プロジェクトマネージャーの転職 その7 - 履歴書(CV)を書く -

書き手Kの個人的な転職体験談ですが、いよいよ履歴書を書いてみましょう。

今回は私の通った転職までの4段階

  1. モヤモヤ: 将来に不安を感じ、ただ漫然と探す

  2. シャキッと: 自己分析をし、ターゲットを絞る

  3. ワクワク: 応募の準備をする

  4. ドキドキ: 応募、選考(特に面接)

のうち、第3段階の第3話です。

バックナンバー

第1段階(だた漠然と現状に不満を募らせ、やさぐれた割には頭の中がお花畑だった頃):

プロジェクトマネージャーの転職 その1 - やさぐれた中年 -

第2段階(自分の価値観などを整理しようとミッション・ステートメントを書こうとし始めた頃)

前半: プロジェクトマネージャーの転職 その2 - 自分探しの沼 -
後半: プロジェクトマネージャーの転職 その3 - ミッションステートメント -
番外:  プロジェクトマネージャーの転職 その4 - ルサンチマンとの闘い -

第3段階(ポジションを探しながら履歴書などを準備した頃)
前半: プロジェクトマネージャーの転職 その5 - 異業界に挑戦したい -
中盤: プロジェクトマネージャーの転職 その6 - 自分を売り込むストーリー -

転職への道 第3段階 ワクワク編 後半

前回は、異業界に挑戦するにあたって自分をどう売り込めば良いのか、作戦を立てました。

履歴書は淡々と学歴、職歴を書くだけなのに何故売り込みのストーリーが必要なのか、不思議に思う方もいらっしゃるかも知れません。確かに、日本では履歴書はまさに「履歴」を淡々と客観的に並べるだけということが多いでしょうし、むしろ客観的に書いていた方が変なアピールを盛り込むより信用され易いという面もあるでしょう。(実は日本で転職したことがないので、間違っていたら申し訳ないです、ご指摘下さい。)

しかし欧米で標準的な履歴書(Curriculum Vitae、略してCV)では、各職歴において自分の出してきた成果を明確に、そして端的に説明しなければなりません。そして、面接ではその成果を挙げながら、どこに自分を採用するメリットがあるのかアピールする必要があるので、最初から一貫したストーリーが必要となる訳です。

CVの書式

CVには日本の履歴書のように決まった書式はありません。それぞれが色々工夫してレイアウト、フォント、色などをデザインしていきます。デザインが好きな人は一から自分だけのレイアウトを考えることもありますが、そういうのが苦手な方はインターネットで「CV example」などと検索すればいくらでも例が出てくるので参考にして下さい。

ただ、これまでに何度か採用に関わった経験から言いますと、あまりカラフルすぎたり、凝りすぎたレイアウトは逆に読みにくいことが多いです。色は2色ぐらいでシックに、字も小さすぎず、詰め込みすぎず、程よく余白があり、そして採用担当者がどういう順に見ていけば良いのか目線を誘導するようなデザインが理想的です。

私は、鉄道業界に応募する際には地下鉄の路線図のようなデザインにして、路線を表す線でスペースを区切り、駅に相当する丸印を見出しの頭に使っていました。基本的に美的センスはあまりないので、結局そんなスタイリッシュなものにはなりませんでしたが、私のCVを見た採用担当者がクスっと笑ってくれたらいいなとの思いで作りました。

CVの内容

基本的に以下の情報を盛り込む必要があります。

  • 名前、住所、電話番号、メールアドレス
    CVの最上段に、名前は大きく、その他の情報は小さめで。

  • プロフィールの要約
    名前や連絡先の下、職歴を書き出す前に、5行程度の文章で。
    例えば、「大手自動車部品サプライヤーで10年間経験を積んだ、プロジェクトマネージャーです。自動運転分野でソフトウェア開発に従事、プログラミングの経験もあります。プロジェクトマネージャーとしては20人ほどの国際的なチームを3か国語を駆使してリードしています。」といった感じです。

  • 職歴
    異動・転職などの大きな区切り毎に、期間、会社、事業部など所属先、役職、プロジェクトなどを端的に書き、その下に

    • 仕事内容の要約を1 - 2行の文章で(例えば「自動運転システムの研究開発プロジェクトの プロジェクトマネージャー」)

    • 責任範囲を箇条書きで3点(例えば「環境認識システムの設計」、「開発コストの見積もり」、「顧客対応」など)

    • 主な成果を箇条書きで3点(例えば「遅れなしで製品を納品」、「性能を3%改善」、「開発したシステムにより売上1億円」など)

  • 学歴
    大学以降の学歴について、学位、大学名、学部を端的に。
    特に学術的な成果がある場合(学会での受賞、成績優秀による特待扱いなど、サークルの代表、バイトのシフトリーダーはダメ)は追加で記述。

  • スキル(特技など)
    ソフトスキル(コミュニケーションスキルなど)、ハードスキル(プロジェクトマネジメントスキルなど)をそれぞれ3 - 4点ずつ、端的に。
    例えば、「論理的な思考」、「プロジェクトマネジメントの資格保持」、「日本語: 母国語、英語: ビジネスレベル」、「国際的チーム内での円滑なコミュニケーション」など。

写真は必要か

上記内容に加えて、欧州ではまだまだ自分の写真を貼り付けるケースが多いです。アメリカでは人種差別を防ぐために、履歴書に写真を貼り付けてはいけない、また性別、国籍も書いてはいけない、といったルールがあるようなのでアメリカの会社に応募をご検討の際はよく調べて注意してください。勤務地がアメリカ以外でも本社がアメリカの会社の場合は、アメリカのルールを遵守しているケースが多いようです。

欧州では、写真を強制はしていないようですが、個人的な経験としては写真を貼り付けた方が、書類審査を通過できる確率が高い気がします。また、写真も、昔からある大きな会社ではスーツにネクタイといったかっちりした格好で真面目な顔をしていた方がウケが良く、新興のスタートアップやテックカンパニーではむしろポロシャツで笑顔の写真の方が好印象だという話も聞いたことがあります。どちらにせよ、写真は結構大事なので、あまりケチらずに履歴書用写真を撮ってくる写真屋さんでちゃんと撮ってもらいましょう。

成果の書き方

職歴に関して、主な成果を3点ずつ端的にまとめるべしと書きましたが、この後の面接にも影響してくるという点で、この成果の書き方がCVで一番大事な部分と言えるでしょう。成果を書くにあたっては、次の点に留意して下さい。

  • 具体的、できれば定量的であること
    「XXXの開発に関わった」「チームをまとめた」だけでは具体性に欠けます。
    「アルゴリズムを工夫して性能を3%改善した」「開発費を予定より5%抑えた」「開発した製品が顧客に受け入れられて売上が10億円に達した」といった具合にできれば数字を盛り込めると理想的です。数字が無理でも「当初計画通りに納品した」などできるだけ具体的に「達成したこと」を書くようにしましょう。

  • 売り込みストーリーと一貫性があること
    例えば今 プロジェクトマネージャーとして自分を売り込みたいのであれば、優秀なプロジェクトマネージャーの証となる成果を強調する必要があります。納期を守る、予算内で開発する、強いチームを作る、顧客満足度が高い、といったことに関連する成果を書くようにしましょう。
    ちなみに、今はプロジェクトマネージャーでも、昔は技術者として頑張っていたという方も多いでしょう。その場合、技術者時代の成果はどう書くのか。基本的には技術者としての成果をそのまま「性能を3%改善」のように書けば良いと思います。ただ、どうやってその成果に達したのかという過程の話に、自分の売り込みたいスキルを絡めるように考えましょう。例えば、性能を3%改善するのに「実験データを徹底的に分析し、問題点を見極め、それを解決する方策を考え、実装した」という過程があったのならば、「事実に基づいた論理的思考」というスキルが昔から備わっていたことの証として今売り込みたいスキルと話が繋がります。論理的思考が昔から染み付いているから自分は他のプロジェクトマネージャーと一味違う、プロジェクトマネージャーとしての仕事も同様にファクトベースで解決できる、という売り込み方ができるわけです。CV内では簡潔に「論理的なアプローチにより性能の3%改善を実現した」ぐらいに留めておいて、面接で「この成果からも分かるように、自分には論理的思考が染み付いているから・・・」という話を詳しくすれば良いでしょう。

  • 職種、立場毎に求められる基本的な能力が異なること
    技術者として応募するのであれば問題解決能力が求められることが多い一方、上の立場になればなるほど自分で解決する能力ではなく、誰かに解決させる能力、もしくは問題を解決する仕組みを作り上げる能力が求められるようになります。
    プロジェクトマネージャーもしくはもっと上の立場として応募するのであれば、同じ「性能を3%改善」という成果についても、自分が頑張って解決したという話をするのではなく、「問題を系統立てて分析するプロセスを作って、チーム内で展開した」という話ができた方がマネージャーとしてのスキルをよりよく評価してもらえるでしょう。

採用担当者の目線から

上でも述べましたが、私自身も何度か採用に関わった経験があり、色々な人のCVを見てきました。応募がたくさんあって多くのCVに目を通さなければいけないという目線から、気になったことを何点か挙げておきます。

  • 注目すべき項目がどこか一目で分からない
    CVは自分の経験を売り込む場ですので、どうしても多くの情報を詰め込みがちです。
    そうすると字が一杯のCVを前にしてどこから見ていけば良いのか分からないこともよくあります。あまり字を詰め込みすぎず、余白を程よく残しつつ、重要な売り込みポイントは太字にするなどの工夫が必要かと思います。
    文字ばかりでなく、アイコンや写真を取り入れる(例えば会社のロゴやプロジェクトで関わった車の写真など)のも工夫としてはありだと思いますが、ちょっと子供っぽく見えるという意見もあり、ほどほどにするのが良いかも知れません。

  • 成果をアピールしすぎると怪しく見える
    成果を具体的にアピールすべしと書いてきましたが、矛盾するようですがあまり良いことばかり、そして定性的にだけ書いてある(「自分は優秀」「顧客は大満足」みたいな感じ)と逆に怪しく感じてしまうのも事実です。
    やはり客観的に評価できる数字を用いるのが良く、また表現もあまりセンセーショナルに書くよりは淡々と書いた方が怪しさは控えめになると個人的には思います。この辺の塩梅は難しいところですので、例えばお友達などに一度読んでもらって客観的な視点からどういう印象か聞いてみるのも良いでしょう。

  • 外国の大学名、会社名はよく分からない
    ハーバードやオックスフォードならいざ知らず、どんなにその国で有名な大学でも、外国では知られていないことも多々あります。正直なところ、日本の大学は欧州ではあまり知られていません。東京大学=東京にある大学なんだね、ぐらいの印象です。私立の大学で都市名がついていないともっと分かりません。じゃあどうすれば良いのかというと、特に解決策は思いつかないのですが、例えば応募したい国の大学事情を調べて、そちらの国のこの大学ぐらいのレベルです、ということを注釈として書いてみるのも手かも知れませんね。

日々働いている=自分は何かしらの成果を出している

最後に、当たり前のことですが、嘘をついたり話を盛ったりしてはいけません。そのうちバレます。うまくいって採用されても結局仕事をしていく中で化けの皮は剥がれてきます。

日々仕事を淡々とやっていてそんなにアピールすることがない、という方もいらっしゃるかも知れません。しかしながら、よっぽど仕事をサボっているのでなければ、目の前の仕事を一所懸命にこなしているということは、何かしら頭を使って、工夫して、問題を解決しているものです。そこは自信を持って、自分はこれまでどんな問題を解決してきたのか、ゆっくり考えて頂きたいと思います。

エンジニアなら、日々データを分析して、解決策を考えているのではないでしょうか。「データを基に客観的に問題を分析する」「同僚と議論を尽くして解決策を探す」「考えすぎずにさっさと実装してみて改良を重ねる」こういったことを積み重ねて、性能を改善したり、お客さんの要望を満たしたりしているのであれば、それは立派な成果です。

プロジェクトマネージャーなら日々スケジュールと予算の管理に忙殺されているかも知れません。スケジュールの遅れをいち早く察知するために何か工夫していることがあるのではないでしょうか。最低でもガントチャートぐらいは描いていますよね。ガントチャートで重要な線を赤く塗ってそれを重点的にフォローしていくことも立派な工夫です。予算を細かく管理するのに、自分だけのエクセル表を作ったりするのも素晴らしい工夫です。そういった工夫を通して、プロジェクトを何とか予定通り回しているのであればそれも立派な成果です。

今回は少し長くなってしまいましたが、欧米で標準的な履歴書(CV)の書き方についてお話ししました。次は第4段階「面接編」に進みたいところですが、カバーレターの書き方をすっかり忘れておりました。ですので、次回はカバーレターについてお話しして、その後面接編に進む予定です。

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