アーサー王宮廷のヤンキー
"希望をもち、確信をもってやろう。まず第一にしなければならないのは、修正された君主制体だ。それもアーサーの時代が終わるまでのものだ"1889年発表の本書は、19世紀アメリカで生まれたヤンキーがひょんなことから円卓の騎士たちの時代にタイムスリップ、内政チートする奇想天外なSF傑作。
個人的にはSF好きを自称しているにも関わらず、H・G・ウェルズの『タイム・マシン』(1895)年より早く出版され、タイムトラベル『SF小説の元祖』とも呼ばれ、また本書の主人公のとった政策が、実際に世界恐慌を克服するためにルーズベルト大統領が採用した『ニューディール政策』の名前となった事で有名な本書。未読だったのですが。ようやく手にとりました。
さて、そんな本書はアメリカ東海岸、ハートフォード生まれの"ちゃきちゃきのヤンキー"ハンクが『トラックに轢かれる』もとい職人同士の大喧嘩で【ガーンと一発殴られタイムスリップ】いきなり6世紀のアーサー王治世下のキャメロットに時間を遡って転移。19世紀の『現代人』のチート知識を使って(魔術師マーリンをあっさり退け)成り上がり『酒池肉林ハーレム』をつくるわけでなく、身分に関係ない【理想的な共和国家の実現】を目指してストイックに孤軍奮闘していくのですが。(まさに今なら『小説家になろう』系ですね。。)
まず『ハックルベリー・フィンの冒険』の数年後に【こんな奇想天外な小説を書いていたのか!】というのがとにかく衝撃的で。おそらくはスウィフトの『ガリバー旅行記』の様な風刺小説といった意図で書かれたと思うのですが。(自分の)理想実現の為に、マーリンの塔を【爆弾で吹っ飛ばしたり】ランスロットを始めとする騎士達とカウボーイの様な投げ縄や【ピストル、ガトリング砲で立ち向かったり】タイムトラベルあるあるの"後の歴史に影響を与えてはならない"的な『お約束』を【まったく意に介さない】展開に胸が熱くなりました。
一方で、後年になると『48歳より前に悲観主義になる者は物事を知りすぎ、48歳を越えてもなお楽観主義者である者は物事を知らなさすぎる』といった悲観主義になった事で知られる著者ですが。本書においては『人生を夢見るな、夢の人生を生きるのだ。』といった別に残した言葉通りに、主人公が、カトリックや身分社会の【旧弊を細部に渡って指摘】近代人として政治や道徳、教育と【あらゆる面で理想社会の実現に立ち向かう】姿からはポジティブな元気をもらえました。
現代アメリカ文学に大きな影響を与えた著者の意外な魅力が見つかる一冊として、またSF小説の元祖として、あるいは『なろう系』チート小説好きな方にもオススメ。(FGOファンには。。オススメしません)
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