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茶道~空けた時間と身近な美学~

仕事や研究の世界では、常に生産性の向上が叫ばれていて、物事の効率性が重視される。論文の世界でも、引用文や構成を整理して効率性を高めるプラットフォームは多数ある。オンラインの世界(またはハイブリッド)に移行して、「空いた時間」が増えたかと思えば、またより一層働く。ワーケーション、というのは、ある意味、終りのない地獄のようなものだとも感じる。電車でも、飛行機でも、どこでも働ける=どこでも働くように期待される。土日も、時差も、場所も、ネット環境も、便利な世の中には「言い訳」がきかなくなる。

私は、そうした資本主義社会や閉鎖感漂う教育への反骨精神のようなものが強いのかもしれない。同時に、「人間らしさ」を取り戻すといった意味では、自然環境に身を置くことや、地方移住等、選択肢が無数にある社会にはとても感謝しているし、とても恵まれているのだと思う。

「トレードオフの現実に向き合うこと」

生産性の向上は、大事だけれど終りが見えない。何かを得るためには、何かを失うことに向き合う必要もある。1955年に出版された、

"Teach Yourself to Live"

は、自分を律することについても書かれていて、改めて、何かを得るために使う自分の時間を選択する際、失うものも多数あるのだという現実に向き合う必要があることを教えてくれる。それは、友人と遊ぶ楽しい時間かもしれない。買い物や洋服を選ぶ時間かもしれない。でも、とにかく決断しなければならない。

"Work hard, play harder"

グローバル企業でよく言われていたこの言葉が好きで、オフィス内でも仕事の途中でも切り上げてよく誰かの誕生日会や盛大な文化イベントが開催されていたし、不思議とその後の仕事に集中できたし、何よりもチームワークがとてもよかった。これは、私たちのバリューが、"Work hard, play harder"に影響されていることがとても大きい。たぶん、私はこの「文化」を守り通したいと考えているからこそ、今の環境でも、もともと移動時間に使っていた時間を、最大限、身近な幸せ構築に使おうとしているのだと思う。

世界を見た上で、自分の半径5メートルで幸せを構築すると、逆説的だけど、自分の中での世界が広がる気がする。

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お茶の世界は雄大で寛容だ。茶道には、正客という一番大事なお客さんがいて、通常こうした集まりでは、その正客がお茶の世界にまつわる様々な質問をするのだそう。そして、周りの人々は、ただひたすら、その話を聞く。

"Harmony and respect"

その場にあるハーモニーを大事にする。周りの人々への尊敬を大切にする。

「聴く」ということは、つまり全神経を集中させて、相手への興味を示すものなのだと思う。

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「幽玄」

という言葉も教わった。「ゆうげん」といわれ、「有限」しか思い浮かばなかった自分がいた。

幽玄を英語訳すると、mysteryとしか出てこないけれど、「奥深くて、はかり知れないこと。趣が深く味わいが尽きないこと」という。

「幽玄(ゆうげん)とは、文芸・絵画・芸能・建築等、諸々の芸術領域における日本文化の基層となる理念の一つ。本来は仏教や老荘思想など、中国思想の分野で用いられる漢語であったが、平安時代後期から鎌倉時代前期の代表的歌人であり、千載和歌集を撰集した藤原俊成により、和歌を批評する用語として多く用いられて以来、歌論の中心となる用語となった。同じ歌道の理念である有心(うしん)とともに並び用いられることが多いが、本来は別の意味の言葉である。その後、能楽・禅・連歌・茶道・俳諧など、中世・近世以来の日本の芸術文化に影響を与え続け、今日では一般的用語としても用いられるに至っている。」

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お茶の世界の四規
和敬清寂
和(わ):お互いに心を開いて仲良くするということ harmony 
敬(けい):尊敬(そんけい)の敬で、お互いに敬(うやま)いあうこと respect
清(せい):目に見える清(きよ)らかさと心の中の清らかさ pure heart
寂(じゃく):どんなときにも動じない心 stability

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でも、お世話になった茶人が、一気に身近な人に感じたのは、

「今日はno harmonyね」

と、誰でも質問できるようにその場の空気を和らげて下さったこと。もしかしたら、no harmonyと言って下さったその瞬間、その場がある種のharmonyに包まれたのではないか、とふと思った。

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参加されていた方からの質問で、

「茶道の時間は、どのような話をしますか?」

という質問があった。

「花鳥風月の話が中心ね」と茶人。

自慢話や、身内の話、政治の話は一切しない。天気や四季の話。なぜかベトナム人の友人がいつも「私は花が大好き」という話をしてくれていたのを思い出す。半径5メートル、そんな人々で自分を囲むと、とても幸せになる、そんな気がする。

「茶道に参加するときは、あなたの心にある一切の邪念を取り除いて、心も体も清らかにして来るの。だから、手をつかってお菓子をつまんでも良い。ある意味、合理的でしょう?」

そして、お茶には抗菌作用も覚醒作用もあるから、お坊さんも眠気防止に良く飲んでいる、という、ここでもまたユーモアのセンスを交えて、教えて下さった。お茶をしている人々は、コロナ感染も本当に少ないのだそう。

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一緒に参加していたラオスの友人が、Pandanという米と一緒に炊きあげ香り付けをする葉の話をしてくれた。よく調べてみると、マレーシアで特に有名なのだそう。血液をサラサラにする効果や、糖尿病や高血圧対策、ぜんそくの緩和などに効き目があるとされている・・・らしい!そして、ゴキブリや蚊などの虫よけにも効果があるだけではなく、マレーシアではクルマの消臭材として使われている・・・!これぞ自然の力!確かに、マレーシアのボルネオ島では、葉や竹が着色や器として使われているのをよく見たな。

「多様性」と言われて久しいけれど、この本来の意味は、自分を含めた自分の身近な世界をより深く掘り下げることを投げかけられている気がするし、そうでなかったとしても、自分はそういう感覚で世界を見ていきたいんだと思う。

お茶の世界から、また身近な美学を学んだ。

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mami@Chennai
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