②特別高圧受変電設備のレイアウトと機器構成について
特別高圧受変電設備は、電力を安定的に受け入れ、施設や産業用の機器へ安全に供給するための重要な設備です。電力消費が大きい施設では、受電方式や機器の配置、そして設備ごとの保護・制御が求められ、受変電設備の構成についての理解が不可欠です。
本記事では、特別高圧受変電設備の主要な構成機器とその役割、そして一般的なレイアウトについて詳しく解説します。
なお、本記事は無料でご覧いただけますが、有料PDFもご用意していますので、詳細な参考資料としてぜひご利用ください。
特高受変電設備のレイアウト
レイアウトは主に受電方式によって左右されますが、特別高圧受電設備の受電方式には、様々な方式が採用されます。詳細については前回の記事をご参照ください。
今回の記事では22kV~154kVで幅広く採用される「本線予備受電方式」をメインに解説します。特に66kV系を挙げていきます。
本線予備受電方式では、メインと予備の2系統の電源が用意され、いずれかに異常が生じた場合に迅速に切り替わり、電力供給の安定性を確保します。以下に、本方式のレイアウト図を挿入します。
特高レイアウト(GISの場合)
GIS方式の場合の特徴は簡潔に以下となります。
構成:絶縁媒体にSF6ガス(六フッ化硫黄)を使用し、開閉装置を気密性の高い金属容器内に収めた構造。
特徴:絶縁性能が高く、設置面積が小さいため、都市部や屋内施設での設置に適している。また、メンテナンス頻度が低く、信頼性が高い。
メリット:小型で耐環境性が高く、過酷な環境下でも安定した動作が可能。
デメリット:SF6ガスは温室効果ガスであるため、取り扱いには注意が必要。
特高レイアウト(C-GISの場合)
C-GIS方式の場合の特徴は簡潔に以下となります。
構成:GISのようにガス絶縁を使用しつつ、よりコンパクトでモジュール化されたキュービクル型の構造。
特徴:一般的なGISに比べてさらに小型で、設置や移設が容易。メンテナンスのアクセスも改善されているため、機動性の高い施設に適している。
メリット:小規模で設置スペースを最小化でき、迅速な組み立てと展開が可能。
デメリット:GISと比較して絶縁性能が若干劣る場合があるため、大容量・高電圧用途には不向きな場合がある。
特別高圧受変電設備の単線結線図例
66kV本線予備受電方式の単線結線図では、通常、メインの送電系統(本線)と予備系統が並行して設置され、いずれかが故障や保守などで停止しても、もう一方から安定して電力を供給できるようにしています。
この方式は高い信頼性を必要とする受変電設備で採用され、停電リスクを軽減し、設備の連続稼働を実現します。メインと予備の二系統をスイッチギアで柔軟に切り替えることで、安定した電力供給が維持され、重要施設における電力供給の途切れを防ぐ役割を果たします。
また、本線予備受電方式では、電力設備の点検やメンテナンスを行う際にも、片方の回路を予備電源に切り替えることで電力供給を途切れさせずに作業を行うことができます。こうしたバックアップ体制は、電力の安定供給が欠かせない産業施設やデータセンターなどで非常に重要な役割を果たしており、停電や故障による経済的損失のリスクを減らすことが可能です。
主な機器構成
次に特別高圧受変電設備を構成する主な機器について、それぞれの役割と特徴を詳しく説明します。各機器が正しく機能することで、安全かつ安定的な電力供給が実現されます。
今後作成する記事で一つ一つ詳細に解説を行いますので、ここでは各項目について簡潔に説明します。
1. 変圧器(TR)
変圧器は、受電した高電圧を設備で利用可能な電圧に変換するための機器です。特別高圧受変電設備においては、一般的に油冷式変圧器が採用され、変圧器内部の絶縁油によって冷却・絶縁が行われます。特に大容量の変圧器が必要とされるため、変圧器の管理は非常に重要であり、温度や油の劣化、漏れなどが発生しないように定期的な保守点検が必要です。
変圧器には容量に応じた設計が施されており、需要に合わせた出力を持つことで過負荷を避けることができます。また、近年では省エネ性能が高い変圧器も登場しており、消費エネルギーの削減にも貢献しています。特別高圧受変電設備の中でも、変圧器は特に重要な役割を持つため、導入される変圧器の品質やメンテナンス性は安全運用に直結する要素と言えます。
2. 遮断器(CB)
遮断器は、異常な電流や過負荷が発生した際に、電力供給を迅速に遮断し、システム全体の保護を行う機器です。短絡事故や地絡などが発生すると、電流が急激に増加し、配線や設備に損傷を与える可能性があるため、遮断器が直ちに作動して回路を遮断します。
遮断器には、空気や真空、ガスなどの絶縁媒体が使用されるタイプがありますが、特に特別高圧の設備にはガス絶縁開閉装置(GIS)がよく用いられます。GISは、空間的な制約を受けにくく、屋内でも使用可能であるため、スペース効率に優れ、メンテナンスが簡便であることが特徴です。遮断器は、定期的な点検や試験が必須であり、異常が発生しないように保守管理が行われます。
3. 断路器および接地開閉器(DS、ES)
断路器は、メンテナンスや保守点検の際に電気回路を完全に遮断するための機器であり、回路全体の安全確保に重要な役割を担います。遮断器と異なり、通電中に操作されることはなく、電源の確保が必要な場合や異常時の安全確保に使用されます。断路器が回路を完全に分離することで、作業者が安全に点検作業を行うことができます。
接地開閉器は、電力系統における地絡事故時に、回路を地面に接続し、安全性を高めるための機器です。これにより、過電圧が発生しても、エネルギーが大地に逃がされ、設備や作業者への影響が最小限に抑えられます。断路器および接地開閉器は、安全管理の要であり、定期的な点検と動作確認が行われます。
4. 避雷器(LA)
避雷器は、雷などによる過電圧が発生した際に、そのエネルギーを迅速に地面に逃がし、設備を保護するための機器です。避雷器が過電圧を放電することで、変圧器や配電盤などの機器が雷の影響を受けにくくなり、停電や故障のリスクを低減します。
特に高地や雷が頻発する地域では、避雷器の配置やメンテナンスが重要です。落雷が設備に与える損害は大きいため、避雷器の定期点検を行い、確実に動作することが確認されます。避雷器の劣化や故障は施設全体の安全性を脅かすため、交換や補修が必要な場合は迅速に対応されます。
5. 計器用変圧器(VT)
計器用変圧器(VT)は、受電設備の電圧を適切な範囲に変換し、計測機器が正確に読み取れるようにするための機器です。これにより、システム全体の電圧や電流の監視が可能となり、異常時に迅速な対応が行えます。特に負荷が大きく変動する施設においては、電圧の安定性を確保するためにPTが重要です。
計器用変圧器は、運転状況を監視するための情報を提供し、変電設備の安定稼働を支援します。VTが正確な電圧を測定することで、電力の使用状況が把握でき、効率的なエネルギー運用が行えます。
6. 変流器(CT)
変流器(CT)は、高電流を計測可能な範囲に変換し、計測機器や保護装置に供給するための機器です。電力システムにおける異常検知や保護装置のトリガーとして使用されることが多く、安定したシステムの運用に重要な役割を果たします。
特に高電流が流れる特別高圧受変電設備では、CTが安定した精度で計測することで安全性が確保されます。CTが正確に動作することにより、設備の異常を迅速に検出し、事故の未然防止に寄与します。CTの品質は運転の安全性に直結するため、保守管理や試験が重要です。
7. 電力用コンデンサ(SC)
電力用コンデンサは、電力の無効分を補償し、電圧の安定化と効率的な電力供給を行うために用いられる機器です。無効電力を調整することで、施設内の電力効率が向上し、消費電力の削減に貢献します。
電力用コンデンサは、特に大規模な施設での電圧安定化において不可欠です。過負荷や電圧低下を防ぐため、適切な配置とメンテナンスが求められ、電力の効率的な運用が行われます。
8. 直流電源装置
直流電源装置は、受変電設備内での制御装置や保護装置に安定した直流電源を供給するための機器です。直流電源の供給が途切れると、保護装置が正常に動作せず、重大な事故につながるリスクがあるため、信頼性が非常に重要です。
直流電源装置にはバッテリーが組み込まれ、停電時にも一定期間バックアップが可能なよう設計されています。設備全体の安定性を支えるため、バッテリーの劣化や充電状態の管理が徹底されます。
9. 引留鉄構
引留鉄構は、送電線や機器をしっかりと固定するための構造物であり、特に電力線が風や外力で損傷しないように設置されます。風荷重や地震などの影響を受けにくくするため、堅牢に設計され、長期的な耐久性を備えた素材が用いられます。引留鉄構は、設備全体の安定運用に必要な土台として機能し、保守点検や交換も計画的に行われます。
以上が、特別高圧受変電設備の主要構成と機能の詳細な説明です。この情報が、特別高圧設備に携わる方の参考となれば幸いです。
有料PDFについて
本記事で説明した内容に加え、有料PDFには各機器のさらなる詳細解説や保守・点検に役立つポイントが収録されています。図解を豊富に用いており、実務の際に参考にできる内容となっております。ぜひ、PDFのご購入もご検討ください。
見づらい可能性があるため単線結線図も単独PDFファイルで提供します。
ここから先は
¥ 200
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?