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あの子の笑顔を撮るために~トーゴ写真撮影秘話~

プラン・インターナショナルは、2022年3月からトーゴ共和国で「障害のある子どもの教育支援」プロジェクトを実施しています。プロジェクトの進捗管理をしつつ、活動の写真を撮ることも大事な業務の一つ。プロジェクトを応援してくださっている方々へたくさんの現場の今を伝える手段として、写真やビデオはとても重要です。今日はそんな撮影現場あれこれをご紹介します。

こんなはずじゃなかった

2023年10月頃からでしょうか、鏡を見ると気持ちが沈みます。その理由は、右目から2.5センチほど下にできた4ミリほどのシミ。また左目付近に発生している直径2ミリほどのシミ6個。トーゴに赴任する以前、私の顔にはシミは一つもありませんでした。トーゴに来て早2年6カ月、こんなはずじゃなかった。なんでこんなにもシミだらけな顔になったのか。私は毎夜、鏡をみて嘆きました。
思いつめた私は空港の免税店でシミを消すクリームを購入しました。そう、私は肌に課金をすることにしたのです。そして飛行機の機内で考えたのです、シミができた原因を。

会議は外で開かれる

私が担当しているプロジェクトでは、地域の人々が障害についての偏見をなくし、すべての子どもが教育を受ける権利があることについて話し合う機会を設けています。話し合いをする際には、プラン側で特別な会議室の準備をすることはありません。地域の人々がいつも話し合うスタイルを重視しています。たいていの地域には会議室などはなく、地域の大きな木の下やなんとなく広い場所が会議場となります。

木の下会議場の様子

トーゴの人は集合写真を撮るのが好きなのですが、私はなるべく地域の人々が活動に参加している姿を撮影するよう心がけています。集合写真であれば、活動の前後で参加者を集めて写真を撮って終わり、後の時間は日陰に座って待機をすればいいのでしょう。でも、これでは本当に活動を実施したのかが応援をしてくださっている方々に伝わりません。このため、地域の人々が熱心に議論をしている姿を撮るために、5時間は紫外線を浴び続け、撮影をしています。カメラをパシャッ。

撮りたいのはプロジェクト参加者の真剣な顔

笑顔は太陽の下で輝く

学校で勉強している子どもたちを撮影する時は、事前に先生に「撮影を意識しないで、いつも通り授業を続けてください」とお伝えします。
しかし、子どもが授業に集中するかというとそれは違います。外国人(筆者)がカメラをもって教室をうろうろすれば、気になるのが当然です。ほとんどの子どもたちにとって、外国人を見るのは初めて。授業に集中せずに先生に注意される子、そわそわした感じで授業に挑む子、カメラ目線でおどける子。自然な勉強風景を撮影できないどころか、大切な勉強の場を邪魔してしまいます。撮影隊(筆者含)は早々に敗北宣言をし、教室を退散します。

そんな子どもたちがのびのび遊ぶのが休み時間。撮影隊はギラギラした太陽の照りつける校庭で子どもたちの撮影に挑みます。ダンスを披露する子、運動をする子、大声を出して大笑いする子、校庭では自然な笑顔の子どもたちを撮影することができます。重さ2キロはあろうかと思われるカメラをもって、私は炎天下を走り回ります。カメラをパシャッ。

さあ、休み時間だ!


被写体を探して校庭をうろうろ


校庭で子どもに囲まれる筆者

建設現場は広大な草原

新しい学校の建設をするにあたり、建設現場の確認や工事の進捗を見るため、毎月現場へ出張しています。草原としか思えない現場に立ち、「あそこにトイレを建設するぞ、井戸の建設予定地はあっちだ」という現地の人々の意見を聞きながら、トイレや井戸の建設予定地の場所に目印をつけ、土地図面に落とし込んでいくのも私の仕事です。いざ建設が始まると、建設中の学校の進捗もその都度撮影しています。カメラをパシャッ。


草原のど真ん中で建設位置の確認を行う


土地図面の確認終了の記念写真

トーゴの人々の願い

草原としか表現できない学校建設現場で、妙なものを発見しました。170センチメートルくらいの木の棒が地面からまっすぐに建てられており、その棒の先には卵が置かれているのです。聞いたところ、これは地域の人々による祈りを込めたオブジェだということです。

「学校建設が無事に進みますように。安全に終わりますように」

何もない広い草原で、このオブジェはとても荘厳な物に見えました。プロジェクトが背負った住民の願い。2025年2月には、笑顔の子どもたちが新しい校舎で学びます。オブジェをパシャッ。

地域の人々の願いを込めて

さて、冒頭で触れた肌への課金を始めて3カ月になります。若干、シミが薄くなってきたのではと思っています。いや、高額な課金をしたのでシミが薄くなったと思いたいだけかもしれません。シミが薄くなるにつれ、少しだけさみしさを覚えるのです。シミが薄くなると同時にトーゴの思い出も消えてしまうのではないかと。その時は、たくさんの写真をもう一度見直そう、トーゴの人々が活動に打ち込んだ表情を、そして子どもたちの笑顔を。

※このプロジェクトは、外務省(NGO連携無償資金協力)の支援のもと実施しています

国際NGOプラン・インターナショナル プログラム部 武田めぐみ