聖なる泉 〜2006年旅の追憶③
グラストンベリー・トアの頂上から、今度はマリアの道をつたって下山します。
次に目指すは、聖なる泉(チャリス・ウェル)です。
チャリスウェルは、2千年もの間、湧き続けている泉。
鉄分を多く含んだ“赤い泉”は、癒しの水として、18世紀頃から広く知られるようになったそうです。
そして、キリストが最後の晩餐で用いた聖杯が、この泉のところに埋められた、との一説があるとか。
ちなみに、アラスカの環境エッセンスにある「チャリスウェル」は、この泉の水を使って、このガーデン内で作られているのです。
チャリスウェル(Chalice Well)
入場料を支払ってガーデン内に入ると、そこはもう植物たちの楽園。
そのガーデンの一番奥に、チャリスウェルがあります。
チャリスウェルの井戸の周りを囲むようにベンチがあるのですが、私が訪れたときには、そこで数人がちょうど瞑想しているところでした。
井戸の傍らには花束が置かれ、ベンチの下の空間には、キャンドルが灯されています。
最初は、瞑想中の人に遠慮して遠巻きに見ていたのですが、いつまでたってもラチがあかないので、思い切って近くまで寄って、井戸にカメラを向けました。
そして写真を1枚だけ撮らせていただいた後に、空いているスペースに座り、目を閉じたのです。
井戸を目の前にして、その神聖なエネルギーを感じようと思って。
ところが、瞑想中の人の静寂を破って撮影をし、乱暴に輪の中に入り込んでしまった非礼さに何だか申し訳なくて、いたたまれなくなってしまいました。
「この場にいてはいけない」と、そんなふうに思われたので、間もなくして席を立ち、少し遠くのベンチに座って井戸を見下ろすことにしました。
どうやら私にとっては、このくらいの距離を保つほうがしっくりくるようです。
井戸をぼんやりと眺めていると、新たな訪問者が小さなブーケを井戸に供え、そして吸い込まれるかのように、瞑想の輪に加わっていきました。
ごくごく自然に、当たり前のように、そこには祈りの場があり、その祈りに共鳴するかのように泉が存在しているかのようでした。
天から光が降り注いでいるのがグラストンベリー・トアなら、地上から光が湧き出しているのが、チャリスウェルです。
塔が天使ミカエルで男性的なエネルギーなら、泉は聖母マリアで女性的なエネルギーなのでしょう。
そんなふうに思いながら、自分はどちらに引かれるだろう……と考えていくと、やっぱり私はグラストンベリー・トアのほうに惹かれてしまうのでした。
このチャリスウェルは「地球上で最も神聖な空間」であり、清らかなエネルギーは、古代から変わることなく純粋なまま保たれているそうです。
無神経に静寂を打ち破って、ズケズケと入ってしまったことを後悔しながら、いつか再び、もう一度訪れてみたいな、と思ったのでした。
そして、このときの痛い体験が、次なる光の空間で活かされることになるのです。
いただいたサポートは、人々や地球の癒しと成長に貢献する人やモノ・グループへと循環させてゆきます。ひとしずくの水が大海へと繋がっていくように、豊かさのエネルギーをここから世界のすみずみにめぐりめぐらせていくためのファースト・ステップに選んでくださるのだとしたら、大変光栄です💫