高専卒大学院生が考える高専教員の魅力


はじめに

本記事は、これまで企業研究者を目指していた筆者が、最近高専教員というキャリアにも魅力を感じるようになった経緯を綴ったものです。筆者は高専専攻科を修了して、現在修士課程2年(D進予定)に在籍しており学位取得後のキャリアについて少しづつ考え始めた、といった状況です。高専専攻科在籍時は高専教員は講義、実験実習、部活動、校務、生徒指導、事務作業が多く、給料も大学に比べて少ないため、将来研究者になるなら高専はないかなあと思っていました。しかしながら、最近様々な理由で高専教員に大きな魅力を感じるようになりました。その理由を、大学のラボとの比較を交えながらご紹介します。なお、筆者は現時点において、高専教員になる、と決心した訳ではないので高専教員について元高専生としてフラットに情報をお伝えできればと思っております。本記事をきっかけに、高専出身者ではない方が高専に就職された際の想像とのギャップが少なくなること、高専教員を志す学生が増え、未来の高専教育が発展することを切に願っています。

高専教員の魅力

新卒パーマネント

高専での教員採用の多くはパーマネント(終身雇用)で、このような雇用形態は大学教員にはない圧倒的な魅力になります。パーマネント故に若手時代から超長期的な研究プロジェクトに取り組むことが可能となります。またよっぽど変なことをしない限り、学生の成長のために業務に取り組み、数年に一度論文(共著含む)を発表して適齢になれば、自動的に教授に昇進することができます。そのため安定した職位で、長期的なキャリアを築くことが可能となります。

新卒PI

高専教員は独立ラボを持つことができ、研究活動における上司が存在しません。そのため自分のペースで自由に研究を進めることができます。筆者の印象では大学助教でのPIはほとんどなく多くの場合、教授や准教授などの上司がいる研究室に所属することが多い印象です。そして、上司と剃りが合わない、といった事例は少なくない認識です。やりたい研究があるにも関わらず、上司の研究活動やそのスタイルに付き合わされるのが嫌だ、という方にとっては学位取得後新卒からPIとなれる高専教員は非常に魅力的ではないでしょうか。また昼食後に睡魔が襲ってくる筆者にとっては自身の居室で昼寝をしてもばれないのは非常に大きなメリットであると思ってます。

学生のレベル

高専の学生は、研究室配属までに約4年間に渡る実験実習経験があります。それ故に高専生は手が動く、と社会から評価される訳ですが、そんな彼らと一緒に研究ができるのです。また専門的な技術や知識の習得に意欲的な学生が多く、自身の研究プロジェクトを遂行する上で非常に心強いです。加えて、多くの高専には専攻科があり学生によっては、本科5年、専攻科1年、専攻科2年、と同じ研究室で最大3年間研究を行うことができるのもPIにとって大きなメリットです。

高専教員の懸念点

業務の多さ

先に述べたように、高専教員は多くの業務(平均週3コマの講義、実験実習、部活動、校務、生徒指導、事務作業)をこなす必要があります。それに加えて自身の研究環境をゼロから立ち上げることもしなければなりません。これは元高専生だった筆者の目線からしてもかなりハードで、本当に研究が好きじゃないとできないなと思っています。

研究環境

新卒で高専教員になった場合、学位を取ったラボでできていた研究ができなくなります。これは高専での研究設備が出身ラボと比べてどうしても劣ってしまうためです。

終わりに

本記事は、高専専攻科を修了し、現在M2の大学院生の視点で高専教員の魅力について述べました。記事の執筆を通して、高専は自由とよく言われますが、それは学生に限らず若手研究者においてもだなと思いました。ただその自由を使いこなすにはそれ相応の実力と根性が必要だろうなと思った次第です。
本記事は筆者がこれまで感じてきたことを基に執筆しているため、よろしければ現役高専教員の方がご覧になられましたらコメントをいただけると幸いです。それを基に加筆修正を行い、より充実した内容にしていきたいと思っています。企業研究者や高専以外のアカデミックポスト、学生の方からのご意見も大歓迎です。この記事が学位取得後に高専への就職を検討している方の参考になれば幸いです。

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