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山手線の日
まえがき
思い出や思考を山手線の駅にプロットするという試みをしてみた
それが、前回の記事なのであるが、見事に失敗している。そもそも自分の思い出に読者の皆様は興味などないし、なにより書いている方の私自身がつまらなかった。思い出を語ることのつまらなさを再確認したわけである。
今日は改めて山手線について書いてみよう。
山手線
よく環状とか、ぐるっと廻るという表現とともにこの路線が語られるが、実際には、東北本線、東海道本線という路線に”乗り入れて”いるに過ぎない。
路線データ
全長:約34.5km
駅数:30駅
所要時間:約59-61分
運行間隔:約3-5分
独特の運行形態
実は山手線は3つの路線から構成:
品川駅から新宿経由で田端駅までの山手線
田端駅から東京駅までの東北本線
東京駅から品川駅までの東海道本線
山手線の特徴
山手線は実に6つもの「峠」を越えながら走行している。具体的には品川―大崎間の「御殿山越え」、目黒駅付近の「白金台地越え」、新宿―新大久保間の「最高地点越え」、目白―池袋間の「目白台越え」、大塚―巣鴨間の「巣鴨の台地越え」、そして駒込―田端間の「旧道灌山トンネル越え」という6つの峠ポイントが存在する
このためそれなりに、勾配があり、駅間の標高差もだいぶある。最大で約36.31メートル、これはビル12階分に相当する高低差が存在する。特に顕著な区間として、五反田駅(標高約3.4m)から目黒駅(標高約22.88m)への上り勾配と、駒込駅(標高約20.4m)から田端駅(標高約6.2m)への下り勾配が挙げられる。
個人的には、目白から池袋まで徒歩や自転車で通った経験があり、結構な勾配に驚いた覚えがある。
始発駅
山手線における主要な始発駅について、まず大崎駅は、山手線の中でも最も始発本数が多い駅として知られている。平日早朝からラッシュ時にかけての4時から8時の時間帯には、内回り15本、外回り21本もの始発電車が運行され、夕方15時から17時にかけても内回り3本、外回り4本が運行される。利用者が比較的少ないため、座席を確保しやすい特徴を持つ。
一方、池袋駅では平日の朝ラッシュ時に内回り7本、外回り1本の始発が設定されている。これは近くに車両基地があることが理由で、効率的な車両運用を可能にしている。
田町駅においては、早朝の時間帯に内回り2本、外回り3本が始発として運行され、特に4時38分と5時11分には外回りの始発が設定されている。
始発駅から乗車することの最大の利点は、通勤時における快適性にある。先客がいない電車に乗れるため座席を確保しやすく、朝のラッシュ時でも比較的ストレスの少ない通勤が可能となる。
なお、運行上の正式な区分としては、山手線の起点は品川駅、終点は田端駅と定められている。これは実際の環状運転とは異なる考え方であり、品川駅には0kmポストが設置され、正式な起点としての位置づけがなされているのだ。
内回りと外回り
山手線における内回りと外回りの区分について、鉄道マニアとして、その歴史的背景や興味深い仕組みを詳しく解説しよう。
山手線の内回りと外回りの区分は、実は日本の交通文化の根幹をなす「左側通行」の原則に深く根ざしている。この左側通行の伝統は、武士が刀を左に差して歩いていた江戸時代にまで遡るとされ、それが現代の鉄道システムにも受け継がれているのだ。
具体的には、外回りは時計回りの方向を指し、品川から渋谷、新宿、池袋を経て上野へと向かう。一方、内回りは反時計回りで、品川から東京、上野、池袋を経て新宿方向へと進む。この区分は、線路を挟んで左側を走る電車を内回り、外側を走る電車を外回りと定義することで、左側通行の原則を体現している。
特に興味深いのは、乗客への配慮として様々な識別システムが導入されている点だ。私が特に注目しているのは、ホームドアの巧妙なデザインである。外回りのホームドアには緑色の細い帯が2本、内回りには太い帯が1本設けられており、一目で方向を判別できるよう工夫されている。
さらに、音声による識別システムも実に興味深い。外回りの車内アナウンスには男性の声、内回りには女性の声が採用されている。この区別は、視覚的な情報に頼れない場合でも、即座に方向を認識できる優れた工夫だと言える。
山手線の速度について試論
まずは現状と基本をおさえよう
基本データ
全長:34.5km
標準所要時間:59分
平均速度:約35.1km/h
時間帯による違い
通常ダイヤ
標準所要時間:59分
内回り・外回りとも同じ所要時間
これを200kmで運行しようとするとどうだろうという試論である。
一般的にはつぎのようなことである
山手線における速度と運行本数の関係について、物理的および運行上の制約から論理的に説明すると、
まず、列車の運行間隔を決定する要因として以下の3つの重要な制約がある:
安全制動距離:
高速になればなるほど、列車を安全に停止させるために必要な距離が指数関数的に増加する。例えば、90km/hから200km/hに速度を上げた場合、制動距離は約4倍以上に延びる計算となる。これは、先行列車との最小安全距離を大きく広げる必要があることを意味する。駅停車時間:
乗降時間は速度に関係なく一定の時間を要する。山手線の場合、1駅あたり30秒から1分程度の停車時間が必要となる。この時間は、どんなに列車速度を上げても短縮できない物理的な制約となる。加減速による時間損失:
高速走行の場合、駅間での加速・減速に要する時間と距離が大きくなる。山手線の平均駅間距離は約1.3kmであり、200km/hまで加速してもすぐに減速しなければならず、最高速度を活かせる区間が極めて限定される。
これらの要因を総合的に考えると、90km/hという最高速度設定には以下の合理性がある:
制動距離が適切な範囲に収まり、3-5分間隔という高頻度運転が可能
駅間距離に対して加減速の時間損失が最小限に抑えられる
乗降時間との相対的なバランスが取れている
つまり、200km/hのような高速運転は、理論上は周回時間を短縮できるものの、安全制動距離の増大により列車間隔を大きく空ける必要が生じ、結果として1時間あたりの運行本数が大幅に減少してしまう。これは、大量輸送を使命とする都市環状線としては非効率な運用となる。
というのだが、どうも安全を考えると私にとっては定性的になりすぎて、なんかモヤモヤする。
速度を2倍にすると
山手線の運行速度を大幅に上げて30分で1周させる場合の輸送能力について、理論と実践の両面から詳細な分析を行った。
理論上の輸送能力の変化を見ると、現在の運転間隔である2.5分(2-3分の平均)を基準に計算した場合、1編成1000人として、現状では1時間あたり24,000人の輸送が可能である。これを30分運行にした場合でも、理論上は同じく24,000人/時の輸送能力となる。
しかし、実際の運用では複数の制約要因が存在する。高速走行では制動距離が増加するため、列車間の安全距離を延長する必要がある。また、高速走行しても乗客の乗降時間は変わらず、むしろ減速時間が延びる可能性がある。さらに、高速運転では予期せぬ事態への対応時間が短くなるため、より大きな安全マージンが必要となる。
これらの要因を考慮し、安全性を確保するために運行間隔を現状の2倍に設定すると、実際の輸送能力は12,000人/時となり、現状の半分程度まで減少してしまう。一方、理論上の最大値として、現状の運行間隔を維持したまま30分運行を実現できた場合、24,000人/時という数字が得られるが、これは現実的な運用としては成立し得ない。
このように、単純な速度向上は必ずしも輸送能力の向上につながらず、むしろ実質的な輸送能力は低下する可能性がある。輸送能力を実質的に向上させるためには、駅設備の改良、最新の信号システムの導入、車両性能の向上など、インフラ全体の刷新が必要となるだろう。
このように試算しても、まだムズムズする
そうだ、方程式のようにしてしまえばよい これなら私でも理解できるかもしれぬ。
山手線の方程式
![](https://assets.st-note.com/img/1734173720-4Xtabl7eKUx0LAuV2OjqrZJ1.png)
これを元に、時速90Kmの場合と200Kmの場合の計算をすると
![](https://assets.st-note.com/img/1734173820-8n0eFvOa1cojRrigZIAKY6sh.png)
このような結果になり、200Kmは最適解ではないことがわかる。
ここでやっと、なんか腑に落ちる。
山手線のような環状線は、かつてはパリにもあったという。
パリの環状線
パリにも歴史的には環状線が2つあった。すなわち、PetiteCeintureとGrandCeintureである。Petiteのほうからみると19世紀なかばに建設されていつ、かつては貨物線や旅客線として反映したが20世紀前半に輸送が廃止になっていて、遊歩道や公園になっている。Grandの方はパリ郊外のille-de-France地域圏を一周する環状で主に貨物線だった、現在はGrand Paris Expressという新しいメトロネットワークが建設中である。2030年にはできるらしい。
パリの環状交通システムは、19世紀半ばから二重の環状線として発展を遂げてきた。その中核を成すのが、プティト・サンチュール(内環状線)とグランド・サンチュール(外環状線)だ。特に興味深いのは、これらの路線が当初から旅客輸送を主目的としていなかった点で、これは山手線とは大きく異なる特徴といえる。
プティト・サンチュールは、1852年から1969年にかけて段階的に開業した全長32kmの複線だが、私が特に注目したいのは、その後の変遷だ。1934年に旅客輸送を終了した後、この路線は単なる廃線とはならず、パリジャンの生活に溶け込む形で見事な変貌を遂げた。かつての線路跡は、現在、緑豊かな遊歩道や共有庭園として再生され、私が訪れた際には、まるで都市の中の小さなオアシスのような空間が広がっていた。これは都市交通インフラの再利用という観点から見ても、極めて示唆に富む事例だと考えている。
一方、グランド・サンチュールは約120kmという壮大なスケールを持つ外環状線として、1877年から1883年にかけて建設された。この路線の特筆すべき点は、今なお一部区間で旅客列車が運行されている点だ。私の経験では、この路線は郊外から都心へのアクセスという観点で、現代でも重要な役割を果たしている。
そして現在、パリは「グラン・パリ・エクスプレス」という野心的なプロジェクトを推進している。このプロジェクトは、4本の新路線を含む新しい環状メトロネットワークの建設を目指すもので、私はこれを単なる交通インフラの整備以上の意味を持つ都市改革として注目している。2030年の完成を目指すこの計画は、パリの都市構造を根本から変える可能性を秘めている。
特に印象的なのは、プティト・サンチュールの現代における活用法だ。この旧線路は、都市の緑地空間として見事に生まれ変わり、私が散策した際には、パリの新しい魅力を発見する場所として機能していた。遊歩道や公園、共有庭園として整備された空間は、都市と自然の調和を体現する場所として、多くのパリジャンや観光客に愛されている。
La Petite Ceinture, une double voie de 32 kilomètres mise en service progressivement entre 1852 et 1869, mérite une attention particulière pour son évolution ultérieure. Après la cessation du transport de voyageurs en 1934, cette ligne ne s'est pas simplement transformée en une voie ferrée abandonnée, mais a connu une remarquable métamorphose en s'intégrant dans la vie des Parisiens. L'ancienne emprise ferroviaire est aujourd'hui réhabilitée en promenade verdoyante et en jardins partagés, créant un véritable oasis urbain lors de ma visite. Ce cas est particulièrement instructif du point de vue de la réutilisation des infrastructures de transport urbain.
La Grande Ceinture, quant à elle, construite entre 1877 et 1883, constitue une ligne de rocade imposante d'environ 120 kilomètres. Ce qui rend cette ligne remarquable, c'est qu'elle continue d'accueillir des trains de voyageurs sur certains tronçons. D'après mon expérience, cette ligne joue encore aujourd'hui un rôle crucial pour l'accès des banlieues au centre-ville.
Actuellement, Paris poursuit un projet ambitieux appelé "Grand Paris Express". Ce projet vise à construire un nouveau réseau de métro circulaire comprenant quatre nouvelles lignes. Je considère ce projet comme une réforme urbaine qui va au-delà d'un simple développement d'infrastructure de transport. Ce plan, dont l'achèvement est prévu pour 2030, a le potentiel de transformer fondamentalement la structure urbaine de Paris.
Ce qui est particulièrement impressionnant, c'est l'utilisation contemporaine de la Petite Ceinture. Cette ancienne voie ferrée a été magnifiquement transformée en espace vert urbain, et lors de ma promenade, j'ai découvert qu'elle était devenue un lieu de découverte des nouveaux charmes de Paris. Aménagé en promenade, en parc et en jardins partagés, cet espace, incarnant l'harmonie entre la ville et la nature, est aujourd'hui apprécié tant par les Parisiens que par les touristes.
パリでは主に貨物目的だったらしい。けれども地下鉄であるが、パリでも環状線ができるということである。
さて、再び山手線に話を戻そう。
山手線E235系
車両の細部デザインにも注目すべき点がある。最新のE235系では、従来のE233系までとは異なり、車体側面の雨樋が内側に収められており、より洗練された外観を実現している。
まず、車両制御システムの話をしよう。E235系では、SiCを採用した2レベル電圧形PWM-VVVFインバータ制御を導入している。これがすごいのは、高速域のスイッチングを1パルスから27パルスに変更することで、主電動機の損失を大幅に低減できている。さらに、1C4M構成を採用していて、1台のインバータで4台の主電動機を制御できるようになっている。非常に効率的である。
空調システムも見逃せない。各車両にAU737形という冷房能力50,000kcal/hの強力な空調を搭載しているんが、特筆すべきは次駅の乗車率を予測して予冷する予測制御機能を備えていることである。それに、パナソニック製の「nanoe」搭載空気清浄機まで装備している。
線路や架線の監視システムも最先端である。プロファイルカメラとラインセンサカメラで軌道材料を監視して、レーザー変位計で軌道変位を検測している。二軸レール変位検出装置まで搭載していて、軌道の状態を精密に把握できるんだ。架線監視も徹底していて、パンタグラフ舟体の加速度計による異常検知や、紫外線センサーでアークを検出したり、回転式レーザー装置で架線の状態を測定したりしている。
何といっても注目なのが自動運転技術だ。ATOシステムを開発中で、加速・惰行・減速を自動制御することで、従来運転と比べて約12%もの省エネ効果を実現できるんだ。2028年頃までの本格導入を目指している。
山手線の車両制御
山手線の車両制御システムにおいて、注目すべきはINTEROS(インテロス)と呼ばれる独自のシステムである。このシステムは、制御系、状態監視系、情報系という3つのネットワークで構成され、イーサネット規格を採用することで高速かつ大容量の情報伝送を可能としている。そして、WiMAXを利用した地上-車上間通信を実現している点だ。
INTEROSの革新的な機能として、車両の状態をリアルタイムで監視・伝送できる点が挙げられる。1編成あたり1日約1GBという膨大なモニタリングデータを収集し、これにより機器の故障予兆を把握し、事前対処することが可能となっている。
自動運転システムにおいては、高度なATO(自動列車運転装置)を採用している。このシステムは地上の運行管理装置と連携して走行パターンを可変できる特徴を持ち、従来の一定パターン運転とは異なり、運行状況に応じた柔軟な制御を実現している。その結果、手動運転と比較して約12%の省エネ効果を達成している。
将来計画として注目されているのが、ATACSの導入である。2028年から2031年頃の使用開始を目標としており、無線通信による列車制御により地上設備のスリム化を図るとともに、列車位置をリアルタイムで検知することで、より効率的な運行の実現を目指している。
このように、山手線の車両制御システムは、従来の鉄道システムとは一線を画す先進的な技術を採用しており、日本の鉄道技術の最先端を走っているといえる。
あとがき
山手線は最先端が詰まっている。とてもワクワクする路線の一つである。
次回はこのあたりについて、もっと探求してみたい。