ウは宇宙船のウ
"『自分でも気がついていることですよ、先生。でも、単純じゃありません。多触手状のものです。でも簡単にいえばー宇宙船なんです』先生はにっこりと笑った。『"ウ"は宇宙船の略号だね?』"1962年発刊の本書は爽やかな表題作含む宇宙から恐竜まで希望が込められた珠玉の16編。
個人的に著者の(翻訳を通しても伝わる)美しい文体が好きな事もあって本書を手にとりました。
さて、そんな本書は映画化もされた『華氏451度』等でも知られた著者が、特に"過去に驚嘆し、現在を駆け抜け、ぼくらの未来に高遠な希望を持つ、あらゆる男の子たちに"(『はしがき』より)捧げれた短編集で、少年たちの宇宙への憧れに満ちた表題作から始まり、宇宙船パイロットの息子を思う両親『初期の終わり』逆に息子のために宇宙船(シュミレーター)をつくる父親の話『宇宙船』といった家族をテーマにした物語。またタイムトラベルで恐竜を狩りへ『雷のとどろくような声』また恐竜が灯台を襲う『霧笛』といった恐竜話他、様々な作品が豊富な想像力、抒情的なテキストと共に収録されているのですが。
様々なタイプのSFジャンルの中でも、日常で想像力を超えてくるような作品が好きな私なのですが。本書執筆時、アメリカとソ連の宇宙開発競争の中、有人宇宙飛行を成功させた1961年より少し後に編まれた本書は流石にクラシカルとはいえ、宇宙に込めたワクワク、希望が伝わってきて楽しかった。
一方で本書はSFジャンルではあるも、前述したように少年たち(かっての少年たち含む)に捧げられた本として普遍的なメッセージも込められているので、多くの人に読み継がれてほしい。そんな気持ちにもなりました。
古典SFの傑作短編集として、全てのSF好き、今と過去の少年たちにオススメ。