モルの日
まえがき
モルの日という日は、科学者が考えた日である。
科学者らしく小賢しくも、am 6:02 〜 pm 6:02までと半日の限定となっているのであるが、
上記のnoteでは、モルの日をポアンカレをやや強引に紐づけているが、
それはポアンカレWeekの余波を私の脳内が受けていて筆がすべっているので、今日はこの問題の焼き直しをnoteしてみようと思う。
モルとは
この定義は、使い方に依存しているとっていいので、
使い方つまりは便利な点をあげてそこから整理してみる
1.原子・分子の数を扱うのに便利
原子や分子は非常に小さいので、1つ1つ数えることは、ディメンションを揃えるという意味でふさわくない。モルを使うことで揃えるという意味がある。
2.質量と個数を簡単に変換できる
1モルの物質の質量あh、その分子の原子の量または分子の量と等しくなる。たとえば、炭素原子1モルは12gである、これにより質量から粒子の数から質量への変換が容易になる。(前項の言い直し)
3.化学反応の量的関係が理解しやすくなる
化学反応式では係数がモル比を表現している、例えば水素2個と酸素1つで水になるという反応式は
2H2 + O2 → 2H2O
となる 2モルの水素と1モルの酸素で 2モルの水ができるということで反応式に関わる量を式にいれることが可能である
4.気体の体積の計算に便利
標準状態 0℃で1気圧 において、どんな気体であっても22.4Lの体積になる。これを利用すれば、気体の物質量から体積を、体積から物質量を簡単に計算できるようになる。
5,溶液の濃度表現に便利
モル濃度を使うことで、溶液中の溶質の量を正確に表現できる。
6.異なる物質間の比較が容易
モルを使えば、異なる物質の粒子の数を簡単に比較できる、
例えば1モルの水素分子と1モルの酸素分子といった場合
個数は同じであることを表す
アボガドロ数
モルの意義を理解する時に、アボガドロ数は必須といってよい
というかペアだ。アメデオ・アボガドロという人物が1811年に気体の法則を発見した。同じ温度と同じ圧力の下では、同じ体積の気体には同じ数の分子が含まれるという法則である。
ヨハン・ロシュミットが、気体の分子の大きさを推定して1モルあたりの分子の数はアボガドロ数という概算値として出した。
この状況がしばらく(といっても約100年)続き、ペランが登場する。
ブラウン運動を観察して、その動きの原因が分子の衝突にあることを突き止めた。さまざまに精緻な実験を行い、1モルあたりの分子量を正確に測定したのである、いくつかの方法で分子の数を計算して、正確な値を算出、これをアボガドロ数としたのはペランだ。
この業績で、ペランはノーベル物理学賞を受賞することになる。
物理学への影響
このアボガドロ数は、
アボガドロ数は熱力学において重要な役割を果たしている。エントロピー、エンタルピー、ギブズ自由エネルギーなどの熱力学的性質の計算に不可欠である。
また、気体の法則にも有用である。
気体の法則
理想気体の法則や他の気体法則(ボイルの法則、シャルルの法則、ゲイ・リュサックの法則など)の計算にアボガドロ数が使用される。これにより、気体の巨視的性質(圧力、体積、温度)と気体試料中の粒子数を関連付けることができるのだ。
量子力学において
アボガドロ定数は目に見えない小さな世界と普段の世界をつなぐ架け橋ともなっている。例えば 先述のとおり水素原子を6.02☓10^23 個集めるとちょうど1㌘になるのである。このように日常使う単位に変換できることはとても便利であるが、それ以上に、アボガドロ数を使って新たな発見やら説明がつくこともあるのだ。今日はその説明をしてみよう
デバイモデルなるもの
固体の比熱の温度依存性というものがある。
まず、固体の比熱とはなんだろうか。
その前に比熱というのは、ものを温めるのにどのくらいのエネルギーが必要かということである。湯を沸かすのにお湯になる(正確には温度があがる)まで要するエネルギーのことである。この時、固体の中で、原子はくっついている。しかし完全にくっついているわけではなく揺れ動いている。
この揺れ動きが実は熱になる。科学者デバイはこの原子の揺れ動きを音の波のようだと考えた。熱は音波のように揺れ動きによって運ばれる。
低い温度のときには、原子の揺れ方は小さく、ゆっくりで、温めるにも必要なエネルギーも低い。温度が上がってくると原子の揺れ方は大きく速くなる。こうなると温めるのに必要なエネルギーは増えるのである。
そして、もっと高い温度になると、原子の揺れ動きは激しくなり、これ以上激しくならない状態に達する。そうなると温めるのに必要なエネルギーも変わらなくなっていく・・・という具合である。
これを考えるためには、アボガドロ数は必須だ。1モルの物質の定義があればこそ固体の比熱を1モルあたりで考え、粒子数がわかり、基準とできる。
状態密度の計算において、フォノンの状態密度を計算する フォノンというのは、さきほどの固体の中で原子が振動する様子を表す。箱の中にボールをいれるとすると、そのボールが小さいと、状態密度は高くなる。大きいと状態密度は下がる(あまり箱の中に入らない)つまり、フォノンの状態密度とは、固体の中でどのような振動(フォノン)がどれくらい存在できるかを指す。 さて、このフォノンの計算をするときに、単位面積あたりの振動モードの数を正確に求めることができる。
このNがアボガドロ定数で、単位面積あたりの原子の数を示す。
ちなみに、Kbとはボルツマン定数である。
ボルツマン定数は、S=klogW という式に出てくるこれがエントロピーSを表すのである。熱の伝わり方はエントロピー(散らかり具合という人もいる)にも関係するのであるが、ここでは単に振動エネルギーと温度の単位を変換するためにボルツマン定数が使われている。
温度1ケ温度1ケルビンにおける平均的なエネルギーは kB×1 Kk_B \times 1 \, KkB×1K と計算されます。ボルツマン定数は、系のエントロピー(無秩序の度合いや情報の欠如を表す物理量)を計算する際にも重要な役割を果たす。デバイモデルの比熱の計算式では、ボルツマン定数が比熱と温度の関係を明示的に示す。比熱の式において、kB は物質が温まるときに吸収または放出するエネルギー量を温度と関連づける役割を果たすのである。
そして、比熱の式をみると、温度が低ければ・・・といった具合にいろんなことがわかる。式をみるといろんな現象が式で説明でき、その検証についていえば、アボガドロ数があるからこそ、検証しやすくなっているといえる。検証しやすいことは、トライ&エラーができるということにつながり、さらに精度を増すのである。
ちょっと 脱線しすぎたようである。
ここで、ペランの功績に話を戻そう。
分子の実在性
アボガドロ数は、分子の実在性を証明する上で決定的な役割を果たした。この数値が持つ意義は、単なる大きな数字以上のものであり、目に見えない微小な世界と我々の日常的な世界を結びつける架け橋となったのである。19世紀初頭、アメデオ・アヴォガドロが提唱した仮説は、当時の科学界では受け入れられなかった。彼の主張する「同一の温度・圧力・体積の気体には同数の分子が含まれる」という考えは、あまりにも革新的であった。しかし、この仮説こそが後の分子論の基礎となり、アボガドロ数の概念へと発展していくのである。アボガドロ数の重要性が真に認識されるまでには、長い年月を要した。19世紀後半、ヨハン・ロシュミットによる気体分子数の最初の測定が行われ、アボガドロ数の概算値が得られた。しかし、これはあくまでも間接的な証拠に過ぎなかった。真の転機は20世紀初頭に訪れる。1905年、アルバート・アインシュタインがブラウン運動の理論を発表した。この理論は、液体中の微粒子の不規則な動きを、液体分子の熱運動による衝突で説明するものであった。アインシュタインの理論は、分子の実在性を示唆する強力な証拠となったが、それでもなお、直接的な証明には至らなかった。そして1909年、フランスの物理学者ジャン・ペランが、アインシュタインの理論を実験的に検証することに成功した。ペランは、コロイド粒子の運動を精密に観察し、その結果からアボガドロ数を算出した。この実験結果は、分子の実在性を直接的に証明するものであり、科学界に衝撃を与えた。ペランの実験の意義は計り知れない。それまで仮説の域を出なかった分子の存在が、ついに実証されたのである。
アボガドロ数は、もはや単なる理論上の数値ではなく、実験によって裏付けられた物理的実在となった。この発見により、原子論を否定していた化学者たちも、その存在を認めざるを得なくなったのである。アボガドロ数の発見は、化学と物理学の境界を曖昧にし、両者を統合する新たな視点をもたらした。それは、マクロな世界とミクロな世界を結びつける架け橋となり、物質の本質に対する我々の理解を根本から変革したのである。さらに、アボガドロ数の精密な測定は、他の物理定数の決定にも大きな影響を与えた。例えば、プランク定数やボルツマン定数など、量子力学や統計力学の基礎となる定数の値が、アボガドロ数を介して精密に決定されるようになった。これにより、ミクロな世界の現象をより正確に記述し、予測することが可能となったのである。アボガドロ数の発見は、科学の歴史における一大転換点であった。それは、目に見えない世界の存在を確かなものとし、我々の物質観を根本から変えた。分子の実在性が証明されたことで、化学反応や物理現象の本質的な理解が進み、新たな技術や材料の開発への道が開かれたのである。現代においても、アボガドロ数の重要性は変わらない。むしろ、ナノテクノロジーや量子技術の発展により、その意義はますます高まっている。分子レベルでの操作や観察が可能になった今、アボガドロ数は我々の日常世界と量子の世界を結ぶ重要な指標となっているのである。アボガドロ数の発見と分子の実在性の証明は、科学の進歩における偉大な一歩であった。それは、目に見えないものの存在を認め、理解しようとする人類の知的冒険の象徴であり、今なお我々の科学的探究の指針となっているのである。
あとがき
はっきりいうと、もっと書きたいことがあったのだが、
勉強不足でかけなかった。このnoteでは、もっと勉強して、理系関連のこともどんどん書いていこうと思う。
次回は、もう少し詳しく量子物理学に関して書こうと思う。