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美の法門

"しかるに不二美の世界に来れば、個人の上下は力を失う。年齢の差、賢愚の別も消えてしまう。誰が、何時ら何を作っても、そのまま救われる。かかる世界において衆生済度は果されよう"1995年発刊の本書は民藝美学の基盤を浄土思想に求めた著者の晩年の傑作集。⁣

個人的にメタバース芸大RESTのサブテキストとして本書を手にとりました。⁣

さて、そんな本書はアカデミズムに対する違和感を覚えて芸術を哲学的に独自に探求、日用品に美と職人の手仕事の価値を見出す民藝運動を始めたことで知られる著者の『仏教美学』に関する著作六篇を収録したもので、西洋美術史を美醜の二元論、個人主義文化で育てられた天才たちを中心としたものだと喝破した上で『それでは人々は救われぬ』と、『本来無一物』『空』仏教には美醜の二元論を超えた美がある。と、それを『不二美』と名づけて対比しながら可能性を独自に語っているのですが。⁣

美術史を語る立場の一人として恐縮ですが。著者のことは『民藝運動』を始めた人物としての表面的な認識しかなく、著作についても初めて触れたのですが。美について。ここまで独創的、また『人々を救うものである』と希望をもって語っていた事は知らなかったので、強く印象に残りました。⁣

また個人的には『わかりやすい』西洋美術史について語るのが好きですが。裏表的に自身の『不二美』と対比しながら著者に語られる西洋美術史についての論説も、明快なくらいに本質をつかんでいて驚きました。⁣

民藝運動に興味ある方はもちろん、美学、アートの可能性を信じる全ての方にオススメ。

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