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みずうみ

"睡蓮のそばに行ってみようと思ったのですが、駄目でした(中略)昔、一度知っていたんだが、それもずいぶん昔のことになってしまった"1849年発表の表題作含む3作が収録された本書は、法律家にして作家の著者による『青春の残酷さ』を清廉な文章で描き出した恋愛小説集。

個人的には、好きな作家である森鴎外が留学時にも読んでいたという著者の作品に興味があって手にとりました。

さて、そんな本書では著者自身の失恋から描かれたインメン湖を訪れた老人、ラインハルトが枠物語として若き日の初恋を振り返る短編『みずうみ』美しい若妻の痛ましい恋『ヴェローニカ』そして舞踏の練習を通じて、貧しい美貌の少女の可憐なる"叛逆"を描く『大学時代』の3作が収録されているのですが。

全体としての印象は【シンプルな構成で読みやすく】また約180年ほど前の作品なので流石に時代を感じさせる描写もあるとはいえ『若かりし時の恋愛の痛手』という普遍のテーマが【美しく、品のある文章で描かれていて】特に『みずうみ』が短くも人気があるのは失恋を【どちらかと言えば美化する傾向の強い】男性陣の1人として、よくわかる気がしました。("親友"のエーリッヒの『まったく空気読まない』姿には、こいつ。。と思いましたが!)

また、著者が専業作家としてというより【法律家として判事や知事などをつとめながら】コンスタントに質の高い詩や小説を発表し続けた事も知って、同じく会社員しながら表現活動をしている身として刺激というか、勇気をもらえたような気持ちにもなったり。

美しく品のある"失恋小説"を探す人に、またドイツ文学の初めの一冊としてオススメ。

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