万有引力の運動方程式を解いてみた

みなさんこんにちは。ずんだもん博士なのだ。みなさんは、チ。観てますか?僕は残念ながらまだ観てないです。とても面白そうですよね。

天動説から地動説に至るコペルニクス、ティコ・ブラーエ、ケプラー、ガリレイ、そしてニュートンに至るドラマチックな物語は理系文学の基礎教養ですな。今では揺り戻しか、実のところ地動説がそんなにやべー理論扱いされていたわけでもないとも言われていますね。そこら辺の歴史の話も最初にザックリやっていこうと思います。ちょっと僕の歴史知識が怪しいので、間違ってたらゴメリンチョ。

今回の記事はそんな物理が分からない人にも分かる物語に対して、少しだけ物理に踏み込んだ注釈を付け加えようと思います。あと意外と僕もやったことないかもなので。いや、どっかでやってるかもわからんけど、やったことすら忘れてます。なので僕の勉強日記でもあるわけです。あと、なんか書いてるうちに盛り上がっちゃったので、動画解説つくるかもしれないです。


歴史概要

コペルニクスは観測事実をスッキリ解釈するには、天動説よりも地動説のほうに理があると考えたそうです。いわゆる「天球の回転について」ってやつですね。それまでは地球が宇宙の中心にあり、太陽や月や星々が地球の回っているという天動説が信じられていました。ちなみに古代ローマ帝国(古代ギリシャ?)の知識人は、地球が丸いだろうということを知っていたらしいです。つまり古代ローマという広大な領土の色んな地点で、北極星か何かの微妙な見え方の違いを測定することで、知っていたらしいですね[要出典]。

コペルニクスに話を戻しますと、彼が思いついた理論は、神が世界の中心に我々がおわすように作られたという宗教の教えに反するってんで、自分が死ぬ間際まで発表を渋ったそうです。が、実際は意外と宗教権力者からはそこまで異端視されなかったそうですね。

コペルニクスとは別に、ティコ・ブラーエは宗教とかそういうものから完全に切り離して、当時としては変態的とさえいえるほど膨大な観測データを残したそうです[要出典]。これをケプラーが受け取って、ケプラーの三法則を得たといいます。しかしケプラーの理論は結果正しいにしても、根拠としたデータが火星の運行がメインだったようです。これでは当時の科学者に受け入れられるには若干根拠に乏しいようにも思います[誰によって?]。

天動説から地動説に至る文脈でガリレイは、地動説を擁護し、改良望遠鏡でより精密な天体の運行を観測しました。それによってコペルニクス、ティコ・ブラーエ、ケプラーの結果をフォローしました。しかし彼の著書の叙述が若干トゲがあったようで、それを揚げ足にとられ、宗教裁判で教義違反を指摘されるのでした[要出典]。

しかしガリレイの…カッコつけて言えばオッカムの剃刀的な、観測結果を説明するモデルとしてよりシンプルなものを採用すべきという考え方は、ニュートンに引き継がれます。よくニュートンはリンゴから木から落ちるのを見て万有引力を思いついたと言われますが、勿論そうではないです。地動説の文脈で彼がやったことは、ティコ・ブラーエやケプラー、ガリレイの天体の運行に関する理論をめちゃめちゃ研究してました。結果として天体の運行を、リンゴから木が落ちるというような「身近な力」が天体の運動を縛っている本質的なものであるということを、非常にシンプルな今日「ニュートン力学」ないし「古典力学」と呼ばれる理論によって説明しました。大げさに言えば、天界を地上に引きずりおろしたといえましょうか。めちゃめちゃ冒涜的ですな。さらに言えばニュートン力学は、天体の運行どころか、あらゆる自然現象を記述しうるものでした。それで彼の著書プリキピア自然哲学の数学的諸原理と翻訳されるのです[独自研究?]。

はい、ここまで要出典でお送りいたしました。僕は歴史はあまり詳しくなくてですね…。というわけで今回やるのは、運動方程式と万有引力の法則からケプラーの法則を導きましょうということです。歴史的に言えば逆戻しに理解していくことになろうかと思います。結局何が言いたかったかと言うとニュートン力学はこれができたから凄いっていうことね。

前提知識としては以前の記事に書いた程度の微分方程式の解き方や、運動方程式に関する知識だけあれば大丈夫だと思います。それではやっていきましょう。

運動方程式

ニュートンの運動方程式は微分方程式です、という話を以前しましたね。運動方程式はこうでした:

$$
F=m\frac{d^2x}{dt^2}
$$

例えば$${F=-GMm/r^2}$$ ($${G,M>0}$$)という力が働いているとしましょう。これこそがニュートンが見つけた万有引力でございます。原点に重力源があるイメージです。$${r=\sqrt{x^2+y^2}}$$は平面上の原点からの質点の距離ですね。このときは質点の位置$${x}$$は$${(x(t),y(t))}$$という平面上の動点と見なされるべきです。つまり何も省略しないで運動方程式を書けば、次のようになります:

$$
-\frac{GMm(x(t),y(t))}{\sqrt{x(t)^2+y(t)^2}^3}=m\frac{d^2(x(t),y(t))}{dt^2}\\
\Leftrightarrow\left\{\begin{array}{c} -\frac{GMx(t)}{\sqrt{x(t)^2+y(t)^2}^3}=\frac{d^2x(t)}{dt^2} \\ -\frac{GMy(t)}{\sqrt{x(t)^2+y(t)^2}^3}=\frac{d^2y(t)}{dt^2} \end{array}\right.
$$

という二つの微分方程式になります。注意して欲しいのは、$${F=-GMm/r^2}$$という力のかかり方を考えた時に、ベクトルとしては原点に引っ張る方向、つまり$${\mathbf{r}(t):=(x(t),y(t))}$$と平行な方向に掛かるはずなので、$${\mathbf{r}(t)}$$を$${F}$$に掛けたいのですが、絶対値が変わるのはイカンということで、$${|\mathbf{r}(t)|=\sqrt{x(t)^2+y(t)^2}}$$で割って上式を得ています。

極座標系への座標変換

こういう方程式はこの状態ではとても解きづらいです(やってみると勉強になるかもですが)。そこで直交座標系から極座標系への座標変換を行うのが普通です。つまり、$${(x(t),y(t))=(r(t)\cos(\theta(t)),r(t)\sin(\theta(t)))}$$としましょう。すると運動方程式は

$$
\left\{\begin{array}{c} -\frac{GM\cos(\theta(t))}{r(t)^2}=\frac{d^2(r(t)\cos(\theta(t)))}{dt^2} \\ -\frac{GM\sin(\theta(t))}{r(t)^2}=\frac{d^2(r(t)\sin(\theta(t)))}{dt^2} \end{array}\right.
$$

になりますね。ライプニッツルールと$${d^2 f(t)/dt^2=\ddot{f}}$$の表記を使って、右辺を少々簡単にしましょう:

$$
\left\{\begin{array}{l} -\frac{GM\cos(\theta)}{r^2}=\ddot{r}\cos(\theta)-2\dot{r}\dot{\theta}\sin(\theta)+r(-\ddot{\theta}\sin(\theta)-\dot{\theta}^2\cos(\theta)) \\ -\frac{GM\sin(\theta)}{r^2}=\ddot{r}\sin(\theta)+2\dot{r}\dot{\theta}\cos(\theta)+r(\ddot{\theta}\cos(\theta)-\dot{\theta}^2\sin(\theta)) \end{array}\right.
$$

まだ大変ですが、諦めたらそこで試合終了ですよ。じっと見ていると、上の式に$${\cos(\theta)}$$を掛けて、下の式に$${\sin(\theta)}$$を掛けて足してみたくなってきます。$${\cos^2+\sin^2=1}$$っていう公式でバシバシ項が簡単になっていきます:

$$
-\frac{GM}{r^2}=\ddot{r}-r\dot{\theta}^2
$$

同様に、$${-\text{(上)}\times\sin(\theta)+\text{(下)}\times\cos(\theta)}$$を計算してみると、

$$
0=2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta}
$$

になります。結局、次のような連立方程式になります:

$$
-\frac{GM}{r^2}=\ddot{r}-r\dot{\theta}^2\\
0=2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta}
$$

ケプラーの第二法則

二本目の方程式

$$
2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta}=0
$$

はちょっと楽です。両辺を$${r\dot{\theta}}$$で割ってみましょう。0かもしれないって?しらんな!とはいえ、若干余談になりますが、物理的な状況をイメージすれば$${r\dot{\theta}=0}$$がどういう状況かは分かります。$${r}$$が0になるっていうのは、地球が太陽に衝突しちまってます。そんな状況はあんまり考えたくないですな。$${\dot{\theta}=0}$$というのは、角度が時間変化しないといっています。これは太陽に向かって一直線ってわけです。この状況もあまり考慮に値しない状況です。我々は太陽の周りを回っている球体の上に住んでいるのですからね。

閑話休題、というわけで二本目の式から次が得られます:

$$
\frac{2\dot{r}}{r}=-\frac{\ddot{\theta}}{\dot{\theta}}
$$

ここで思い出していただきたいのは、$${\log}$$の微分です:

$$
\frac{d\log(y)}{dx}=\frac{y'}{y}
$$

高校時代は大抵、左辺から右辺を導いて使っていたと思いますが、今回は逆に右辺を左辺に変形してやりましょう:

$$
\begin{align*}
&\frac{2\dot{r}}{r}=-\frac{\ddot{\theta}}{\dot{\theta}}\\
\iff& 2\frac{d\log(r)}{dt}=-\frac{d\log(\dot{\theta})}{dt}\\
\iff& 2\log(r)=-\log(\dot{\theta})+C\\
\iff& \log(r^2)= -\log(\dot\theta)+C=\log\left(\frac{e^C}{\dot\theta}\right)\\
\iff& r^2\dot{\theta}=\text{const.}
\end{align*}
$$

はい、これが有名なケプラーの第二法則でございますね。最後の等式の左辺が面積速度(の2倍)に一致することは、次のようにして確かめられます。まず、角速度というのは$${r\dot{\theta}}$$で定義されます。これは単位時間あたりの移動における仰角の変化量といえます。つまり$${dt}$$だけ時間が経つと$${r\dot{\theta}dt}$$という角度の変化が起こります。この角度の変化に対して、微小時間$${dt}$$における質点の軌道は、およそ円運動とみなしてよいので、その扇形領域の面積$${dS}$$は、よく知られているように

$$
dS=\frac12r\cdot r\dot{\theta}dt=\frac12r^2\dot\theta dt\\
\therefore\;\frac{dS}{dt}=\frac12r^2\dot\theta
$$

というわけですね。単位時間あたりに惑星が掃く面積の速度$${dS/dt=r^2\dot\theta/2}$$が一定というケプラーの第二法則の式が得られました。

ケプラーの第一法則

さて、一本目の方程式にもどりましょう:

$$
-\frac{GM}{r^2}=\ddot{r}-r\dot{\theta}^2
$$

どうみても$${\dot{\theta}^2}$$が邪魔ですね。たまたま$${r\dot\theta}$$が定数ってことが分かっているので、$${r^2\dot\theta=C'\Leftrightarrow\dot\theta=C'/r^2}$$とおいて、これを代入すれば

$$
\begin{align*}
&-\frac{GM}{r^2}=\ddot{r}-r\dot{\theta}^2\\
\iff& -\frac{GM}{r^2}=\ddot{r}-\frac{C'^2}{r^3}
\end{align*}
$$

みごとに$${r}$$だけの微分方程式になりましたね。でもこれが…キッチリ解けるなどという楽観的な気持ちになるような方程式ではないですね。まあ少し職人的な技巧が要りますが、頑張ってみましょう。まずは両辺に$${\dot{r}}$$を掛けてみましょう:

$$
\begin{align*}
&-\frac{GM}{r^2}=\ddot{r}-\frac{C'^2}{r^3}\\
\iff& -GM\frac{\dot{r}}{r^2}=\ddot{r}\dot{r}-C'^2\frac{\dot{r}}{r^3}\\
\iff& GM\frac{d}{dt}\frac{1}{r}=\frac12\frac{d\dot{r}^2}{dt}+\frac{C'^2}{2}\frac{d}{dt}\frac{1}{r^2}
\end{align*}
$$

最後の行で何が起きたか分かりますかね…?3行目から2行目を導けって言われたら出来ると思います。その逆をやったに過ぎないです。全部の項が微分によって表せたので、

$$
\begin{align*}
& GM\frac{d}{dt}\frac{1}{r}=\frac12\frac{d\dot{r}^2}{dt}+\frac{C'^2}{2}\frac{d}{dt}\frac{1}{r^2}\\
\iff &\frac12\frac{d\dot{r}^2}{dt}+\frac{C'^2}{2}\frac{d}{dt}\frac{1}{r^2}-GM\frac{d}{dt}\frac{1}{r}=0\\
\therefore\;\;& \dot{r}^2+\frac{C'^2}{r^2}-\frac{2GM}{r}=D
\end{align*}
$$

となる定数$${D}$$が存在するはずです。微分の階数が一つ減らせました。さらに変形して、平方完成によって

$$
\begin{align*}
&\dot{r}^2+\frac{C'^2}{r^2}-\frac{2GM}{r}=D\\
\iff& \dot{r}^2=-\frac{C'^2}{r^2}+\frac{2GM}{r}+D=-C'^2\left(\frac1r-GM\right)^2+C'^2G^2M^2+D
\end{align*}
$$

となっていきます。さてここまでやっておいてなんですが、一旦$${r}$$を$${t}$$の関数として計算することは諦めましょう。一筋縄ではいかないです。$${r=r(\theta)}$$という風に、$${\theta=\theta(t)}$$の関数と書けることを期待しましょう。つまり極方程式ってやつですな。このとき$${r}$$の時間微分は

$$
\begin{align*}
&\dot{r}=\frac{dr}{d\theta}\frac{d\theta}{dt}=\dot\theta\frac{dr}{d\theta}=\frac{C'}{r^2}\frac{dr}{d\theta}
\end{align*}
$$

となっているので($${r^2\theta=C'}$$を思い出してください)、引き続き式変形をしていくと

$$
\begin{align*}
& \dot{r}^2=-C'^2\left(\frac1r-GM\right)^2+C'^2G^2M^2+D\\
\iff& \frac{C'^2}{r^4}\left(\frac{dr}{d\theta}\right)^2=-C'^2\left(\frac1r-GM\right)^2+C'^2G^2M^2+D\\
\iff& \frac{1}{r^4}\left(\frac{dr}{d\theta}\right)^2=-\left(\frac1r-GM\right)^2+G^2M^2+\frac{D}{C'^2}
\end{align*}
$$

簡単のために、$${s:=1/r-GM\Leftrightarrow r=1/(s+GM)}$$とおきましょう。すると

$$
\frac{dr}{d\theta}=\frac{dr}{ds}\frac{ds}{d\theta}=-\frac{1}{(s+GM)^2}\frac{ds}{d\theta}=-r^2\frac{ds}{d\theta}
$$

なので

$$
\begin{align*}
& \frac{1}{r^4}\left(\frac{dr}{d\theta}\right)^2=-\left(\frac1r-GM\right)^2+G^2M^2+\frac{D}{C'^2}\\
\iff& \left(\frac{ds}{d\theta}\right)^2=-s^2+G^2M^2+\frac{D}{C'^2}
\end{align*}
$$

となります。これはギリ変数分離で解けて、

$$
\begin{align*}
& \left(\frac{ds}{d\theta}\right)^2=-s^2+G^2M^2+\frac{D}{C'^2}\\
\iff& \pm\frac{ds}{\sqrt{G^2M^2+D/C'^2-s^2}}=d\theta\\
\therefore\;\;&\pm\int\frac{ds}{\sqrt{G^2M^2+D/C'^2-s^2}}=\int d\theta=\theta+D'
\end{align*}
$$

となります。左辺はもう脳死で積分の形を覚えている人もいるでしょう。$${s=\sqrt{G^2M^2+D/C'^2}\cos(\varphi)}$$と変数変換すれば、以下が分かります:

$$
\begin{align*}
&\pm\int\frac{ds}{\sqrt{G^2M^2+D/C'^2-s^2}}=\theta+D'\\
\therefore\;\;&\pm\varphi=\theta+D'
\end{align*}
$$

$${D'}$$は初期値に依存する積分定数ですので、ここで$${D'=\theta_0}$$とでもおきましょう。あとプラマイどっちかっていうと、どうせこの後両辺にコサインを差し込むので、$${\cos(-\theta)=\cos(\theta)}$$という公式のおかげでどっちを採用しても結果かわらないと思われます。ちょっと希望的観測ですが式変形を進めていきましょう:

$$
\begin{align*}
&\pm\varphi=\theta+D'\\
\therefore\;\;& \varphi=\theta+\theta_0\\
\therefore\;\;& \cos(\varphi)=\cos(\theta+\theta_0)\\
\therefore\;\;& \frac{s}{\sqrt{G^2M^2+D/C'^2}}=\cos(\theta+\theta_0)\\
\therefore\;\;& \sqrt{G^2M^2+D/C'^2}\cos(\theta+\theta_0)=s=\frac1r-GM\\
\therefore\;\;& r=\frac1{GM+\sqrt{G^2M^2+D/C'^2}\cos(\theta+\theta_0)}\\
&\;\,=\frac{1/GM}{1+\sqrt{1+D/G^2M^2C'^2}\cos(\theta+\theta_0)}
\end{align*}
$$

うまく$${r}$$が$${\theta}$$の関数で書けましたね。ごちゃごちゃしてるところは全部定数なので

$$
\begin{align*}
p&:=\frac{1}{GM}\\
\epsilon&:=\sqrt{1+\frac{D}{G^2M^2C'^2}}
\end{align*}
$$

とおけば、

$$
r=\frac{p}{1+\epsilon\cos(\theta+\theta_0)}
$$

となります。やっとケプラーの第一法則の式が得られました。この極方程式は、太陽(原点)を焦点のひとつとする二次曲線になっています。そのことを既に知っている人もいると思いますが、一応$${xy}$$平面上の方程式としてどんな感じに表せるかいじくってみましょう。

得られた式をいじくる

まずは簡単のために

$$
\theta_0=0
$$

の時を考えましょうか。このパラメータは$${\theta=0}$$のときにどこにいるかっていうだけなので、軌道をぐるぐる回す程度の違いでしかないですしね。

というわけで、そもそもの極座標変換に立ち戻ってみましょう

$$
\begin{align*}
x=r\cos(\theta)\\
y=r\sin(\theta)
\end{align*}
$$

まず$${x=r\cos(\theta)}$$に$${r=p/(1+\epsilon\cos(\theta))}$$を代入してみましょう

$$
\begin{align*}
&x=\frac{p\cos(\theta)}{1+\epsilon\cos(\theta)}=\frac{p}{1/\cos(\theta)+\epsilon}\\
\therefore\;\;&\cos(\theta)=\frac{1}{p/x-\epsilon}
\end{align*}
$$

$${y=r\sin(\theta)}$$もいってみましょうか。若干筋悪っぽい(将棋用語)ですが、両辺二乗すれば$${\sin}$$を$${\cos}$$に変形できて、上式を代入できる形にもっていけます:

$$
\begin{align*}
y^2&=\left(\frac{p\sin(\theta)}{1+\epsilon\cos(\theta)}\right)^2=\frac{p^2(1-\cos^2(\theta))}{(1+\epsilon\cos(\theta))^2}\\
&=\frac{p^2-p^2/(p/x-\epsilon)^2}{(1+\epsilon/(p/x-\epsilon))^2}\\
&=(p-\epsilon x)^2-x^2\\
&=(\epsilon^2-1)x^2-2p\epsilon x+p^2
\end{align*}
$$

ということでございます。信じられないぐらいシンプルになりましたね。勢い平方完成したくなりますが場合分けが発生してます。$${\epsilon=\pm1}$$か否かってことですね。まあ今は$${\epsilon>0}$$なので$${\epsilon=1}$$か否かってことですね。

$${\epsilon=1}$$のとき、上式の右辺は平方完成できなくなります。どうなるかというと

$$
\begin{align*}
y^2=-2px+p^2
\end{align*}
$$

という、放物線を横に倒した形の二次曲線になっています。これは物理的にどういう解なんだろうと思ったんですけど、ちょうどオウムアムアのように、遠くからやってきた彗星などが太陽圏外に吹き飛ぶような状況ですかね。いや、よく見ると$${\epsilon>1}$$のときも双曲線

$$
\begin{align*}
&y^2=(\epsilon^2-1)x^2-2p\epsilon x+p^2\\
&\;\;\,\,=(\epsilon^2-1)\left(x-\frac{p\epsilon}{\epsilon^2-1}\right)^2-\frac{p^2\epsilon^2}{\epsilon^2-1}+p^2\\
&\;\;\,\,=(\epsilon^2-1)\left(x-\frac{p\epsilon}{\epsilon^2-1}\right)^2+\frac{p^2}{\epsilon^2-1}\\
\iff&y^2-(\epsilon^2-1)\left(x-\frac{p\epsilon}{\epsilon^2-1}\right)^2=\frac{p^2}{\epsilon^2-1}
\end{align*}
$$

になっているので、合わせて$${\epsilon\geq1}$$が惑星吹っ飛び解ですかね。

結局、$${0\leq \epsilon< 1}$$が楕円軌道になります:

$$
\begin{align*}
&y^2=(\epsilon^2-1)x^2-2p\epsilon x+p^2\\
&\;\;\,\,=-(1-\epsilon^2)x^2-2p\epsilon x+p^2\\
&\;\;\,\,=-(1-\epsilon^2)\left(x-\frac{p\epsilon}{1-\epsilon^2}\right)^2+\frac{p^2\epsilon^2}{1-\epsilon^2}+p^2\\
&\;\;\,\,=-(1-\epsilon^2)\left(x-\frac{p\epsilon}{1-\epsilon^2}\right)^2+\frac{p^2}{1-\epsilon^2}\\
\iff&y^2+(1-\epsilon^2)\left(x-\frac{p\epsilon}{1-\epsilon^2}\right)^2=\frac{p^2}{1-\epsilon^2}
\end{align*}
$$

なおそれぞれの焦点を求めるのは、たぶん高校数学の教科書のどこかに載ってると思いますので確認してみてください。あるいはググったりChatGPTってみてください。

まとめ

今回は運動方程式と万有引力の法則から、ケプラーの第一法則と第二法則を導いてみました。第三法則はぶっちゃけ第一法則と第二法則から導けるので、高校物理の教科書を参照してみてください。あるいはググったりChatGPTってみてください(二回目)。検索能力も高校卒業以降に突然求められる能力です。高校までそういうことあんまり教えてくれないのにね。今は教わるのかな?

もとい。万有引力の法則がなぜ凄いのかはお分かりいただけましたかね。ニュートン以降も続くのですが、物理学の発展には過去の観測結果をフォローする必要があるという制約があります。ニュートンは見事に彼の生きた時代で確認されている多くの自然現象を力学にまとめ上げてしまいました。その後、天体の運行に関しては主にアインシュタインの一般相対性理論が発生するのですが、これも基本的には非相対論的な極限においてニュートン力学になるように調整して作られています。そしてその他多くの観測事実においてニュートン力学よりも良い結果を出したので、今では一般相対論の方に軍配が上がっているというわけです。

相対論と言えば、そもそも特殊相対性理論がアインシュタインの生きた時代に完成した電磁気学の自然な延長です。電磁気学と力学をうまく組み合わせようとすると、必然、特殊相対論になります。このことに気づいていた物理学者は多くて、みなさんご存じローレンツ変換には、電磁気学で名をはせたローレンツの名が冠せられていますし、ポアンカレは実質的に相対性原理を考えていたと聞いたことがあります。じゃあアインシュタインの何が凄いかと言うと、やっぱり一般相対性理論ですかね。あと量子論でボーアとレスバしまくってたこととか。彼は量子論の土台が危ういということを主張したいがために考えたというEPRパラドックスは、現在の量子コンピュータの基礎に影響を与えています。

余談が過ぎましたね。何が言いたいかと言うと、突飛な理論を提唱してみたところで、それが過去の観測事実をちゃんとフォローしていることを示さないと認められないということです。逆に言えば今なお生き残っている理論は、それなりの洗礼を受けてなお生き残っている強者たちということです。そうした点はおそらく、コペルニクスやガリレイの時代でも言えていたことでしょう。そんな世知辛い事情の一端を、今回ニュートンの理論からケプラーの法則を導出した流れで感じて頂ければと思います(何様)。ではまた!

追記:2025/01/15

チ。-地球の運動について- 読みました。僕はてっきり自分が本のページをめくっていると思ってたんです。違うんです。本にページをめくらされていたのだ!いやね、教科書や専門書、授業ばかり追っていると疲れるものです。そういうときはこういう本を手に取って、情熱に薪をくべるといいですね。なお夜に読み始めるのはオススメできない。なぜなら手が勝手にページをめくるからです。

以下は初見のインパクトを保存しておきたい勢いで書いてるだけなので、もしかしたら意図せずネタバレが含まれるかもしれないです。一応気をつけてはいるんですが、そのせいでとても抽象的でふわっとしたことしか書いてないんです。もしそのような駄文を読みたいという奇特な方は、一応注意してください。

以下ネタバレ注意かも

情報化社会の現代日本では、ともすれば「自分が考えたことは既にもっと賢い誰かが考えている」という先入観を持ってしまっている人が多くて、ひらめきを自ら一笑に付して捨て去ることがあります。しかし歴史を振り返ると、偉大な発見というのはえてして既存の常識に対するつじつま合わせと、それに対する素朴な疑問とひらめき、あるいは、その常識に挑む勇気等から生まれているように思います。天動説から地動説への移行もその一つです。コレは単なる理論の転換ではなく、僕たちが見習うべき科学的な営みの象徴でしょう。

科学的であることの重要な特徴の一つは「反証可能性」です。だからこそ誤りを恐れないでほしいと思います。たとえばニュートン力学は水星の近日点移動を説明できず、これが一般相対論の登場につながりました。しかし、だからといってニュートン力学が無意味になったわけではないです。ケプラー達が託したバトンを上手く受け取って、天動説よりもよりシンプルなニュートン力学を携えた地動説に転換したということ自体に意味があります。相対論だっていずれそう語られるようになるのでしょう。このように科学は常に「現状の理論」を精査し、よりシンプルで、より普遍的で、より美しい法則を探し求めています。歴史上、現在からみれば多くの理論や常識に間違いが含まれていましたが、それらは当時の人々が必死に守ってきた権威であり、当時の人が現状最もシンプルで普遍的で美しいと思ったものであり、かつ、次の発見の礎にもなった尊いものなのです。この科学的な営みの中で多くの人が間違えました。なので今キミが間違うことや、迷う事、既存のものを再発見しただけ、といったことは全くもって意味なのです。将来の大理論のために、あるいは少なくとも、何かに閃いた当のキミにとって。

さて…そう思うと、現在の最先端理論も、いずれ反証される日が来るかもしれません。例えば、ダークマターやダークエネルギーは宇宙の大部分を占めているというのに、どうして見つからないんでしょうか?もしかするとダークマターやダークエネルギーなんてものは、アインシュタインが不要だと断じたエーテル理論のようなものかもしれませんよ?いや…そんなことはとうの昔から議論されてきただろう…と思ったオマエ待った!車輪なんてなんぼ再発明してもいいんです!それを繰り返しながら、未来に託すんです。

ちなみに宗教が地動説を弾圧する描写は相当シュールで、史実ではあれほど苛烈な弾圧は行われなかったようである…というのは、既に述べている通りです。でも多分、魚豊先生は史実を分かった上で、あえてこう描いています。なぜでしょうね?


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