就職氷河期世代
"本書は、世代全体をカバーする大規模な統計データを用いて就職氷河期世代の動向を客観的にとらえる(中略)なんとなく個人の経験に基づいて語られがちな通説を、客観的に検証する"2024年発刊の本書は自身も世代である研究者がイメージと実態の乖離に迫った一冊。
個人的には本書で言うところの『氷河期前期世代』である事から興味をもって手に取りました。
さて、そんな本書は労働経済学の研究者である著者が、バブル崩壊後に未曾有の就職難をむかえた1993年〜2004年に高校、大学などを卒業した世代を『就職氷河期世代』と定義した上で、第一章では就職氷河期世代の現状、第二章では結婚や出産行動、第三書では新卒市場における男女間格差や退職行動、第四章でな格差の増大や生活困窮者やその予備軍、そして第五章では、これまであまり注目されてこなかつまた都市と地方の違いや地域間移動について。そして終章では、いわゆる8050問題や無年金高齢者の増加に触れつつデータにもとづく客観的な現状把握、それを前提にした冷静な議論を呼びかけているわけですが。
なんとも後ろ向きなイメージしかない『就職氷河期』という名称にこそ不満がある一方で、私自身はとくに助けてもらうべき被害者。といった認識はまったくないので、著者がデータで各章ごとに検証する通説とは違う客観的な分析を冷静に、また興味深く拝見しました。
また、やはり言葉の呪いというべきか。マイナスのイメージだけにとらわれる危険性について。本書全体で語られているイメージとデータのズレを各章まとめごとに感じて気をつけなければ。と自戒。
『就職氷河期』世代の方はもちろん、データ検証の良書としてオススメ。