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教え子から読んでもらった本がジーンと心に響いた話
カリフォルニアから、こんにちは!
東京都公立小学校→シンガポール日本人学校を経て、現在はアメリカの私立小学校で、英語と日本語のバイリンガル教員として働くMeiです。
本が大好きな私は、オンライン授業に切り替わってからも毎日欠かさず日本語か英語の絵本の読み聞かせをしています。学校で授業ができていた頃は私が日本から(シンガポール経由で)持ってきた本や、アメリカ公立図書館に置いてある絵本を片っ端から読んでいました。
ぼくも、私も友達に読み聞かせしたい!
すると、ある日を境に
「私も!ぼくも!家にあるおすすめの本を、みんなに読み聞かせしたい!」
という声が続々と挙がってきました。
このアメリカの地で、我が家にある(学校にある)日本語の本は限られているので、
「お友達におすすめしたい日本語の本を是非持ってきてね!」
と声をかけると、日替わりで素敵な日本語の本をクラスの子どもたちがもってきてくれるようになりました。
私に読んでほしいという子もいれば、自分で読みたいから練習してきた、という子もいて、気付けばクラスの最初に物語を共有して日本語を楽しく使うかけがえのない時間となっていました。
口数少ない少年が選んだ絵本
オンライン授業になってからは、主にデジタル絵本を使って読み聞かせをしていたのですが、ある時、普段はシャイなある男の子がおすすめの本を読んでくれることになりました。
その名も
「おしっこちょっぴりもれたろう」 ヨシタケシンスケ
正直、「お…こりゃまた、すごそうなのチョイスしてきたな…。」と思いましたが、色々なジャンルの本に触れることを大切にしたいのと、名前からして面白そうなので(笑)みんなで楽しめればOK!と思って読んでもらうことにしました。
これは、いつもちょっぴりおしっこをもらしてしまう男の子が、自分と同じ境遇の子を探しているうちに、人それぞれに悩みがあることを知って、最終的には「おしっこちょっぴりもれたろう」な自分を受け入れる…というお話。
私の心に響いた一文
ヨシタケさんはいつも子どもの気持ちを代弁するような絵本を書かれていて大好きなのですが、私はこの話は読んだことがありませんでした。いつもは口数が少ない彼が、一生懸命読んでくれるのを聞いていて、ぐっと心を掴まれた一文がありました。
それは、
「そとからみたらわかんないけど みんなそれぞれ そのひとにしか わかんない こまったことがあるんだな」
急に胸が苦しくなって、思い出したことがたくさんありました。
●大企業から海外赴任してバリバリ働き、順風満帆なように見えるけれど、兄弟がどんどん結婚していき、自分がいつ結婚できるかどうか心配でたまらないと言っていたイギリス人の友達のこと。
●マレー語や広東語、英語など何ヵ国語も話せて周りからは羨ましがられるけれど、自分ではどの言語も中途半端な気がすると嘆いていたシンガポール人の友達のこと。
●保護者からも児童から教職員からも慕われていて、指導者として素晴らしい評価を受けている同僚が「陪審員制度に当たって裁判所に来いと言われてたけれど、シングルマザーだから誰にも子どもたちを預けられない。」と話していたこと。
周りから見ると、その人のいいところや羨ましいところしか見えないことが多いけれど、それは周りの人に苦労を見せていないだけで、人それぞれ色々なタイミングで人生の様々な悩みと向き合っているんだよな、と考えながら読み聞かせを聞いていました。
たかが子ども用の絵本、と言えばそうなのかもしれません。でも、実はこんな風に、子どもたちと関わってぽろっと言われた一言や、みんなで一緒に読んだ絵本やそれについて話し合うことから、毎日私の方が教えてもらったり、気付かせてもらうことがたくさんあります。この話を聞きながら、この場でこの子たちとこの時間を共有できて本当に幸せだな、と改めて感じていました。
これを読んでくださっている方も、もしかしたら今悩みがあったり、なかなか周りに理解してもらえないことがあるかもしれません。それでも、きっといつかは思いを共有できる仲間と出会えたり、「え?そんなことで悩んでいたのか!」と笑い飛ばせたりする日が来るはずだと私は思っています。
最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。今日も素敵な一日になりますように!