国際協力の枠組みの中の「観光」職種で働くということ
国際協力の枠組みの観光という職種は、主に2種類ある。
政府観光局機関や行政、商工会議所などでの観光促進と観光教育機関での授業支援だ。
観光促進:観光資源の発掘、観光情報の収集、現地の観光マップやウェブサイトの更新や管理等の支援、アグリツーリズム強化プロジェクト、SNS情報発信能力向上支援に関わる。
教育機関での授業支援:職業訓練高校の観光コースの生徒たちへの教育支援、ホテル・観光学科での同僚教員へのカリキュラムや授業内容提案等に関わる。
そして中には国連機関の開発途上国事務所にて文化・自然資源調査、研究、民間セクターとの協働促進に関わるものも稀にある。
例えばJICA(国際協力機構)のプロジェクトや事業の募集要項は見ているだけでも面白く、同じ「観光業」という区分であったとしても、行政での観光促進と訓練校での教育では活動内容が全く異なる。そして、もちろん、派遣国はペルー、エルサルバドル、チリ、ネパール、東ティモール、ウズベキスタン、ボツワナ、ジンバブエ等と多岐に渡る。
私の場合は、もっぱら「私が見たい世界を実現してくために何をしていくべきか」という理由から入り、「誰かを助けたい」とか「世界を変えたい」という外に向かった目線ではなく、「自分がどういう環境に身を置いていれば幸せなのか。そのためにどういう世界であってほしいのか?」に重きを置いていた気がする。
「国際協力」や「開発援助」の世界は、何年にも渡り、同じような議論がなされている。政府組織の中で、観光促進を行いながら言うのもなんだが、結局は個人の力によるもので、発展途上国でも誰に出会えるかによってその後の人生が大きく変わる。国が異なれ、世代間の考え方のギャップに、若き青年の熱き想いが潰されている環境を見ることもある。とにかく痛感しているのは「人」と「タイミング」だ。
よく自分の人生はA/Bテスト(マーケティング用語で、施策判断のための試験)だと思って行動している。活動の場所も、メルボルン、ベルファスト、福岡、東京、カントーといろいろ変えてきたし、スタートアップやフリーランス、外資系企業や日系企業等も体験してきた。もっぱらITや観光関連だ。
その中で、「日本の開発援助が世界と戦っていけるように」という想いが強くある。金銭的なものではなく、より多くの日本人(特に同世代の女性)が国際機関や開発援助の世界で活躍する姿を見たいし、自分もそんな存在になりたいと思っていた。その為には、徹底的な専門職の知識とキャリアを積みながら、相手の文化や価値観を受け入れながら、お互いに良い変化が生まれるようにプロジェクトを進めるバランス感覚がとても大事だと思った。それも、「あるもの」が限られた開発途上国の現場で。
誰かが言っていた。「今までにない道を開拓する(道を外れる)ためには、今までにある道を知り尽くしていなければ、道を切り開けない(外れられない)」のだと。そうなのだ、長い間の幾多の人々の経験と実績があり、歴史や文化も含めた今までの道(成り立ち)を徹底的に知り尽くし、その土地の言語を話すことは、他国から来た人の責任でもあり、その国に対する尊重と敬意を示すことでもあると思う。そしてようやく、初めて新たな道を示すことができる気がする。
最後に、発展途上国で国際協力やプロジェクトに携わる際に、何よりも大切にしている考えがあって、それをすでに言語化してくれている方々の言葉があったので紹介する。
「僕の考えでは『ものごとを面白く体験するための5K』というのがあるんです。それは、好奇心、観察力、行動力、向上心、そして謙虚。 特に謙虚は大事。一番最初のワクワクした気持ちを忘れないことです。」
東儀 秀樹(雅楽師)
「僕はよくリスクテイカーだと言われます。でも、本当はそうじゃない。限りある自分の人生を、精一杯やったんだと思いたいだけ。人生を後悔するという最大のリスクを回避しているんです。」
三木谷 浩史(楽天社長)
そして、何よりも「健康管理」と「ユーモアのセンス」。この点では、ここベトナムの人々から日々学んでいる。