日本文学史
"わたくしは、書誌的な解説や伝記的な考証をほとんど省略し、もっぱら文藝現象そのものについての展望を試みることにした。これは、やむをえない措置であったが(中略)こうした行き方こそ、日本文学史の本筋ではないかと思う"1993年発刊の本書は比較文学の立場としても秀逸な普遍的名著。
個人的にはメタバース芸大RESTの日本文学講座のサブテキストとして手にとりました。
さて、そんな本書は表現そのものに拠り所を求めようとする批評を『分析批評と』名付けて紹介、日本の国語教育や国文学研究に影響を与えた著者、若かりし時の著作で『古代、中世、近代』までの日本文学(文藝)がわずか約200ページで凝縮されているのですが。
情報の羅列ではなく"前者を【完成】後者を【無限】という二つの極に対する憧れを芸術の世界で考えると、前者を『雅』後者を『俗』とよぶこと"などの分析の斬新さ、また連歌や俳諧、能や狂言、浄瑠璃や歌舞伎と横断して語られる視点も新鮮で終始面白かったです。
また巻末に寄せたドナルド・キーンによる解説『文学の中心へ導く書』にも書かれているように、日本文学の閉鎖的ガラパゴスさではなく、世界文学との比較からも書かれているのには博識さに舌をまきます。本当に素晴らしい。
日本文学、文藝を広く俯瞰的、横断的に学びたい方にオススメ。