新世紀妖怪退治譚
親方との無線を封鎖してから5時間。のっぺりとした防護服の中はサウナ状態で、臭いも最悪だ。こんな仕事辞めたい──そんなことばかり最近は考えている。俺のような名前もないような奴らにはこんな暗くて危ない汚染区にしか働き口はないそんなことはわかってはいるが。
(しかし、今日はえらい時間かかったな……)
いつもなら復旧作業自体は30分もあれば終わる。コイツらはきちんと直してやるとガチャガチャ動いて、穴が空いた紙切れを1枚ペッと出す。こんなものを買ってくれる奴がいて俺たちはひと月は暮らせる。
配線を繋ぎ終えると、継電器の向こう側の親方に合図を送る。無線は──まだだめだ。先にボタンを押し親方がライトで3回合図するのをじっと待つ。
チカチカチカチカ
4回!スイッチを押し俺はライトの光った方に向けて引き金を引く!マズルフラッシュがチタンのスキンヘッドが煌かせる。最悪だ、袈裟懸けボウズだ。復旧した部屋の明かりに照らされる体は5mはある。
「逃げろ!いつもの小坊主じゃ……グェッ」
「のっぺらぼうがもう一匹……イテーんだよ!」
ボウズの腕が膨らむと踏みつけにした親方を出口に投げつける。ドゴン。扉はひしゃげブサーが鳴り響く。
「これで逃げられねェー、痛めつけホーダイ。妖怪は殺生にはならんからな!チタン代の分は遊ばせて貰うゼ南無三!」
腰を落とすとそのまま、踏み込み拳を振るい俺に襲いかかる。でけぇ……!避けられねえ!眼前に拳が広がった瞬間衝撃と激痛が走る。機械に打ち付けられて息ができない。
「あっケねーな!閻魔大王にあってきなヨ!救世済民!」
首を掴むとひょいと持ち上げ拳を振りかぶる。
(あっけねえなあ……本当に……)
眼の前に拳が広がった瞬間、ビタリ──ブワッと風だけがあたる。
「おい、妖怪がなんで袈裟なんてかけてんだ?」
拳を、俺の手が止めていた。
「女!そのまま体借せ!」
【続く】