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マラソンと上下動

まえがき

マラソンというものに、縁遠い生活をしていて、そのわりには箱根駅伝を
正月に必ずみて、そのたびにジョギングでもしようかなぁ、と思い立ってはすぐにやめている者です。

上記の記事では、マラソンについて、歴史なぞを書いている。
もともと、長距離は苦手だが、観戦するのは好きらしい。
今日は、ちょっとだけマラソンについて考えてみた

ランニングエコノミー

ランニングエコノミーとは、一定の速度で走る際に必要なエネルギー消費量のことを指す。同じ速度でもランナーによってエネルギー消費が異なることがある。優れたランナーは燃費がよく、同じ速度でも少ないエネルギーで走る。

マラソンでは、空気抵抗も無視できない要素で、空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなる。昔、こんな式を習った。

空気抵抗の式

空気抵抗は 速さが増すほど2乗してかかる。スピードを争うマラソンではなおのこと、向かい風がランナーにとっていかに大変かわかる式である。

ランナーのフォームはきれいな人が多い。
きっと一定の姿勢を保っているんだと予想してみて、
実は、上下動は推進力に重要な要素だとのことである。
もちろん、ヒョコヒョコと上下動が激しいと無駄なエネルギーがかかる。
エコではない。でもあまりにも上下動がないと推進力がつかない。
ちょうどいい上下動は体重の10%とのことである。
??
体重の10%分上下動するってどういうことだ?
つまりは60kgの体重の人は6kg分上下に動く、、、

運動エネルギー = 位置エネルギー
 1/2 * m * v² = m * g * h

ということか、、、
vにはもちろん、g(重力加速度)を代入して、mは体重の60の1/10を入れて、hを算出すればよい。2−3cmということになるが、、、

上下動についての考察

 この10%という数値が持つ意味は深い。過度に大きな上下動は、重力に逆らって体を持ち上げる際に余分なエネルギーを消費し、効率を低下させる。一方、上下動が小さすぎると、地面からの反発力を十分に活用できず、前進力の生成が不十分となる。10%程度の上下動は、この両極端の間のバランスポイントであり、地面からの反発力を最大限に利用しつつ、不要な垂直方向の動きを最小限に抑える最適解と言える。

 この理想的な上下動を実現することで、ランナーは地面を効果的に「バネ」として利用できる。着地の瞬間、体重と運動エネルギーによって地面を押し下げ、その反発力を次の一歩の推進力として活用する。この過程で、筋肉や腱の弾性エネルギーも効率的に利用される。結果として、より少ないエネルギー消費で、より大きな推進力を得ることが可能となる。上下動を重力の10%、すなわち体重60kgのランナーで約3cmとする算出過程は、理論と実践の融合から導き出されている。まず、力学的な計算により、体重に対する上下動の理論値が算出される。これに加え、実際のランナーの動きを高速カメラやモーションキャプチャーシステムで分析し、効率的な走りを実現しているランナーの上下動を測定する。これらのデータを統合し、統計的な処理を加えることで、最適な上下動の範囲が決定される。さらに、生体力学的な観点からも、この数値の妥当性が裏付けられる。人体の筋肉や腱の弾性特性、関節の可動域、エネルギー代謝の効率などを考慮し、理論値と実測値の整合性が確認される。また、様々な走速度や地形での検証を重ね、幅広い条件下での適用可能性も検討される。このように、3cmという具体的な数値は、純粋な物理学的計算のみならず、生体力学、運動生理学、統計学などの多角的なアプローチによって導き出されている。それゆえ、この数値は単なる理論上の概念ではなく、実践的な指標としての価値を持つ。
 
 しかしながら、物理学が示す理論値を実際のランニングで実現することは、容易ではない。(マラソンのコーチに2−3cm上下動で走れと言われても困る。。。)理想的な上下動を維持しながら走るためには、適切なフォームを体得し、それを長時間にわたって保持する能力が必要となる。これは、単に理論を理解するだけでは達成できず、継続的な練習と身体感覚の洗練が不可欠である。フォームの体得には、複数の要素が関与する。まず、適切な姿勢の維持が重要である。上半身をわずかに前傾させ、腰を安定させることで、効率的な重心移動が可能となる。次に、着地時の衝撃吸収と推進力の生成のバランスが求められる。
 これには、足首、膝、股関節の適切な屈伸と、筋肉の弾性的な使用が必要となる。さらに、腕の振りと脚の動きの協調も、全体的なバランスと効率に大きく寄与する。これらの要素を統合し、理想的なフォームを維持するには、反復練習による運動学習が不可欠である。初期段階では、意識的にフォームを制御する必要があるが、練習を重ねるにつれ、適切な動きが無意識のうちに行われるようになる。この過程で、筋肉の協調性や神経系の反応速度も向上し、より効率的な走りが可能となる。加えて、個々のランナーの身体特性や走行環境に応じた微調整も必要となる。体格、筋力、柔軟性などの個人差や、走行路面の状態、気象条件などの外的要因によっても、最適なフォームは微妙に変化する。したがって、理論的な知識を基盤としつつ、自身の身体感覚を研ぎ澄まし、環境に応じた適応能力を養うことが重要である。

 このように、マラソンにおける理想的な上下動の実現は、物理学的理論と実践的な身体技能の融合によって達成される。理論が示す3cmという数値は、効率的な走りの指標として有用であるが、それを実現するためには、継続的な練習と身体感覚の洗練が不可欠である。ランナーは、科学的知見を理解しつつ、自身の身体と対話を重ね、理想的なフォームを体得していく必要がある。この過程は、単なる運動技能の向上にとどまらず、自己の身体への深い理解と、環境との調和を追求する営みでもある。マラソンという競技は、人間の身体能力の極限に挑戦する場であると同時に、物理学的法則と人体の生理学的特性が交錯する興味深い研究対象でもある。ランナーたちは、日々の練習を通じて、この壮大な実験に参加しているのである。

 結論として、マラソンにおける理想的な上下動の追求は、科学と芸術の融合点に位置する。物理学が示す理論的指針と、実践を通じて培われる身体感覚の調和が、真に効率的で美しい走りを生み出す。この調和の実現こそが、マラソンランナーの永遠の課題であり、同時に魅力でもある。科学的知見を糧としつつ、自身の身体と向き合い、一歩一歩、理想的な走りに近づいていく。その過程こそが、マラソンという競技の本質的な価値を体現しているのである。

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