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にんじんの色とシュレーディンガー方程式

みなさんこんにちは、ずんだもん博士なのだ。みなさんはニンジンは好きですか?僕は好きでも嫌いでもないのですが、さっき肉野菜炒めに千切りのニンジンを入れたらすごく彩りが良くなって、見た目って重要だなぁって思いました。

さてニンジンの色といえば独特の橙色。あれはβカロテンだとかビタミンAだとかいうものの色なんだそうですな。あれはなんでああいう色をしているのか気になったことはありますでしょうか?実はあれは、シュレーディンガー方程式と齟齬がない結果として導くことができます(歯切れ悪)。

いや実は先日、僕は$${\mathbb{X}}$$でそんなことをつぶやいたのですが、本当だっけか?と不安になって、復習のために記事を書いてみました。良ければお付き合いいただきたく。


そもそもシュレーディンガー方程式とは

産業革命を支えた理論

気体は熱すると体積が増え、冷やすと体積が減ります。時は19世紀末。これを利用して、熱のやり取りのみによって動力を得ようという、いわゆる熱機関の開発が大英帝国で始まりました。より効率のよい熱機関を求めて熱力学という学問が発達しました。優れた熱機関を作るには、優れた鉄を鋳造する必要がありました。優れた鉄を鋳造するには、緻密な温度管理のもとで加工する必要がありました。そこで産業界は、熱した鉄が発する光のみによって温度を正確に見極める方法を欲したのでした。当時の科学はビジネスに直結する実業なのでした。

いくつかの実験結果から、長波長で正しいレイリー・ジーンズの法則と、短波長で正しいウィーンの法則が知られていました。ところがあらゆる波長で成り立つ公式というのはなかなか見つからない。そこで登場したのがプランクという人物でした。

プランクは物体の表面に「振動する何か」、つまり共鳴子があると仮定して、これが特定の波長の電磁波を吸収したり跳ね返したりするとして、この謎の物体に統計力学を適用しました。プランクはレイリー・ジーンズとウィーンをフォローするために、いったんは共鳴子の振動数に応じて小さなエネルギーの最小単位$${E=h\nu}$$が宿るとして、統計力学による忠実な理論計算を行いました。おそらくプランクは、出来上がった公式に$${h\rightarrow0}$$の極限をとることを考えていたのかもしれません。しかしながら出来上がった公式は、$${h}$$を0にしないほうが実験結果をよく表していたのです。

おそらくこれが最初の「量子」の発見でしょう。エネルギーに最小単位があるなんていうのは、人間の感覚と乖離しています。例えば物体を持ち上げるとき、位置エネルギーは階段のように飛び飛びに高まっていくのでしょうか?

電子の話

技術の発達によってミクロな世界の観測が可能になってくると、プランクの発見以外にも古典力学では説明のつかない不思議な現象が数多く見つかってきました。例えばミリカンの有名な油滴実験によって、電荷には最小単位があることが理解されました。僕たちはこれを「一つの電子」と理解しています。

一方で光電効果というものが知られていました。金属にX線を当てると電子が飛び出してくるというのです。その電子の個数は光の強さに比例するのですが、不思議なことに、飛び出す電子のエネルギーは光の振動数に比例するようなのです。このような光電効果に対するアインシュタインの有名な解釈によれば、「光も粒子のようにふるまう」ということでした。これなら確かに、光の振動数が単純に運動量と解釈できて、運動量が大きければ勢いよく電子もはじき出されるというものです。しかしこれは明らかに変なのです。なぜならどう考えても光は波だからです。光は屈折するし、回折するし、ヤングの実験によれば干渉もするのです。どうやら光は波でもあり粒子でもあるらしいです。いや、その解釈もおかしいでしょう。ミクロの世界では僕たちの直観の及ばない法則が成り立っているようです。なのでミクロの世界にある最小単位がある波のようなものに、新しく「量子」という名前を付けて、その運動を調べるという「量子力学」が始まったのです。

量子力学の当初の旗振り役はハイゼンベルクという若き天才でした。彼はあくまで実験事実に忠実な理論を構築し、今日これは「行列力学」とも呼ばれています。この理論は現在となっては無限次元の線形代数に基づいていると言えるのですが、当時の学者には馴染みがなく非常に複雑な理論に見えていました。

ド・ブロイ波

そんな中でド・ブロイという物理学者は、非常に大胆なことを言い始めました。もしかすると、すべての物質はミクロ的には波としての性質を持っているのではないか?と。それに基づいて彼は、光電効果やプランクの法則をフォローして、次のような仮説を立てたのです。つまり、すべての物質はエネルギー$${E}$$と運動量$${p}$$に応じて

$$
E=h\nu,\;\;\;p=h/\lambda
$$

という「波」としての性質をもつだろう、と言ったのです。ただし$${\nu}$$はその「物質波」の振動数で、$${\lambda}$$はその波長です。この発想はまあ…そういう考えもあるかもね…で終わらせなかったのがシュレーディンガーという人でした。

シュレーディンガー方程式

シュレーディンガーは、光電効果やプランクの法則、あるいはコンプトン散乱などの古典力学では到底説明のつかない「物質の粒子と波動の二重性」について、ド・ブロイの発想について思いをめぐらせ、じゃあ本当にすべてを波にしてやろうとでも思ったのでしょう。物質は波だ…であれば、周波数$${\nu}$$、波長$${\lambda}$$の波(物質)が、点$${x}$$、時刻$${t}$$の時点で持つすべての情報は

$$
\psi(x,t)=A\cos2\pi(x/\lambda-\nu t)
$$

というふうにあらわされるべきだろう。ここにド・ブロイの考えを適用すれば、

$$
\lambda = h/p\\
\nu=E/h
$$

なので

$$
\psi(x,t)=A\cos\frac{2\pi}{h}\left(px-Et\right)
$$

そして古典力学をフォローすれば、運動エネルギーとポテンシャル$${V(x,t)}$$のもとで

$$
E=\frac{p^2}{2m}+V(x,t)
$$

が成り立つはずっていうことで、これと組み合わせたい…どうしたものか。運動量とエネルギーは$${\cos}$$の引数の中に隠されてしまっている。だからといって$${\cos^{-1}}$$という逆関数を無理やり使うのは、いかにも筋が悪い。そこでどうしたかというと、偏微分でひりだしたのでした:

$$
\begin{align*}
\frac{\partial\psi}{\partial x}&=-\frac{2\pi p}{h}A\sin\frac{2\pi}{h}\left(px-Et\right)\\
\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}&=-\frac{4\pi^2p^2}{h^2}A\cos\frac{2\pi}{h}\left(px-Et\right)=-\frac{4\pi^2p^2}{h^2}\psi\\
\frac{\partial\psi}{\partial t}&=\frac{2\pi E}{h}A\sin\frac{2\pi}{h}\left(px-Et\right)
\end{align*}
$$

うーん、残念…やはり三角関数の逆関数を取るという愚策は避けられないのだろうか!三角関数のカタマリでできている指数関数、オイラーの公式があるではないですか!考え直しだ!物質波は

$$
\psi(x,t)=A\exp\frac{2\pi i}{h}\left(px-Et\right)
$$

だとしましょう。これについて一番都合がいいことは、$${e^x}$$というのは微分しても形が変わらんことですな:

$$
\begin{align*}
\frac{\partial\psi}{\partial x}&=i\frac{2\pi p}{h}\psi\\
\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}&=-\frac{4\pi^2p^2}{h^2}\psi\\
\frac{\partial\psi}{\partial t}&=-i\frac{2\pi E}{h}\psi
\end{align*}
$$

よって

$$
\begin{align*}
E\psi&=i\frac{h}{2\pi}\frac{\partial\psi}{\partial t}\\
p^2\psi&=-\frac{h^2}{4\pi^2}\frac{\partial^2 \psi}{\partial x^2}
\end{align*}
$$

です。さっきから$${h/2\pi}$$っていう定数が頻出してうっとおしいので

$$
\hbar:=\frac{h}{2\pi}
$$

とおきましょう。ディラック定数っていうものです。てことで!古典力学の$${E=p^2/2m+V}$$の両辺に$${\psi}$$をかければ、シュレーディンガー方程式の出来上がりってわけですわ!

$$
i\hbar\frac{\partial\psi}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}+V\psi
$$

シュレーディンガー方程式の解釈

さて彼がこの物理学者になじみ深い「微分方程式」を発表したのは20世紀初頭。ここでひと悶着あったようです。$${\psi}$$って何?って。

そもそもシュレーディンガー方程式の着想はド・ブロイの本当かどうかも分からない物質波であり、難解とはいえ実験事実を忠実に再現するハイゼンベルクの行列力学のほうが当初は認められていたようです。

ですが結論から言えば、シュレーディンガー方程式と行列力学は等価であることがわかりました。ざっくりと説明すると、シュレーディンガー方程式が線形微分方程式であることが奏功しました。どちらも基盤に線形代数を持ってくることができ、どちらも物理量を行列(線形写像)の固有値として導出できるという点では同じだったのです。となれば、難しい行列力学よりも、物理学者になじみ深い「微分方程式」で書かれたシュレーディンガー方程式が多く使われるようになるのは必然でした。ちょっと天動説と地動説の関係に似てるかも…いや、これは言いすぎですね。

シュレーディンガー方程式を満たす複素関数$${\psi}$$は波動を代表するということで、波動関数と呼ばれるようになりました。でも名前を付けたところで、波動関数が何なのか分かったわけではありません。これに線形作用素を作用させると実験事実が出てくることはわかっているのですが、波動関数が何なのかは結論が得られていません。

ボルンという物理学者は波動関数の絶対値の二乗$${|\psi(x,t)|^2}$$は、時刻$${t}$$、位置$${x}$$においてその粒子を見出す確率密度であると解釈しました。これをボルンの確率解釈とかコペンハーゲン解釈と言います。光電効果やコンプトン散乱等の実験事実はこの解釈をフォローしているようです。

波動関数の解釈にはほかにもエヴェレットによる多世界解釈というのがあります。SF映画やシュタインズゲートが好きな子はもうアレでしょう。血沸き肉躍る響きがしますな。フゥゥゥゥゥゥゥヴヴヴヴッッッハハハハハハァ!!!!!!多世界解釈といっても、クソでかい一本の波動関数があって、そいつが観測によって分岐していくイメージの解釈に近いようです。EMANさんは「単一世界解釈と言ってもいいぐらい」と言ってますな。

にんじんの色

えー、量子論を語りすぎましたね。そういう波動関数の解釈に関してはボーアとアインシュタインがレスバしまくってる脇で、ともかく多くの実験事実を説明できるシンプルな理論として、量子力学は優秀だったのです。例えば、にんじんの色を説明できます。

βカロテン

ご存じの方も多いと思いますが、にんじんの色を発色している主な成分はβカロテンという化合物です。目にいいらしいですね。

それはともかく、βカロテンは次のような構造をしています:

User:Slashme - Drawn in BKchem, perl, inkscape, vim, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2973123による

最大の特徴は、この横に長い炭素結合ですな。吸収する光というのは、電子の動きに依存するので、この化合物の長さを自由に移動できる電子が、βカロテンが吸収できる光を決めると考えられます。いや、考えてみましょう。電子はこの化合物の中だけを動くことができ、その外には決して出ることはできない。これは次の井戸型ポテンシャル下の量子とみなすことができそうです。

井戸型ポテンシャル

粒子が無限のエネルギーの壁に阻まれて、そこから外に出ることができない状況というのを考えましょう。これを井戸型ポテンシャルと言います。井戸型ポテンシャル下に置かれる波動関数は以下の方程式を満たします:

$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\partial\psi}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}+V\psi
\end{align*}
$$

ただし$${V}$$は

$$
V(x):=\left\{\begin{array}{cl} 0 & (0\leq x\leq L) \\ +\infty & (\text{otherwise}) \end{array}\right.
$$

です。幅$${L}$$の井戸に閉じ込められたかわいそうな粒子です。これはどう解くんやと思うかもしれませんが、意外と解けます。まず

$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=X(x)T(t)
\end{align*}
$$

というふうに分解できると仮定しましょう。もちろんこう分解できるとは限らないんですが、とにかく何か解を見つけないことには前に進めません。なんでもいいから一つ解を見つけましょう。ってことでこれを方程式に代入しましょう。時間微分は$${dT/dt=\dot{T}}$$、位置の微分は$${dX/dx=X'}$$と書き分けておきましょう:

$$
\begin{align*}
i\hbar X\dot{T}&=-\frac{\hbar^2}{2m}X''T+VXT\\
\therefore\;\;i\hbar\frac{\dot{T}}{T}&=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{X''}{X}+V
\end{align*}
$$

さてこの方程式を見て、すぐに次のことに気が付く人はおそらく天才です。つまり、左辺は時刻$${t}$$のみに依存し、右辺は位置$${x}$$にしか依存していない。これらがイコールで結ばれているということは、どちらも$${t}$$にも$${x}$$にも依存しない定数のはずだ…ということ!ちうことで

$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\dot{T}}{T}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{X''}{X}+V=:E
\end{align*}
$$

とおきましょう。もちろん$${E}$$という記号はエネルギーを意識しての採用です。すると

$$
\begin{align*}
&i\hbar\frac{\dot{T}}{T}=E\\
\Rightarrow&\frac{d}{dt}\log(T)=-\frac{iE}{\hbar}\\
\Rightarrow&\log(T)=-\frac{iEt}{\hbar}+C\\
\Rightarrow&T=A\exp\left(-\frac{iEt}{\hbar}\right)
\end{align*}
$$

となります。$${A}$$は積分定数です。$${X}$$に関する方程式も解いてゆきましょう。まずは$${0\leq x\leq L}$$のときは:

$$
\begin{align*}
&-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{X''}{X}=E\\
\iff&X''=-\frac{2mE}{\hbar^2}X\\
\iff&X=D_1\exp\left(i\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}x\right)+D_2\exp\left(-i\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}x\right)
\end{align*}
$$

となります。$${D_1,D_2}$$は積分定数です。しれっと以前の記事で紹介した二階微分方程式の解を使ってます。さて一方で、電子が井戸の外に粒子が漏れ出るという可能性はありえないので、確率解釈に基づけば$${X(0)=X(L)=0}$$が成り立ってないといけないはずです。つまり

$$
\begin{align*}
0&=X(0)=D_1+D_2\\
0&=X(L)=D_1\exp\left(i\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}L\right)+D_2\exp\left(-i\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}L\right)\\
&=D_1\exp\left(i\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}L\right)-D_1\exp\left(-i\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}L\right)\\
&=2D_1i\sin\left(\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}L\right)
\end{align*}
$$

したがって$${\sin}$$の引数は、$${\sin}$$が0になるような値になってないといけないということですね。つまり

$$
\begin{align*}
\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}L&=n\pi\\
\therefore\;\;E&=\frac{\hbar^2\pi^2n^2}{2mL^2}=\frac{h^2n^2}{8mL^2}
\end{align*}
$$

となりました。存在する電子のエネルギーが0以下ってことはないはずなので、$${n}$$は1以上の任意の整数を取り得まして、量子力学黎明期にあったあの不思議な現象、プランクやアインシュタインが首を傾げたあの現象、飛び飛びのエネルギーが勝手に出てきました。理論物理学の勝利です。

話をまとめるとこうです。井戸型ポテンシャル下にある量子がとりうるエネルギーは

$$
E_n=\frac{h^2n^2}{8mL^2}
$$

で、その際の波動関数は

$$
\psi_n(x,t)=A_n\exp\left(-\frac{iE_nt}{\hbar}\right)\sin\left(\frac{\sqrt{2mE_n}}{\hbar}x\right)
$$

あるいはこれらの線形結合となっています。しかしこの際、波動関数はもはやあまり関係ありません。重要なのは、長さ$${L}$$の井戸型ポテンシャルに束縛されている量子がとりうるエネルギーが

$$
E_n=\frac{h^2n^2}{8mL^2}
$$

なので、光がぶつかってきたときに電子が吸収できるエネルギーもこれらしかないということです。それ以外は吸収できず反射せざるを得ないはずです。ぶつかってきた光のエネルギーを受け取って$${n}$$の値が上がることを、電子の励起と言います。励起によって光は分子に吸収され、それ以外が吸収されずに反射されて、我々の目に届くわけです。

パウリの排他原理

実はこれだけではβカロテンの色を説明しきれません。少々唐突ですがパウリの排他原理を思い出す必要があります。つまり、1つの状態に属する電子は2つずつまでしか所属できないというルールがあります。

パウリの排他原理は本質的にフェルミ統計という、位置の入れ替えを行うと波動関数の符号が入れ替わるという状況で、シュレーディンガー方程式によって説明できそうなんです…が、じゃあなんで電子がそんなことになっているのかというと、ディラック方程式などを持ち出す必要が出てきそうな気配があるので、深追いはしません。

ということで、一つの分子の中でひしめき合っている井戸型ポテンシャル下の電子たちを数えて、その分子の基底状態ともいえる$${n}$$の値を確定させてやらねばなりません。その基底状態に対して光を当てて、ピロリンと励起したそのエネルギーの差分だけの波長の光を吸収しているはずなのです。

さて、にんじんの色を求めにいきましょう。

にんじんの色

βカロテンを再掲します:

さて、βカロテンの長さを構成している炭素を数えてみると22個あります(両端の6角形の端っこは無視しています)。このうち、電子1個で結合しているのが10個、電子2個で結合しているのが11個あります。なのでこの分子の中で縛り付けられている電子の個数は21個。あと1個の電子がこの分子の中をウヨウヨしているわけです。パウリの排他原理を適用すれば、したがって光を受け取った時に発生するβカロテンの電子の励起は

$$
n=22/2=11\rightarrow n=12
$$

が発生するはずです。

また光量子仮説によれば、振動数$${\nu}$$の光は

$$
E=h\nu
$$

のエネルギーをもちます。これがβカロテンにぶつかるとき、エネルギー保存則から吸収される光の波長$${\lambda=c/\nu}$$は結局

$$
\begin{align*}
h\nu&=E_{12}-E_{11}=\frac{h^2(12^2-11^2)}{8mL^2}=\frac{23h^2}{8mL^2}\\
\therefore\;\;\nu&=\frac{23h}{8mL^2}\\
\therefore\;\;\lambda&=\frac{c}\nu=\frac{8mcL^2}{23h}
\end{align*}
$$

で求まるはずです。具体的に定数の値をググってみますと

$$
\begin{align*}
h&\risingdotseq6.62607015\times10^{-34} [{\rm m}^2 {\rm kg/s}]\\
m&\risingdotseq9.1093837\times10^{-31} [{\rm kg}]\;\;\;\text{(電子の質量)}\\
c&=299792458 [{\rm m/s}]\;\;\;\text{(光速度)}\\
L&=1850 [{\rm pm}]=1.85\times10^{-9} [{\rm m}]
\end{align*}
$$

らしいです。なおβカロテンの分子長はこちらを参考にしました。さてワクワク代入タイムでございます!

$$
\begin{align*}
\lambda&=\frac{8mcL^2}{23h}\risingdotseq491[{\rm nm}]\\
\end{align*}
$$

これは可視光領域の波長でして、可視光の波長に関してこちらを参考にすると、確かに青っぽい色を吸収し、結果としてβカロテンが橙色っぽく見える理由になりますな!

まとめ

βカロテンの色を、井戸型ポテンシャルに束縛される電子のシュレーディンガー方程式を解いて求めてみました。

しかし…実は白状すると、βカロテンの分子長がなぜ1850pmなのか良くわかりませんでした。Wikipediaによると、炭素間の結合は$${120\sim154}$$pmだと書いてあって、単純にこれに炭素の間の辺の個数21をかけても到底1850pmにはなりません。

この点についてChatGPT様に尋ねてみると、実は2.8nmだと言われてしまいました。これはWikipediaの数字×21の値に大体一致します。どうもWikipediaに書いてある長さ120~154pmというのは、βカロテンを一直線に引き延ばしたら2.8nmになるということで、実際のβカロテンはグネグネ曲がっていて、それよりは短くなるからということ…なんでしょう。ってことは結局、どれだけ理論で詰めても、最後は実験で何かしらを測定するしかないってこと…かな。

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