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光る風

"この物語は一九七〇年以降の仮想日本が舞台である(中略)それが十年後おこりうる話であるか あすの話になるか それは だれにもわからない"1972年初版、2015年完全版として発刊された本書は架空の近未来日本を舞台にしつつ、今にも響くディストピア傑作漫画。

個人的には、劇画調画風のギャグ漫画『がきデカ』で一世を風靡した著者が、その前に書いていた作品と知り、気になって手にとりました。

さて、そんな本書は第二次大戦で敗戦後も未だに「愛国心」の名の下に軍事国家化が進む架空の日本を舞台に、ガチガチの軍人家系に生まれるも【本人はいたって芸術家気質】の気ままな主人公、六高寺弦がある日、同級生が募金活動をしていただけで警察に射殺されるのを目撃して衝撃を受け【世の中が何かおかしくなっているのでは?】と疑問を抱き、様々な理由で虐げられていたり、拘束されている人たちと出会っていくのですが。

まあ、まずこの全編にわたって不穏な空気漂う本書が、今も続く『週刊少年マガジン』に『あしたのジョー』や『天才バカボン』『巨人の星』といった歴史的傑作と一緒に連載されていた事実に、不条理ギャグ漫画の『がきデカ』から著者作品を知った私としては作風の違いも含めて驚かされました。

また連載されていた1970年。敗戦の1945年からわずか25年と、高度経済成長が続き大阪万博が華々しく開催される一方で、冷戦時代真っ最中で【ベトナム戦争が未だ続いていた時代】の空気が、本書には色濃く反映されており【軍事主義、全体主義の復活、台頭への警鐘が鳴らされている】わけですが。2022年現在、まさかの戦争が再び起きた中、昔話と片付けられない【同時代的なリアリティ】を感じてしまうことを残念に感じてしまった。

著者の初期代表作としてはもちろん、現代日本にディストピア的な不安を感じている全ての方にオススメ。

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