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いわしの日

まえがき

いわしが不漁というニュースを耳にするたび、その時に引き合いに出すNoteが、
60年周期問題、環境汚染とか乱獲とかは関係なく起きる。という内容だったが、
不評をかった。今日はちょっと配慮しておこうと思う。


環境について

環境の変化は、私たちに多角的かつ深遠な思索を要求する。単にイワシの漁獲量の増減のみを以て、生態系の変動を捉えようとするのは浅慮と言わざるを得ない。自然界の営みは、はるかに複雑で微妙な均衡の上に成り立っているのである。

古来より日本人に親しまれてきたイワシは、「イワシの頭も信心かな」という諺に象徴されるように、一見取るに足らない存在として扱われることがあった。確かに、その名の由来とされる「弱し」の文字が示すように、陸に上げられるとすぐに命を落とす繊細な魚である。しかし、この小さな魚体に秘められた栄養価の豊かさは、まさに驚嘆に値する。

イワシは海の栄養の元

イワシは単なる食材としての価値を超え、人類の健康と生存に不可欠な栄養素の宝庫なのである。ここで、分子栄養学の知見を援用しながら、イワシの持つ驚異的な栄養価について詳細に論じてみたい。

まず、イワシに豊富に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)について触れねばならない。これらのオメガ3系脂肪酸は、人体にとって極めて重要な役割を果たす。DHAは脳の発達と機能維持に不可欠であり、認知機能の向上や認知症予防に寄与する。一方、EPAは抗炎症作用を持ち、心血管系疾患のリスク低減に貢献する。

分子レベルで見ると、DHAとEPAは細胞膜の主要構成成分として機能し、膜の流動性を高めることで、細胞間のシグナル伝達を円滑にする。これにより、神経系の機能が最適化され、脳の可塑性が向上する。また、これらの脂肪酸は、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの生理活性物質の前駆体としても重要である。

イワシに含まれるタンパク質も、その質の高さゆえに注目に値する。イワシのタンパク質は、必須アミノ酸をバランスよく含んでおり、体内での利用効率が極めて高い。特に、リジンやトリプトファンなどの必須アミノ酸が豊富に含まれている点は特筆すべきである。

これらのアミノ酸は、体内でのタンパク質合成に不可欠であり、筋肉の維持や免疫機能の強化に寄与する。さらに、トリプトファンはセロトニンの前駆体として知られ、精神の安定や睡眠の質の向上にも関与している。

イワシに含まれるビタミンD3も、その重要性を看過してはならない。ビタミンD3は、カルシウムの吸収を促進し、骨の健康維持に不可欠な栄養素である。しかし、その役割はそれにとどまらない。近年の研究により、ビタミンD3が免疫系の調節や細胞の分化・増殖にも関与していることが明らかになっている。

分子レベルでは、ビタミンD3は核内受容体を介して遺伝子発現を調節する。これにより、カルシウム結合タンパク質の産生を促進し、骨代謝を制御するだけでなく、免疫細胞の機能調節や炎症反応の抑制にも関与する。さらに、ビタミンD3は細胞周期の制御にも関与しており、がん予防の観点からも注目されている。

セレン

イワシに含まれるセレンも、その抗酸化作用ゆえに重要である。セレンは、グルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素の構成成分として機能し、活性酸素による細胞損傷を防ぐ。これにより、老化の抑制やがん予防に寄与する可能性がある。

分子レベルでは、セレンはセレノプロテインの形で存在し、これらのタンパク質が様々な生理機能を担っている。例えば、ヨードチロニン脱ヨード酵素は甲状腺ホルモンの代謝に関与し、チオレドキシン還元酵素は細胞内の酸化還元状態の維持に重要な役割を果たす。

イワシに含まれるビタミンB12も、その重要性を強調しておきたい。ビタミンB12は、DNA合成や赤血球の形成に不可欠な栄養素である。特に、葉酸と協調して働き、ホモシステインの代謝に関与する。ホモシステインの血中濃度上昇は、心血管疾患のリスク因子として知られており、ビタミンB12の適切な摂取はこのリスクの低減に寄与する。

分子レベルでは、ビタミンB12はメチルマロニルCoAムターゼやメチオニン合成酵素の補酵素として機能する。これらの酵素は、脂肪酸の代謝やメチオニンの再合成に関与しており、エネルギー代謝や遺伝子のメチル化など、広範な生理機能に影響を及ぼす。

イワシに含まれるカルシウムも、その生体利用率の高さから注目に値する。イワシは骨ごと食べられるため、カルシウムの摂取源として極めて効果的である。カルシウムは骨や歯の形成に不可欠であるだけでなく、筋肉の収縮や神経伝達、血液凝固など、多岐にわたる生理機能に関与している。

分子レベルでは、カルシウムは細胞内シグナル伝達の重要な因子として機能する。カルシウムイオンの細胞内濃度の変化は、様々な細胞応答を引き起こし、筋収縮や神経伝達物質の放出、ホルモン分泌などを制御している。

以上のように、イワシは単なる食材としての価値を超え、人類の健康と生存に不可欠な栄養素の宝庫である。その小さな体に秘められた栄養価の豊かさは、まさに自然の驚異と言えよう。

環境への配慮

しかし、ここで立ち止まって考えねばならないのは、このような貴重な資源を持続可能な形で利用していく方策である。イワシの漁獲量の変動は、単なる経済的な問題ではなく、生態系全体のバランスと深く関わっている。

近年、地球温暖化や海洋酸性化などの環境変化が、海洋生態系に大きな影響を及ぼしていることが指摘されている。これらの変化は、プランクトンの分布や量に影響を与え、ひいてはイワシなどの小型魚類の生態にも影響を及ぼす。さらに、これらの変化は食物連鎖を通じて、より大型の魚類や海洋哺乳類にまで波及する可能性がある。

したがって、イワシの漁獲量の変動を単独で捉えるのではなく、海洋生態系全体の変化の一部として理解する必要がある。そのためには、海洋物理学、生態学、気候学など、多岐にわたる分野の知見を統合し、総合的な視点から海洋環境の変化を捉える努力が求められる。

同時に、イワシの持続可能な利用を実現するためには、科学的な資源管理と環境保全の取り組みが不可欠である。具体的には、適切な漁獲制限の設定や、産卵場所の保護、海洋汚染の防止などが挙げられる。これらの取り組みは、イワシだけでなく、海洋生態系全体の健全性を維持する上で極めて重要である。

さらに、イワシの栄養価の高さを広く認識し、その消費を促進することも重要である。イワシは比較的安価で入手しやすい魚であり、その積極的な利用は、人々の健康増進と食料安全保障の観点からも有意義である。同時に、イワシの消費拡大は、より環境負荷の高い食品への依存を減らし、持続可能な食生活の実現にも寄与する可能性がある。

最後に、イワシを通じて私たちが学ぶべきことは、自然界の驚異的な知恵と、生態系の複雑な相互関係である。一見取るに足らない小魚が、これほどまでに豊かな栄養価を持ち、生態系の中で重要な役割を果たしているという事実は、私たちに自然への畏敬の念を抱かせる。

同時に、イワシの存在は、私たち人類が自然の一部であり、自然との共生なくしては生存し得ないという事実を改めて想起させる。イワシの持続可能な利用と保全は、単に一つの魚種の問題ではなく、人類と自然との関係性を問い直す契機となるのである。

このように、イワシを通じて環境変化を考察することは、私たちに多角的かつ深遠な思索を促す。それは、生態学的な視点から人類の健康と栄養を考え、さらには持続可能な社会の在り方を模索する壮大な知的冒険である。イワシという小さな魚が、これほどまでに大きな示唆を私たちに与えてくれることに、あらためて驚きを覚えずにはいられない。

再びのセレン

セレンはあまり馴染みがないかもしれない。
イワシの他にわかさぎなどにも含まれているというが、
実は、日本の土壌には多く含まれる物質のためである。
野菜からも摂取できる。
ネギ、ニンニクはセレンを多く含む。椎茸などのきのこ類にも含まれる。
土壌に多く含まれる物質であるからして、産地、というか産地の土壌によって含有量は異なる。


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