これ一冊で電気設計全般をカバー!『建築電気設備技術計算ハンドブック』上巻・下巻レビュー
電気設備に携わる技術者の皆さん、普段の業務で「あの計算式、どこに書いてあったっけ?」なんて困ること、ありませんか?現場で即戦力として使える信頼できる一冊を探している方にピッタリの本を紹介します。それが、今回レビューする『建築電気設備技術計算ハンドブック』の上巻・下巻です。
この二冊、簡単に言うと「広範な電気設計と施工に必要な技術計算を1から10まで網羅してくれるハンドブック」と言えます。電気設備の設計から工事までを一括でサポートしてくれる、電気設備技術者必携のバイブルと言っても過言ではありません。
今回は、この二冊の魅力を「上巻」「下巻」に分けてレビューしていきます。これを読んだら、「実務でどう役立つのか」がバッチリわかるようになりますよ!
上巻について
まずは上巻! この上巻では、主に「受変電設備の技術計算」が詳しく解説されています。具体的には以下の3つのテーマが柱です。下記目次はOHM社の書籍ページからの引用です。
概要
受変電設備構成の技術計算
ここでは、電気設備の負荷計算や電圧変動、短絡電流計算など、受変電設備の基礎から応用までが幅広くカバーされています。短絡電流や地絡故障の計算といった、実際のトラブルシューティングに役立つ内容が豊富です。また、耐震対策についても詳しく解説しているので、地震大国である日本の現場では見逃せません。受変電機器の選定に関する技術計算
変圧器や開閉器、コンデンサといった機器選定の際に必要な計算が細かく紹介されています。特に、機器の選定基準と実務でよく遭遇するシチュエーションに合わせた計算例が多く、非常に実用的です。受変電設備と環境に関する技術計算
設備周辺の騒音対策や振動対策、換気など、環境に関する計算方法までしっかりカバー。これらは機械だけでなく、周囲環境との調和を図るためにも重要なポイントですよね。
レビュー
上巻は特に、受変電設備の基礎から応用までを「広範に網羅」しているところが魅力的。高圧設備から特別高圧設備(66kV、77kV)まで対応しているため、広範な範囲の設計や施工に活用できます。特に特高に関する専門書は市場にほとんど出回っていないため、その点は数少ない参考書と言えるでしょう。
意外と嬉しかったのが直流電源設備や無停電電源設備(UPS)の基本的な説明に加え、容量計算についても記載されている点です。多くの発電所では専用の盤をそれぞれ設けてプラント全体に直流電源および無停電電源を供給するため、この項目も勉強になりました。
またガスタービン式やディーゼル式の非常用発電機の機器構成や計算例も詳細に解説されており、発電機周りの設計がある技術者にはありがたい情報ばかりです。非常用発電機についても設計に関してはネット上では情報が少なく、専門書もそこまで世の中に豊富とは言えません。実際に非常用発電機に関する設計業務では役に立ちましたので、おすすめ出来ます。
また、騒音や換気量、耐震計算までが網羅されているため、単に機器選定だけでなく、実際の設計施工時に直面するあらゆる課題に対処できる構成になっています。盤内だけでなく、電気室や発電機室の換気量計算についてもしっかり解説されているため便利です。これは、現場で実務をこなしている技術者にとって大変助かる内容だと思います。
下巻について
次は下巻です。接地や電動機、照明設計、施工に係わる計算が盛り込まれ、工事設計を行う際の技術者には欠かせない情報源です。
概要
接地に関する技術計算
接地極の設計や接地抵抗の計算が詳細に説明されています。地震や雷といった外的要因に対する対策は、設備の安全性を確保するうえで極めて重要。接地管理や設計の具体的なフローが記載されており、実務に直結する情報が満載です。電路に関する技術計算
許容電流や電圧降下、バスダクト、ケーブルの機械的強度に関する計算が解説されています。特にケーブル選定に関わる部分は、現場で頻繁に活用できる内容ですね。電動機設備の技術計算
電動機の定格出力、定格電圧、始動時の電圧降下、始動特性に関する計算など、実際に電動機を扱う現場では欠かせない計算がまとめられています。**個人的には「電動機の電圧降下計算」**に関する具体的な計算例が載っているのが特に嬉しいポイント。電動機周りの問題解決に即役立つ内容が盛り込まれています。照明設計と施工に関する技術計算
照度計算や照明方式の省エネルギー効果に加えて、配線工事や雷保護システムなど、施工に必要な計算も豊富に紹介されています。LEDの普及に伴う設計基準も含まれているので、最新の技術にも対応した情報が手に入ります。
レビュー
下巻のレビューとしては、全体として工事設計に関する技術が中心に解説されています。そのため、設計から施工までを一貫してサポートしてくれるのが非常に心強いですね。
特に「電動機の電圧降下計算」がしっかりカバーされている点は、実務に直結するため非常に嬉しい内容です。また、施工に関する技術計算が詳しいため、施工管理を担当する技術者にとっても即戦力となるでしょう。
ハンドブックのメリット
それでは全体を通して『建築電気設備技術計算ハンドブック』上巻・下巻のメリットについて述べていきます。
1. 広範な内容をこの2冊でカバー
特別高圧や発電設備に関する計算も詳細に解説されており、幅広い業務に対応可能となります。どんな現場においても、この二冊でほとんどの技術計算に対応できるでしょう。特に、実務に必要な計算が網羅されているため、現場に一本持っていけば万全です。
2. 実務に直結する計算例が豊富
発電機、電動機、配線、照明など、多岐にわたる計算例が掲載されています。騒音や耐震対策の計算も網羅されているため、設計だけでなく、施工現場でも役立つ内容です。
3. 設計根拠を辿りやすい
各項目にはJIS、JEC、JEMの参照元がしっかり記載されているので、設計根拠を簡単に辿ることができます。これにより、信頼性の高い設計を行う際に大いに役立ちます。
ハンドブックのデメリット
もちろん、メリットだけではなくデメリットもあります。
1. 初学者向けではなく、価格も高い
内容が非常に専門的なため、初学者がいきなり読むにはレベルが高い部分があります。基礎的な知識がないと理解が難しいと感じるかもしれません。
リンクにある通り合わせて2万円近くするため、おいそれと手を出すことが出来ないのもデメリットですね。
2. GISおよびC-GISに関する記載はない
特別高圧受変電設備の重要機器であるGIS(ガス絶縁開閉装置)やC-GIS(コンパクトGIS)に関する項目が含まれていないため、これらに関する情報が欲しい技術者には物足りない部分もあるかと思います。自分もそうです(笑)
3. 保守・保全に関する情報が不足
この本は設計や施工に関する技術計算に特化しているため、保守および保全に関する情報はほとんどないです。保守管理を担当する技術者には、別の書籍が必要になるでしょう。
電気主任技術者の方が広範な知識を得るために持っておいても損はありませんが、管理に関する部分の記載はないため、そこは注意が必要です。
まとめ
『建築電気設備技術計算ハンドブック』は、電気設計や施工に関わる技術者にとって必携の二冊です。高圧から特別高圧、さらには施工に関する計算まで幅広く対応しているため、実務での計算に困ることがありません。この二冊さえあれば、現場で直面するほとんどの技術的課題を解決できるでしょう。どんな技術者でも、このハンドブックを手元に置いておけば安心です!
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。読んでいただき、ありがとうございました。