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過電流継電器の基本と設定方法:初心者向けガイドについて

概要

過電流継電器(OCR: Over Current Relay)は、電気設備を保護するために欠かせない重要なデバイス装置です。電流が過剰に流れた際に、それを検知して電力供給をストップし、配線や機器の焼損を防ぎます。工場やビルの高圧受電設備では、この過電流継電器が活躍し、電気システム全体の安全性を維持します。

高圧遮断器(VCB)変流器(CT)と連動して使用され、過負荷や短絡時に即座に対応できる仕組みとなっています。本記事では、過電流継電器の基本的な構造、動作、設定方法を解説します。

過電流継電器の役割と回路構成

過電流継電器の主な役割は、過負荷や短絡事故が発生した際に、電力供給を遮断することです。構内で過電流が発生した場合、そのまま放置すれば配線や機器に損傷を与え、最悪の場合、火災などの事故に繋がります。過電流継電器は、これを未然に防ぐため、異常を検知し、高圧遮断器に遮断命令を送ります。

構成機器は以下の通りです:

  • 変流器(CT):電流の大きさを検知し、継電器にその情報を伝えます。変流器は200/5Aや100/5Aなどの変流比で動作し、継電器側に対応したCT値を設定することが基本です。

  • 高圧遮断器(VCB):過電流継電器からの遮断命令を受け、電流を停止させます。これにより、事故回路が切り離され、電力供給がストップします。

過電流継電器の動作

過電流継電器の動作は次のステップで進行します:

  1. 事故発生
    構内で過負荷または短絡事故が起こり、異常な電流が流れます。このままでは機器や配線が損傷し、電気火災の原因となるため、緊急の対策が必要です。

  2. 異常検知
    変流器を通して、過電流継電器が異常電流を検知します。この際、適切なCT値の設定が重要で、設備の定格電流に合わせて設定を行います。

  3. 遮断命令の発信
    過電流継電器は、設定された限時要素(時間)や瞬時要素(電流値)に基づいて、高圧遮断器に遮断命令を送ります。この設定値を適切にカスタマイズすることで、事故が発生した際の対応時間を最適化します。

  4. 回路の遮断
    高圧遮断器が動作し、事故回路を電源から切り離します。これにより、事故箇所以外の正常な回路には影響を与えず、構内全体の安全が確保されます。

動作特性の設定

過電流継電器の動作特性は、電流と時間の関係を調整することができます。これにより、事業場や施設の特性に合わせた保護が可能です。動作特性には以下の2つの要素があります:

  • 限時要素: 電流が設定された限度を超えた場合に、一定時間後に動作する特性です。過電流が発生した際にはすぐに回路を遮断せず、少しの猶予時間を設けることで、誤動作を防ぐ役割があります。

  • 瞬時要素: 短絡電流など、非常に大きな電流が流れた際に即座に動作する特性です。これにより、設備や配線への損傷を防ぎます。短絡事故は非常に危険なため、瞬時に電流を遮断することが求められます。

保護協調の重要性

過電流継電器を設定する際には、保護協調が重要なポイントです。保護協調とは、異常が発生した際に、最も適切な場所の遮断器のみが動作し、事故箇所以外には影響を与えないようにする調整のことです。

例えば、需要家の設備が5秒で動作する設定になっている場合、電力会社側の設備はそれよりも長い時間で動作するよう設定します。これにより、事故時にまず需要家の設備が優先的に動作し、広範囲での停電が防がれます。

メンテナンスとトラブル対応

過電流継電器が適切に機能するためには、定期的なメンテナンスが必要です。設定不良や経年劣化により、過電流継電器が誤動作するリスクもあります。誤動作が発生すると、設備に不必要なストップがかかり、生産性に影響を与えることがあります。特に高電圧設備では、誤った設定やメンテナンス不足が大きなトラブルに繋がる可能性があるため、定期的な点検が必須です。

トラブルが発生した際は、まず設定値を見直し、保護協調が適切に行われているかを確認します。問題が解消しない場合は、継電器自体の不具合も考えられるため、交換や修理を検討します。

まとめ

過電流継電器は、電気設備を保護するために欠かせない重要な装置です。正しい設定と保護協調により、電力供給の安全性が確保され、設備の長期的な運用が可能となります。設定には、限時要素と瞬時要素のバランスを調整し、保護協調を意識することがポイントです。また、定期的な点検とメンテナンスにより、トラブルを未然に防ぐことができます。

これらの基本を理解しておくことで、電気設備の保護と安定運用に貢献できるでしょう。過電流継電器は日々の電力システムの安全を支える頼れる装置です。

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