イギリス大学院の選び方 SOASってどうなの?
私が留学を考え始めたとき、漠然と「LSEで勉強したい」と思っていました。留学準備を始めた当初、SOASについては聞いたこともありませんでした。ネットで情報収集してもSOASに関する日本語の情報は限られていたように思います。
この記事では、どの学校に出願して、どのように進学先を決めたのか、実際にSOASに進学してみてどうだったのか、について紹介していきます。
私が大学院を選んだときは、1、やりたいテーマで修士論文が書けそうか、2、関連する分野の教員がいるか、3、モジュールが面白そうか、で決めました。
実際に通ってみた感想として、1、モジュールのユニークさ、2、リベラルな校風、3、クラスメイトのレベル、について書いていこうと思います。
SOASを選んだ理由
私の場合、大学院留学に際して勉強したいテーマがかなりはっきりと決まっていました。なので、そのテーマで修士論文が書けそうなコースを探しました。LSEやYork大学を検討する中でSOASに出会いました。UCLやKCLにも出願しようかと思いましたが、勉強したい内容に近いコースがありませんでした。UCLに関しては、社会学系のコースが教育学に比重を置いており、私には合わないと判断した覚えがあります。
結局、LSEのSocial AnthropologyとSOASのSocial Anthropologyからofferをもらってかなり迷ったのですが、LSEはモジュールがベタな人類学の授業ばかりであまり面白くなさそうだったこと、日本が専門の教員がいなかったこと、などの理由でSOASにしました。私は日本を対象に人類学的な調査をしようと思っていたので、日本が専門の教員がいるというのは大きかったです。
(ちなみにその地域の出身者が出身地について人類学的研究を行うことを"Native" Anthroplogyといい、SOASではこうした手法も広く受け入れられていますが、いわゆる人類学の伝統とはやや異なるので、他の大学院で受け入れられているのかどうか分かりません。SOASでは日系の知人が日本を対象に研究していることを知っていたので、SOASなら大丈夫だというのは事前に分かっていました)
(※追記 LSEのSocial Anthropologyでは修士論文執筆に当たって調査をさせてもらえないそうです。調査を実施するには調査法や調査倫理に関するきちんとしたトレーニングを受ける必要があるから、だそうです。27/6)
当たり前のことですが、大学院を選ぶ際はモジュールの比較、どのような課題文献が課されているのか、在籍する教員はどのような研究をしているのか、を調べることが重要です。
特に勉強したい分野に強いこだわりがなく、海外に留学して箔を付けたい、という人は名門校の倍率が低いコースがねらい目だと思います。
モジュールのユニークさ
SOASはモジュールがかなりユニークだと思います。例えば、Social AnthropologyのコースにはDavid Moss教授が在籍しており、医療人類学に関する網羅的な講義を受講することができました。またダイアスポラ研究など比較的最近になって注目されている分野の講義が開講されていました。
また、フェミニスト政治経済学の授業が常設されているのはSOASくらいではないでしょうか。
パレスチナ研究センターがあるのも特色だと思います。
学校名からもわかるように、アフリカ、アジア、中東の地域研究に強い学校です。知り合いの日本人の弁護士さんは「他の弁護士と差別化するためにSOASに来た」と言っていました。イスラム経済やイスラム金融を学んでキャリアに活かしている人の話はたまに耳にします。
あと開発学に強いので、開発学がやりたい人にもおすすめです。開発学のランキングだとSOASはLSEやオックスブリッジを抑えて世界第三位にランクされています。
リベラルな校風
SOASはリベラルな校風で知られています。実際、LGBTQ、Neruo Diversity(ADHDやASDなど)に対してはかなり理解が進んでおり、学生の多くが"woke"という印象です。(イギリスでは、いわゆるポリティカルコレクトネスに対する意識が高い人たちを"目覚めた"という意味でwokeと呼びます。これには揶揄も含まれているように思いますが、私には揶揄する意図はないです。適当な言葉が思いつかなかったので使っています)
それと先日からイスラエルのジェノサイドに反対する学生たちがキャンパスでテントを張って泊まり込みの抗議行動をしています。
イギリス国内でもリベラルな校風で知られています。人によっては「左翼っぽい」というイメージを持っている人もいるようです。そういえば逮捕されたJust Stop OilのメンバーにもSOASの学生がいましたね。
クラスメイトのレベル
中にはもちろん優秀な人もいますが、正直なところ、優秀ではない人、またそもそも学業に対してやる気がない人もいます。
わざわざ高い学費を払って留学に来ているのに、旅行やコンサート、イベントで遊びまわっているクラスメイトがいて最初は正直驚きました。(それはそれでイギリス留学の楽しみ方なのかなと思うようになりましたが)
ただ、これはどこの大学院でも同じなのかもしれません。東南アジアや中国の高所得層がとりあえず子女をイギリス留学に行かせる、というパターンが少なくないようです。(中国に関しては富裕層がこの方法で海外に資産を移転しているそうですが詳しいことは知りません)
私はイギリスの大学院は世界各国からモチベーションが高くて優秀な人がたくさん集まっているのかと思っていたので、ちょっと期待外れでした(笑)
もちろん優秀な人も何人かいましたが、全体のレベルは思ったよりも低かったです。
SOASはすでに述べたように個性的な学校なので、わざわざSOASを選んできている人もたくさんいますが、比較的多くの人がUCL、KCLやLSEに入れなかったから来ているというのは入学してから知りました。
ちなみに、オックスフォード出身の友人が「学部はレベルが高いけど、大学院に来る学生は全然優秀じゃない。君もオックスフォード出願すれば良かったのに!」と愚痴っていました。オックスブリッジというと、さすがに手が出ない、というイメージですが、試しに(?)出願してみてもいいのかもしれません。
あとそもそもイギリスの大学院って全然レベルが高くないんですよね。学部教育が3年で修了するからかもしれません。日本の学部、大学院の教育に比べると、*英語さえできれば*、全然問題なくクリアできると思います。コース自体が1年で、修士論文にかける時間も数か月なので、2年かけて修士論文を練り上げる日本の大学院に比べればかなり楽なんじゃないでしょうか。
というわけで、SOASに受けたい授業がある、リベラルな校風に憧れる、という人にはとてもいい学校だと思います。
(16/06/2024)