しらふで生きる
"不満があれば人は酔いによってこれを解消しようとする。酔うのは簡単である。人は酔いやすい、酒に酔い、他人に酔い、自分に酔う"2019年発刊の本書は50代のある日、酒をやめた著者による真剣でリズミカル、狂気に満ちた断酒本。
個人的には著者と同じく誰かに言われたわけでなく禁酒もとい、節酒をはじめた事、またファンでもあるので手にとりました。
さて、そんな本書は大伴旅人の歌を持ち出し『酒こそが人生の唯一の楽しみ』であると30年間、一日も休まず酒を飲み続けてきた話から始まり、それが『大変化』平成27年に『突発的に酒を飲むのをやめた』著者が【なぜ酒をやめるのか】【どうやって酒をやめるのか】を執拗に執拗に"相変わらずのノリと不思議な合理性"で思考を巡らし、著者なりの結論が出るまでが185ページ。以降は【断酒後に自らに起きた変化について】(途中に中原中也の詩の詠み代えなども挟みつつ)『ダイエット効果』『睡眠の質向上』『経済的な利得』『仕事の捗り』などと100ページ弱で紹介しているわけですが。
まず、前述したとおり。大阪に縁のある私にとっては大好きな作家の一人なので。パンクミュージシャンとしての著者ライブを聞いているような著者の自虐とユーモアと寄り道を交えながら流れていくテキストが【ひたすらに心地よく】楽しかった。
また著者みたいにスパッと断酒はせずに言い訳がましく?節酒段階の私ですが。ドクターストップとかの誰かに言われた『受動的な、わかりやすい理由』ではなく【自らの『主体的な意思』として】始めたからこその内的葛藤は同じ酒好きとして共感しきりでした(ただ、酒を飲む理由は著者の"不満がある"だけでもないのでは?とも思いましたが)
著者ファンの方はもちろん、無類の酒好き、あるいは断酒した方にオススメ。