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マルチバース・パラレルワールドを描く名作・傑作SF映画[7選]

こんばんは ぷらねったです 
さまざまな選択によって分岐した並行世界や 観測できない 多元宇宙の物語
今回は「パラレルワールド・マルチバースを描いた名作・傑作SF映画」をテーマに おすすめのSF映画を紹介していきます


1.決死圏SOS宇宙船 (1969年)

監督は ロバート・パリッシュ
ジェリー・アンダーソン,シルヴィア・アンダーソン夫妻の原案・脚本・製作で描かれる イギリスのSF映画です

欧州宇宙探査局(EUROSEC)が送り出した無人探査機からの報告により 地球と同じ周回軌道内の太陽の裏側に 未確認の惑星の存在が明らかになります
スパイによってこの情報が敵国に漏れたことを知った 欧州宇宙探査局のウェブ局長は 敵国に先んじてこの惑星の調査を行うため 有人探査の計画を立案
この計画のパイロットに選ばれたのは アメリカのグレン・ロス大佐と 物理学者ジョン・ケーン博士でした
数週間に及ぶ訓練の末に 二人を乗せたロケットは発射され 3週間の冷凍睡眠から目覚めた二人は 目的の惑星への着陸を試みる...というストーリーです


「太陽を盗め」で知られるロバート・パリッシュが監督をつとめ 秀逸なオープニングからはじまる 60年代最後の年に公開された映画です
製作には ジェリー・アンダーソン, シルヴィア・アンダーソンの夫妻がクレジットされていますが 人形劇ではなく人間の俳優を起用した映画として知られています
物語は"パラレルワールド"という言葉で済ませていいのか分からない 秀逸な脚本によって"すべてがひっくり返ってしまった地球"が描かれます
原題は「Doppelgänger」であり 作品内容を暗示しているところです


例えば【目の形をしたカメラを目に入れて装着し 記録したデータを現像するデバイス】など  ユニークな近未来のイメージがおもしろいです
セットデザインや小道具のSF感も秀逸で 映像だけでも楽しむことのできる完成度
ミニチュアとは思えない 巨大に映るロケットの発射直前のシーンなど 大きな注目ポイントのひとつとなっています
さらに 無重力シーンや派手な墜落シーンもしっかりと描かれており 製作側の努力が垣間見えます


時に不気味に 時に壮大なスケール感を演出する音楽も素晴らしいです
「2001年宇宙の旅」の1年後に公開され 素晴らしい脚本とデザインが噛み合った 本作品
視覚的な見どころもたっぷりの 傑作SF映画となっています


2.ザ・ワン (2001年)

監督は ジェームズ・ウォン
ジェット・リーが9つの役を演じる アメリカのSFアクション映画です

舞台は 多元宇宙"マルチバース"が存在する世界
この世界において 一部の人間はそれぞれの宇宙を行き来する"次元間旅行"が可能になっていました
それぞれの均衡を守るため 次元間旅行を監視して取り締まるのは 多次元宇宙捜査局(MVA)
しかし その捜査官の一人であるユーロウは特権を利用して 別次元の自分を次々と殺し始めます
最強の存在"ザ・ワン"になることを目論むユーロウは 別次元の自分を一人殺すたびに そのエネルギーを吸収し 超人化してパワーアップ
そして ユーロウの標的はついに ジョージ・ブッシュが大統領を務める世界に住む ロサンゼルス郡の保安官ゲイブだけとなった...というストーリーです


製作費は 4900万ドル
「ファイナル・デッドコースター」などで知られる ジェームズ・ウォンが監督をつとめました
作中では さまざまな姿で名前や性格の異なる役を演じる ジェット・リーが多数登場します
"パラレルワールドの自分を葬り去るごとにパワーアップする"という 少年漫画的な設定が潔いです


自分vs自分というおかしな設定で ワイヤーアクションやCG全開のアクションが描かれ 時には笑える要素も交えつつ ハイスピードで物語が展開されていきます
自分自身と戦うシーンについてはフルCGでなく ジェット・リーに似た体格のスタントマンの顔を緑色で塗りたくり ポストプロダクションで顔をジェット・リーに置き換えることによって実現したそうです
この時 それぞれのカンフースタイルも異なっており 直線的な動きの攻撃的スタイルと 円を描くような動きを取り入れた柔らかいスタイルで 演じ分けられています


いわゆるSFアクション映画の中には 中身が単なるアクション映画だった...と感じるものもありますが 本作品は未来的なデバイスが登場したり 次元間を移動するシーンの映像もかっこよく SF的なおもしろさもあります
当初はドウェイン・ジョンソンが主演する予定もあったそうですが 個人的には ジェット・リーで正解だったのではないかと思います


ジェット・リーに触発され ジェイソン・ステイサムが本格的にアクション俳優として始動するきっかけにもなったとされる 本作品
娯楽的に楽しめる SFアクション映画となっています


3.スライディング・ドア (1998年)

監督は ピーター・ハウイット
異なる運命が並行して展開していくという おもしろい演出方法の映画です
SFと言われることはあまりない印象ですが パラレルワールドというテーマに合っているので 紹介させていただきます

広告代理店勤務のヘレンは 作家志望のジェリーと同棲中でした
そんなある日 ヘレンは会社のミーティングに遅刻したところ クビになってしまいます
失意のまま駅に向かい 地下鉄の電車に乗ろうとしたところで『電車に間に合わなかった運命』と『電車に間に合った運命』が2つに分かれ それぞれの物語が展開されていく...というストーリーです


製作費は 600万ドル
「ジョニー・イングリッシュ」などで知られる ピーター・ハウイットが監督をつとめました
設定以外にSFといえるような部分は無いのですが おもしろい映画なので 紹介させていただきます


本作品は 若きグウィネス・パルトローが主演したイギリス・アメリカ合作の映画ですが 特にイギリスでは大ヒットし その年の国内最高興行収入を達成したそうです
あくまでロマンチックな話がメインなのですが 運命が分岐して進む並行世界が 一風変わった世界観を作りだしています
中盤までは 演出方法以外 比較的王道とも言える内容ですが 終盤のヒリヒリするような展開が素晴らしいです


ピーター・ハウイット監督自身による脚本の構想には 7年もの歳月が掛かったそうです
この間に20回ほど脚本の書き直し 数千ポンドの借金 そして1回の神経衰弱なども経験したといいます
また 映画の内容について 1987年に公開されたポーランド映画「偶然」と比較されることが多いようですが こちらは未見なので 観たことがある方がいれば教えていただければ幸いです


ちなみに ロックバンドであるクイーンのブライアン・メイは ピーター・ハウイット監督と仲が良かったことでテーマソングを書きましたが 別のレコード会社が映画に共同出資しているため 使用できなくなってしまったそうです
この曲は「Another World」というタイトルで 完全にこの映画のテーマに基づいた内容になっていますので よければ聴いてみてください
分岐する世界と それぞれの運命を描く脚本が素晴らしい 本作品
ラストシーンまで素晴らしい 傑作映画となっています


4.エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス (2022年)

監督は ダニエル・クワン, ダニエル・シャイナート
パラレルワールドやマルチバースをテーマに 破産寸前の女性が躍動するSFアクションコメディです

家族でコインランドリーを経営し 忙しなく働く妻のエヴリンは 頼りない夫や反抗期の娘 頑固な父と暮らしていました
税金申告の期限が迫る中 別世界からきたという夫のウェイモンドが現れ 並行世界へ向かうことに...というストーリーです


製作費は 推定1430万ドル
製作陣が"マーベル映画のケータリング代"と称するような製作費の本作品では「スイス・アーミー・マン」で知られる 通称ダニエルズの2人が監督をつとめました
カンフーアクションに下品なギャグを絡めた ハイテンポの映像が強烈な魅力を放つSF映画です


作中では パラレルワールドの自分から特殊能力を得るという奇妙な設定で  ドタバタなコメディが描かれます
元々はジャッキー・チェンが主演する前提で脚本が構想され 夫婦関係を描くアイデアを思いつき 最終的な主役がミシェル・ヨーになったといいます
また 夫役のキー・ホイ・クァンは 本作品の撮影まで俳優業を20年以上休業しており その間には木村拓哉が出演した「2046」での通訳や 先ほど紹介した「ザ・ワン」の武術指導アシスタントなども行っていた 苦労人だそうです
今作はコインランドリーからはじまる壮大な物語になっていますが かなりぶっ飛んだ設定にも関わらず スッと感情移入できるのが不思議です
奇抜でナンセンスな映像表現と 独自の観点で多様性に向き合った 唯一無二の内容といえます


素晴らしい映像表現が見どころのひとつですが すべてのVFXは監督2人を含む9人で行われ VFXに精通している者はいなかったそうです
驚くべきことに オンラインで見つけた無料のチュートリアルを使い 独学で技術を習得したといいます
ラフ編集から削除されたシーンが30分ほどあるそうなので いつか完全版を観れたらいいなと思っています


かなり下品度合いの強いコメディながらも優しさを感じる内容で アカデミー賞7部門を受賞した 本作品
世界にはさまざまな正解が存在することを教えてくれる そんなSF映画となっています


5.ミスター・ノーバディ (2009年)

監督は ジャコ・ヴァン・ドルマル
ベルギー,カナダ,フランス,ドイツ合作のSFファンタジー映画です

舞台は2092年
科学の進歩により 人間は永遠の命を手に入れていました
そんな中 118歳の年齢をむかえる主人公ニモは 世界で唯一の"命に限りがある人間"であり 誰も彼の過去を知る者はいません
死を目前にした彼は 医者の催眠やインタビュアーの質問を通じて 自らの過去を回想していきます
しかし 彼の過去は普通の人間のような一本道になっておらず 様々な選択によって分岐した人生を同時に含んだ とても奇妙なものだった...というストーリーです


これまで製作されたベルギー映画の中で最も高額な作品とも言われるだけあって 製作費は3,300万ユーロ ※約4700万ドル
「トト・ザ・ヒーロー」のジャコ・ヴァン・ドルマルが13年ぶりに監督をつとめ「モービウス」などで知られるジャレッド・レトが主演しました
音楽を担当したのは彼の兄であり 今作が遺作となった ピエール・ヴァン・ドルマルです


作中では 118歳になったシワシワの主人公ニモと その彼が過去のさまざまな選択を回想するシーンの2通りが描かれます
ニモが回想する世界は さまざまな選択に基づいて枝分かれしている現実であり 空想でもあります
希望であると同時に絶望でもあり すべての可能性をもつ世界です
主人公の名前である「ニモ」はラテン語の言葉であり 英語では「Nobody」つまり「誰でもない者」を意味する言葉です


例えば「ラン・ローラ・ラン」や「スライディング・ドア」などで描かれたテーマを さらに突きつめた印象の本作品ですが ジャコ・ヴァン・ドルマル監督自身は「Sundays on Leave (原題:È pericoloso sporgersi)」という1984年の短編映画ですでに近いテーマに取り組んでいました
これは ある子どもが電車に乗るか乗らないかで分岐するストーリーであり 今作にもこのようなシーンが登場します
この手の映画がまだメインストリームに登場していない 25年前に構想が開始されていたとは 正直驚きです
また 主演のジャレッド・レトはこの映画に出演した後に 自身のバンド「サーティ・セカンズ・トゥ・マーズ」に集中するという理由で俳優活動を休止し 4年後の「ダラス・バイヤーズクラブ」で復帰しました
ちなみに 2021年にも「Mr.ノーバディ」というSFではない映画がありますので ご注意ください


それはさておき...未来の可能性を描き パラレルワールドというテーマに真っ向から挑んだような 素晴らしい脚本の本作品
タイムトラベル映画のように楽しめる 傑作SF映画になっています


6.バタフライ・エフェクト (2004年)

監督は エリック・ブレス, J・マッキー・グラバー
過去へ戻ることができる超能力をテーマに描かれる 傑作SF映画です

時おり 短期間の記憶を失うことがあった少年エヴァンは 心理療法士の勧めで 治療の一環として日記を書き始めることになりました
記憶喪失の症状は その後7年間発現することなく 大学生になったエヴァンは喜びます
しかしある日 日記を読み返すと その日記に書かれている過去の時点へ戻ることができるという 特殊な能力に気づきます
そして 幼馴染のケイリーの人生を狂わせてしまったことに気づいたエヴァンは 過去に戻り 運命を変えようと決意する...というストーリーです


本作品では 過去へ戻ることができる超能力がメインテーマとなっており
何度も過去の修正を試みる中で起こる 数多くの悲劇が展開されていきます
記憶をたどりながら 過去に起こった出来事を確認していく さまざまな並行世界の描写が とにかく秀逸です
イギリスのロックバンド Oasisによる主題歌も この映画に素晴らしい余韻を与えています


DVD版には 別バージョンのエンディングがいくつか収録されているものもあり 正直言って大した内容ではないですが もし機会があれば観てみてほしいです
また 続編として「バタフライ・エフェクト2」, 「バタフライ・エフェクト3/最後の選択」があります
そんな本作品は ダークでユニークなストーリーが光る 2000年代の傑作SF映画ですので 機会があればぜひご覧になってください


7.ブラック・ミラー: バンダースナッチ (2018年)

監督は デビッド・スレイド
Netflixで公開されている"視聴者体験型"の 斬新な作品です

舞台は 1984年のイギリス
実家で父親と暮らすアマチュアプログラマーの青年ステファンは 物語の展開を自分で選択できるファンタジー小説「バンダースナッチ」を好み ゲーム化の構想を進めていました
そんな中 憧れの天才プログラマーであるコリンが在籍する ゲーム会社のタッカーソフトに 自作ゲームの売り込みをかけることになります
そこでコリンに認められたステファンは 短い納期でゲームを完成させるべく奮闘する...というストーリーです


本作品は Netflixの人気オムニバスドラマ「ブラック・ミラー」の映画版ですが とても特殊な演出の仕掛けられた作品です
作中では 主人公の行動が何度も2つの選択肢に分岐し それを視聴者が画面上でクリックすることで物語が展開されます
そのため 物語の道筋はもちろん 複数の結末にたどり着くことができる インタラクティブ作品と呼ばれるものです


物語の結末は合計で5種類あるそうで 視聴者の選択によってはセリフの内容が微妙に変わったり ゲームオーバーになったりもしますが 選択をやり直すことも可能です
昔観た仮面ライダーのテレビ放送で 好きな結末を選んで指定された電話へ掛けるというものがありましたが それを進化させた演出でしょうか
中には こちらが俳優をコントロールしているように思えるようなユニークな演出もあるので ぜひそれぞれのエンディングをチェックしてみてください
普通に観ると 最短40分ほどで終わる作品ですが 分岐シーンをすべて合わせると312分になるそうです


実はこの作品の元であり イマジンソフトウェアが開発していた「Bandersnatch」という幻のゲームが80年代に存在していますが 同社の破産によって実現しなかったそうです
しかしこのゲームのコンセプトは 1985年のゲーム「Brataccas」にいくつか取り入れられているそうですので 興味がある方は調べてみてください
また 作中には「バンダースナッチ」の著者としてジェローム・F・デイヴィスという架空の人物が登場しますが これを演じるジェフ・ミンターは実際にゲームプログラマーです


それはさておき...パラレルワールドを描いているというよりは この作品自体がパラレルワールド的な構造をもっているため 今回紹介させていただきました
よく見ると「ドニー・ダーコ」のような要素も多数含んでいる 本作品
ここまでSF的な体験ができることもなかなかないと思えるような 現代の傑作となっています

※本作品はNetflixで配信中

あとがき

今回は「パラレルワールド・マルチバースを描いた名作・傑作SF映画」というテーマでのSF映画紹介でした
無限の可能性を描くような映画から 悲しい内容まで とてもおもしろい傑作揃いです
第2弾以降も構想中ですので またいつか紹介させていただきます
最後までご覧いただき ありがとうございました

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