リプレイ
"ジェフ・ウィンストンが死んだのは、妻と電話をしている時だった。『私たちに必要なのはー』彼女はいっていた。だが、何が必要なのか、ついに聞かなかった"1987年発刊の本書は記憶を持ったまま人生を何度もやり直す男を描いた著者代表作にして世界幻想文学大賞受賞作。
個人的には主宰している読書会で紹介されて手にとってみました。
さて、そんな本書はニューヨークの小さなラジオ局でしがないディレクターをしている43歳のジェフが疎遠になっている妻のリンダと電話している時に突然死するも【記憶を保ったままに】25年前、18歳の時の自分の身体に戻っているのに気づき、今度こそ社会的に成功しようと記憶を頼りに競馬や株で大金を稼ぎ、経営者として成功するも【再び同日同時刻に理不尽に死亡】その後も何度も何度もリピート。人生をやり直していくのですが。
2022年現在、小説はもちろん映画や漫画でも近年はよく題材になるタイムトラベルものと較べると、例えば『時をかける少女』や『東京リベンジャーズ』ように【自分の意思や能力で過去に戻る】タイムリープと違って、強制的に死亡し【過去に何度も戻される不条理感】が新鮮で、前述の二作品のようなエンタメ作品の爽快さとはまた違う【カフカエスク的な面白さ】がありました。
一方で、発刊時の時代的風潮もあるかもしれませんが。主人公のジェフが中年から若者の肉体を得て3回目の途中まで自分の金銭欲や性欲を満たしていく【序盤の流れは短絡的で中弛み】する感じも受けたのですが。同じく人生をリピートしているパメラが登場した後の【後半にかけては展開も広がり】最後まで先が読めない楽しさがありました。
タイムトラベル・ファンタジーの良作として、また不条理小説好きにもオススメ。