京都泰家 町屋の暮らしと歴史
"重視されるのは建造物だけでなく、その中での暮らしや生業のありのままの姿ではないだろうか。京町家条例は、代々家業を継承する中でそれにふさわしい建造物を守ってきた所有者の思いに寄り添ったものとは言いがたい"2024年発刊。本書は泰家の暮らし、京町家保存の課題を指摘した一冊。
個人的には自身もちっちゃな町屋に住んでいる事から気になって手にとりました。
さて、そんな本書は18世紀以来、小児薬『奇応丸』の製造卸売を継承してきた京都『泰家』の空間構造と年中行事の様子を美しい写真と共に紹介する第一章、そして平安京成立後において町屋や町がどのように成立してきたかを説明する第二章、そして第三章では再び泰家の生業の薬種業の歴史について。そして最終の第四章では戦後の京都、さらには日本の都市計画を振り返ると共に、文化財保護に関する既存の法令や条例が、京町家をはじめとする民家の継承・保存において大きな課題を抱えていること、とりわけ建物保存以外の【生業や暮らし、コミュニティの存続には必ずしもつながらない】現状を指摘しているわけですが。
同じく京都、町屋に住みつつも。忙しさを理由に四季の行事、建具替えなどをサボり気味な私にとって、泰家の方々の丁寧な暮らしぶりには大きく刺激を受けました。
また、町屋たちがマンション建築や再開発というお金儲けのために壊されていく姿を見て心痛める私にとって、今の法令や条例では民泊やカフェに転用されても『建物さえ残ればいい』といった感じで、所有者の生活や気持ちに寄り添ったものとは言い難い。という指摘にも頷く部分がありました。
泰家のファンの方はもちろん、京町家や都市計画に興味ある方にオススメ。