメージできなかったんです。

そこで在宅医療の現場で働いている人に話を聞こうと思って知り合いに連絡をしたときに、プラスト訪問看護ステーションで働く菴原さんを紹介していただきました。そこで菴原さんの職場で開催されていた勉強会に参加するようになりPLASTのことを知りました。「なんかここ、すごい素敵なところやな」って思っていたら、菴原さんに「うち来ない?」と誘っていただきました。「そんな素敵なところで働けるんやったら行きたいな」って転職に至りました。

NICU:ハイリスクな状態で産まれた新生児への集中ケアに特化した部門

-「素敵なところ」と仰っていただきましたが、どこに魅力を感じましたか。

「環境」ですね。

一般的に障がい児や障がい者と言われると、距離を置く人が多いように思うんです。距離を置かない人でも「じゃあ、どうやって接したらいいの?」となる人が多かったり。地域では障がい児だと、特別支援教育の中で教室や学校で分けられていて、物理的距離も離れて関わることがなくなってしまう。そんな中で「接してください」と言われても難しいのは当たり前で、「物理的な距離がなかったらいいのにな」って、ずっと思ってたんです。

でも、ヒミツキチとジャングル・ラボにはそんな物理的距離がないので、ちっちゃい頃に関わり合うことができます。その環境がすごく素敵やなって思ったんです。

(左)ヒミツキチ:重度心身障害児向け児童発達支援・放課後等デイサービス
(右)ジャングル・ラボ:企業主導型保育園
ふたつの施設が併設しており、障害の有無に関わらず同じ空間で過ごすことができる。


あと、転職した理由はもうひとつあります。赤ちゃんがNICUを退院していくのは嬉しいことなんですけど、退院しちゃったらその後は外来に来た時に顔を見るくらいしか関わることがないんです。NICUを退院することはゴールじゃなくて、退院してからがご家族の生活のはじまりになるから、いつかはそっちを支援できる人間になりたいなっていうこともありました。

訪問看護だから感じることのできる楽しさと直面する課題

-実際に在宅医療の現場で働きだして、どのようなことを感じますか。

地域の抱える問題の多さに直面しています。 お母さんにお休みがないとか、お子さんの預け先がないとか、ご家族さんの相談相手がいないとか…全然整ってないなって思うことが多いです。病院には看護師さんがいっぱいいるので、 地域でできることをせなあかんなって今は感じています。

-小児分野は制度的に整っていない部分が多く、家族介護が強いられてしまうことは課題ですよね。以前と比べて、ご家族さんと話をする機会は増えたのでしょうか。

NICUでもご家族さんと話す時間はあったのですが、短時間の関わりになることがほとんどでした。今はお母さんとゆっくり話しができて、赤ちゃんのこと以外の話題も多く話すようになり、ご家族も含めた関わりができると知りました。お母さん自身の体のこと、お兄ちゃんとかお姉ちゃんの悩みのことを聞かせてもらえるのは、やっぱり訪問看護だからかなと思いますね。

-訪問の現場だからこそ話せることってありますよね、そこにやりがいは感じますか。

はい。やりがいはありますが、正直に言うと分からないことの方が多いですね。何かあった時に受診するべきか、まだ自宅で様子を見ても良いのか、それではお母さんの不安や負担が増えるのではないか、受診するのに人手が足りるのか、と判断に悩むことは多いですね。その分のやりがいを感じています。

-他の訪問看護ではなくPLASTだからこそ「できること」ってありますか。

いっぱいあると思います。

例えば、訪問したご家庭で「どこかに預けたい」といった相談を受けたときに、ヒミツキチを紹介をしやすいです。ヒミツキチの内情を知っているからお伝えできる情報があって、「私も顔を出せますよ」ってこともお伝えできます。そうなると「浅井さんが顔出してくれるんやったら使ってみようかな」って言ってくれたりもします。あと、普段からヒミツキチと情報共有ができているので、お母さんが混乱しないように一貫したお話しもできます。

病院でも自宅でもない場所で看護師として活動するなかで

-浅井さんは学校への訪問も行っていると聞きました。どのような看護を行っているのでしょうか。

神戸市では医療的ケア児の幼稚園訪問事業というものがあるので、その枠組みのなかで訪問看護を提供しています。例えば、糖尿病のある子に対してインスリンを打ちに行くことがあります。制度上、幼稚園の先生ではインスリンが打てないですし、仮にお母さんが毎日幼稚園に行ってインスリンを打つとなると負担はとても大きくなります。なので、訪問看護を提供することでその負担を解消することができます。また、後々は自分で打てるようになることが望ましいので、まずはお母さんの手から離れるという部分でも他者が介入することは本人にとっても良い機会になると思っています。

また、小学校では学校外活動に関わっています。例えば音楽祭や運動会、遠足、社会科見学等がありますね。基本的な役割は急変時の対応なんですけど、吸引やトイレ誘導、状態確認をしています。泊まりもあって、その場合には食事ケアや入浴ケアもやってます。

-実際に行ってみて、どのようなことを感じますか。

楽しいですよ。ぜひ一回行ってみて欲しい。世界が変わるんで。

私が訪問しているお子さんは普通級の子と一年生のときからずっと一緒に過ごしているので、子ども同士の距離の近さを見れるのはすごく嬉しいです。看護師として子どもと関わってると、お子さんもそれなりに看護師相手の喋り方をします。友達同士で喋ってる顔はやっぱり少し違うので、そういう一面を見れるのがいいですね。

実際に行ってみて、宿泊行事にお母さんが付き添うことは多方面で難しさがあると思いました。お子さんから目が離せないし、家を一日以上丸々空けて行かなきゃいけないし、そもそも他のお子さんたちはみんなお母さん付き添いじゃなくてアンフェアな感じもあって。やっぱりお母さんの手を離れて私たちが対応できればいいなと思うので。

-お子さんだけじゃなくて、お母さんの視点を持つことはとても大切ですよね。

私はお母さんが楽しく育児をして欲しいと思っています。お母さんがしんどい、疲れた、やりたくないって思いながら育児をしていると、それが絶対に子どもに伝わると思うんです。だから、「お母さんが楽なやり方でいいよ」っていつも言っちゃいます。そこを1番に考えちゃうので。

普段の生活のなかでのお母さんと子どもの表情を残したい

-今後、浅井さんが取り組みたいことはありますか。

お母さんと子どもが一緒に写ってる写真を残したいです。

子どもの写真や動画を撮るのはいつもお母さんになっている家庭が多くて、お母さんと子どものツーショットはない、家族全員が集まった家族ショットがないというお家も多いんです。かしこまって、ちゃんとおしゃれして、綺麗なところで写真を撮ることも素敵やと思うんですけど、普段の生活のなかでのお母さんと子どもの表情とかを、せっかく撮るなら、ちょっといいカメラで撮れたらって思うんです。

でも、訪問看護で私たちが行っている時間にはケアがあって、その間お母さんには自由に時間を過ごして欲しくて。どうすればいいのかなぁって考えています。

-看護師だけに留まらない視野の広さを感じます。

子どもだけじゃなく、家族も見ちゃうんです。
これが私の大事にしてる看護観です!!!

▼プラスト訪問看護ステーション

「みんなで総合力」をテーマにした訪問看護ステーション。

スタッフが一人では解決できない課題でも、みんなで話し合って考えることで乗り越えることを大切にしている。小児・精神・高齢者と幅広く対応しており、地域に必要な看護とリハビリを提供している。

株式会社PLAST

採用・見学・お問い合わせフォーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?