頭上の花は自分じゃ見えない
今から12年前のことである。
高校最後の春休み、私は地味でパッとしない自分の見た目をガラッと変えてみることにした。人生で一度でいいから、「リア充」というものになってみたかったのだ。真っ黒だったショートヘアを明るく染め、エクステとかいう長い付け毛を装着し、顔面には不慣れなメイクを施した。そんな「リア充のコスプレ」は思いのほか効果があり、大学入学と同時に始めたアルバイト先で1つ年上の男性からメールアドレスを聞かれ、トントン拍子でお付き合いすることになった。彼、Dくんは本物のリア充