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キャッチ=22

"『そう、落とし穴がある』とダニーカ軍医は答えた。『キャッチ=22だ。戦闘任務を免れようと欲する者はすべて真の狂人にはあらず』"1961年発刊の本書は戦争の愚かさを皮肉な笑いで痛烈に批判、映画化もされた戦争文学の名著。⁣

個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。⁣

さて、そんな本書は第二次世界大戦中、地中海の小島に駐留するアメリカ空軍基地を舞台に、駐留する米国空軍部隊の爆撃助手ヨッサリアン大尉が理不尽に増え続ける出撃回数、あっけなく仲間たちが死んでいく中、あらゆる手段を用いて自分の命を守ろうとするも【実はどこにも存在していない軍規】「キャッチ=22」事実よりも公文書が優先され、建前と本音が真反対など、あらゆる価値が逆転している悪夢の様な支配の壁が都度、立ちはだかるのですが。⁣

まず、時間軸に沿っておらず、自然な時間の流れがバラバラに解体されている(『非線形の語り口』)事に読み始めた当初は気づかず。あらゆるエピソードが二度以上繰り返され、逆行やフラッシュバックが挟み込まれるのに戸惑い驚きました(ヨッサリアンの精神的混乱の反映?)⁣

また、そんな理不尽な会話劇。一進一退的な展開が長く続くこともあって、作品の末尾近くに至って時間の逆行がなくなり、通常の小説のようにヨッサリアンの行動を中心として物語がスムーズに順次進行するようになった時の開放感、ラストまでの伏線を回収するような流れにスッキリします。⁣

アメリカ文学古典、戦争小説の名著として。またシステムに縛られるディストピア小説としてもオススメ。

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