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重陽の節句


3月3日は桃の節句、
5月5日は菖蒲の節句
7月7日は七夕
と奇数が月日が重なる日には
なんかしら行事がある
いずれも中国から宮廷行事などで伝わり
それが庶民にも広まったものだが
9月9日の今日は何故か盛んではない。

中国では大きな奇数が重なるこの日の先は陰に転ずることを恐れ
先の災いを恐れて邪気を払う必要があった、そのために高い山に登ったりする。
高い山に登ることは邪気を払う方策とのことである
邪気を払う方法には、菊の花が用いられたり、茱萸を噛んだりするのだが、この中で本朝では、菊についてだけ残っているようである。
その流れで、菊慈童の話を付け足してみようと思う。

菊慈童

 日本の古典などを読むと実に曖昧なことが多いので
私はフランス語など他の言語で読むことがある
そうすることで、因果関係が明らかになることもあるがある
その例に倣ってフランス語で概略をつかもう。

Kiku Jidō est une pièce de théâtre nō qui raconte l'histoire suivante:

Un envoyé impérial de la dynastie Wei en Chine ancienne est envoyé dans les montagnes pour enquêter sur une source d'eau miraculeuse. Là, il rencontre un jeune garçon étrange nommé Jidō

Ce garçon révèle qu'il était autrefois au service de l'empereur Mu de la dynastie Zhou, il y a 700 ans. Il explique qu'il a obtenu l'immortalité en buvant la rosée des feuilles de chrysanthème sur lesquelles il avait transcrit un verset bouddhique.

Jidō montre à l'envoyé un oreiller offert par l'empereur Mu, sur lequel est inscrit ce verset. Il danse joyeusement parmi les chrysanthèmes et offre à l'empereur actuel le secret de la longévité avant de disparaître.

Cette pièce mêle des éléments de la mythologie chinoise, du bouddhisme et des croyances traditionnelles sur les propriétés médicinales du chrysanthème. Elle explore les thèmes de l'immortalité et de la longévité, qui sont des désirs universels de l'humanité.

菊慈童は能の舞台になったことでるが、元の話は次のようなものだ。
中国が魏王朝だった頃、奇跡の水の源流の山に派遣された者が慈童と名乗る子供にあった
その子供は周王朝に仕えていた者で、誤って穆王皇帝の枕を跨いだことを咎められ、酈縣山に流罪となった、穆王は慈童を憐れみ、法華経の偈の書かれた枕を与えた。彼は、その偈を菊の葉に写しその露を飲むことで不老不死となったという慈童は穆王から贈られた枕を見せて
菊の中で楽しげに舞い皇帝に長寿の秘訣を伝えて姿を消した。

中国の皇帝のモラルや、仏教、菊の薬効などなど
様々なトピックスが入り混じる

菊と長寿

日本の平安時代には、重陽の節句の前夜に菊の花にわたを被せ、て
その露に濡れた綿で肌を拭くと老いを捨てられる
という風習があった

菊は中国では、長寿や高潔さの象徴とされていて
道教の民間信仰が不老不死の仙人のトピックが
混在して伝わり、このような伝説ができたのかも知れない

菊には、独特の香りと苦味がある、
これらの特性が邪気や悪霊を払う力があると考えられ
邪気や病気の対義として不老不死があると発想したのか

菊の生命力

菊は寒さに強く、他の花が枯れる季節に咲き続ける
この強い生命力と菊の生態が邪気に打ち勝つ力がある
と考えられたことと、
菊は、五行の金に属し、浄化や邪気払いの力があるという
陰陽五行説からの連想がある
さらに日本では、皇室の紋章として菊があることから
神聖さや霊力と菊が結びつけられた経緯もあるのであろう

神皇本草経には、菊がめまいや対老延年の薬として記載されているほか、菊は蘭、竹、梅とともに四君子として詩に詠まれ
文様にも使われてきた

陸游の詠んだ「菊」を紹介する

  「东篱把酒黄昏后,有暗香盈袖。
   莫道不消魂,帘卷西风,人比黄花瘦。」

  (東篱にて酒を把りて黄昏の後、暗香袖に盈つ。
   消魂せずと道う莫かれ、帘は西風に巻かれ、人は黄花より瘦せたり。)

そうはいっても、人は弱いもので、菊は強いと
ちょっと相対的に菊を捉えているようにもとれる。

人生は不老不死とはいかず、儚く、無常である。
それを受け容れることが一番の神仙で、そして宇宙との合一も果たせる
妙薬であるように思う。

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