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裏浅草通信フルーツパーラーゴトー③

向かい風が耳の辺りを騒がせて、ちょっと一息入れてから抜けていく。ゴーという音。そんなに風が強い日じゃないのにと、訝しんだときに、昨日、髪を切ったことを思い出した。一年ぶりに、ロリムという美容室で…。
耳の辺りの髪の毛を落としたから、風の音が聞こえるのだと気づくのに、自転車で一区画分あった。辛くなると癒されに行くKのところに。最近、お気に入りの季節のチョコレート(ドリンク)。ラベンダーとバニラが仕込んであって清涼感
が口に拡がる…が、今日は売り切れで、シダモに戻る。ふわふわとした風を感じながら…それは実際の風ではなく視覚の感覚の風で、それは辛さを包み込んでくれる。だから外に出たときに感じた、本当に吹く風が強く耳に当たった。しかし、それは心地よいものであって、ここから最期のところまでをどうやって、歩くかという、自分という[孤]に関する行き道のことで、まさに固有性、そしてそこまで歩いてきたやり方を反映して、なかなか難しく、けっこう絶望できな思いにも囚われる。
切ったほうが良いですよ。若く見えますよ。20年以上、髪を切っているロリムのTが言うので、切ったもらった。好きに切らせてもらいますよと…笑っている。ディレクションした展覧会も終わって、ギャラリーを閉めて、ほぼほぼ活動を止めて、文章が書けないことに気がついて、がっかりして、先が見えなくなっている自分に始末をつけなくては成らないので…最初に髪を切るのは良いかもしれない。

そんなんで、最後仕事を今、続行している(もう4年近くになるのか…な)のゴトーさんへパフェを食べにでかけると、
「あ、きっちゃったの?」
早速、ゴトーさんが髪の長さに反応する。浅草の人はロン毛の有無に…いやこちらの動向をなんか気にしてくれる。ゴトーさんは浅草3ロン毛(ゴトーさん自分も入れて…)などと言っているから…気になるのかもだけど…。からかわれて、美味しいパフェ食べて…少し元気の風が入ってきた。孤の身の中に…。今日は、今季二度目のチェリー。味が違う!!ゴトーさんに取材に通っての(と、いいながら、食べることに大半の好奇心が向かっているのだが…)一番の収穫というか、認識の変化は…あたりまえだけど、果物に個体差があるということだ。自然は多様性のかたまりだ。こっちが規格を当嵌めようとしてもままならない。日本料理の中では、余りこれを認めない。知っている限りで言うとイタリア料理とタイ料理が…そして一部の中華料理が、素材優先派だ。素材あるように、そしてお客の好みに合わせて。あ、言い忘れたが、自分がかつて通っていて、食べ物のこと、祇園のこといろいろ教わったたん義も、素材個体派だしお客嗜好優先派だ。もちろん、カウンターの向こう側でやっていることの、いろいろの基本を知って受け入れた上でのことだけどね。お客様は神様なんて言っちゃって、その実、どうでもいいと思っている向こう側の人のやり口にのって、例えば本を読むのは読者の勝手で良い、とか…美術は見る人の心のままに見れば良いんだなんて思っているけど——。まず向こうに添って見て理解できて、その上での自由な見方だから…。と、思ってみたりする。食べ物も、素材とそれを生かす技術や気持ちに添って愉しむのを第一にしたい。と、自分は思っている。

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