オペラの日
まえがき
天むすという食べ物の記念日らしいが
あまり縁が無い
ばらばらのものを一つにする・・・
そんな橋渡し文化が名古屋にはあるのかもしれない
天ぷら+おむすび というわけである。
我ながら、天むすとオペラをうまく橋渡ししている
課題をみるとモンテベルディの名前が出ている
モンテヴェルディとオペラ
クラウディオ・モンテヴェルディ(1567-1643)は、ルネサンス後期からバロック初期にかけて活躍したイタリアの作曲家で、
オペラ発展の重要な先駆者として知られている。
主な功績
16世紀末に誕生したオペラを大きく発展させた
バロック音楽の基礎となる作曲技法を創り出した
代表的なオペラ作品
モンテヴェルディは生涯で少なくとも18曲のオペラを作曲した。
現存しているのは以下の3作品である。
『オルフェオ』(L'Orfeo) - 1607年
『ウリッセの帰還』(Il ritorno d'Ulisse in patria) - 1640年
『ポッペーアの戴冠』(L'incoronazione di Poppea) - 1642年
・『オルフェオ』について
モンテヴェルディの最初のオペラであり、
現在も頻繁に上演される最古のオペラの一つである。
特徴
ギリシャ神話のオルフェウスの物語に基づく
1607年にマントヴァの宮廷で初演された
劇的な力強さと革新的なオーケストレーションが特徴
各声部への楽器指定を行った最初期の作品の一つ
モンテヴェルディの音楽的革新
モンテヴェルディは、従来のルネサンス音楽から新しいバロック様式への橋渡しをした作曲家として重要である。
新しい音楽表現
「第二作法」(Seconda pratica)と呼ばれる新しい作曲技法を提唱
不協和音を取り入れて心理表現を掘り下げた
言葉が生む情感を多彩な音作りで描写
晩年の傑作
モンテヴェルディは晩年に2つの傑作オペラを作曲
『ウリッセの帰還』(1640年)
『ポッペーアの戴冠』(1642年)
特に『ポッペーアの戴冠』は、ローマ皇帝ネロを題材にした史劇で、
悲劇的、抒情的、コミカルな場面を含み、登場人物の写実的な描写や暖かい旋律により、
モンテヴェルディの最高傑作とも言われている。
モンテヴェルディのオペラは、音楽史上重要な位置を占め、
その革新的な手法は後世の作曲家たちに大きな影響を与えたのだ。
オルフェウス
オルフェウスは、ギリシア神話に登場する伝説的な音楽家で吟遊詩人。
彼はムーサイの一人カリオペーとトラキア王オイアグロスの子とされ、
アポロン神から竪琴の演奏技術を授かったと言われている。
驚異的な音楽の才能
オルフェウスの音楽の才能は非常に優れており、彼が竪琴を弾くと、動物たちだけでなく、
木々や岩までもが彼の周りに集まって耳を傾けたという。
・エウリュディケーとの出会いと悲劇
オルフェウスは美しいニンフのエウリュディケーと結婚した。
しかし、エウリュディケーは散歩中に蛇に噛まれて死んでしまう。
・冥界への旅
悲嘆に暮れたオルフェウスは、妻を取り戻すために冥界に下る
彼の美しい音楽は冥界の支配者ハーデースとペルセポネーの心を動かし、
エウリュディケーを地上に連れ戻す許可を得た。
・悲劇的な結末
ハーデースは「冥界から出るまで振り返ってはならない」という条件を付けた。しかし、地上に出る直前にオルフェウスは不安になり、後ろを振り返ってしまう。
その瞬間、エウリュディケーは永遠に冥界へ消えてしまう
・オルフェウスの最期
妻を失ったオルフェウスは、女性との愛を絶つ。
ディオニュソスの祭りの際、
狂乱した女たちに八つ裂きにされて殺されてしまう
この題材は後世に焼き直されることになる
ジャン・コクトーの戯曲「オルフェ」
や、マルセル・カミュの「黒いオルフェ」など
現代の現代の芸術作品にも影響を与える
黒いオルフェは
リオデジャネイロのカーニバルの前夜にはじまる
車掌オルフェウスは田舎から出てきたエウリディセと恋に落ちる
エウリディセは死神の象徴である男から逃れようとして
感電死してしまう
オルフェは彼女の死体を探し、霊安室で彼女と「対話」する
最終的にオルフェはエウリディセの遺体を抱えて崖から転落する
二人の死後もカーニバルは続き
子どもたちがオルフェの歌を歌い継ぐ・・・
オルフェウスは音楽の才能があったことにちなむのか
「黒いオルフェ」という映画では、
マニャデカルナヴァル、悲しみよさようなら、オルフェのサンバなど
ボサノヴァの名曲の数々が彩る
この映画はパルム・ドール賞を受賞するが、ボサノヴァという音楽ジャンルの普及にとても
貢献した。
マニャ・デ・カルナヴァルは
スタン・ゲッツ、ポール・デズモンド、キャノンボール・アダレイなどによって
それぞれの解釈で歌い継がれたのである。
冥界とこの世
オルフェウスの物語について考察を進めよう
・いざなぎ
この物語のプロットは
イザナギとイザナミの物語に酷似している
黄泉の国からイザナミを取り戻そうとするが
やはり見てしまいかなわないというあらすじまで一致している
これは、普遍的な人間の経験、すなわち
愛する人を失った悲しみとその人を取り戻したいという願望は
人類の通底にあり、その普遍的な感情がよく現れている
スキタイ人がこの物語を伝えたというが
それはロマンすぎる。
普遍的でいえば、そもそもシャーマンというか
冥界という概念が宗教的要素である
そもそも文化は死を不浄なものとして
生活圏がら遠ざけることから始まっているのだ。
メアリーダグラスは境界と分類が社会秩序を維持するのに
重要な役割を説くとし、
人類学者のアーネスト・ベッカーは生者の世界から分離するのは
死の世界から人間を遠ざけることが、死への恐怖から免れる
象徴的なシステムを作る出すと論じた
キリスト教の天国の概念、
あるいは、仏教の輪廻転生の思想は、
死後も霊魂は不滅しないと説くが、これは市の境を和らげているとともに
道徳的観念をあぶり出す
英雄的システムといわれるもの、
人間の生命の重要性についての神話を作り出し
その英雄の物語が死後も記憶され影響力を持ち続けることで
人々が人生の意味を見出し、死の恐怖を軽減するのに貢献する
文化的遺産もその装置で、ピラミッドや兵馬俑など支配者の不滅性プロジェクトの形態をなす
あるいは芸術作品や創造性ということも
死後も影響を与え続ける。
そのほか、科学技術や、社会的地位というものも
個人の存在価値を高め、永続性の関学を与えるのである
また、社会学者デュルケームは
死に関するさまざまな儀式が社会的結束を強化する機能を持つ
と指摘した、つまり、葬儀や追悼式はコミュニティのキヅナを再確認して
強化する機会となるということである、
これには、批判的な考え方も当然ある
・神は死んだとするニーチェは、
死後の世界や魂の不滅を説くことで、
現世での生の価値を貶める
宗教は死後に希望を提供するが、現実の死から遠ざけ
そこで終わるものをわざわざ長引かせる
つまり生の苦しみも延長されてしまう。死の不可逆性を受け入れることで
新たな価値観を創造することを説いた
・ハイデガーは
死を「存在の全体性」を理解するための鍵であると捉え
死を直視することで本来的な存在が可能になると主張した
カミュも同様に、不条理を受け入れることで
生きる意味を見出すのだと提唱したのである。
さて、
σπαραγμός
オルフェウスは酒の神でもあるディオニュソスの祭で
狂乱した女たちに八つ裂きにされてしまうのであるが・・・
八つ裂きにする行為は
スパラグモス(σπαραγμός)呼ばれる
ディオニュソスの崇拝の大事な要素である
神の死と再生のサイクルの象徴なのである。
冬の終わりと春の始まりを指すのである。
狂乱状態は酒の神ならではで、祭りの間は社会的な秩序が一時的に
乱れていることは実は再生・更新のプロセスを象徴するのである
また、ここで狂乱しているということは
ディオニュソスの熱狂的な信者であるマイナディスたちによってこの行為がされた
のであるからして、オルフェウスをお供え物にしたということも考えられるのである
さて、再び
モンテヴェルディに戻ろう
モンテヴェルディは、
不協和音を用いて対位法を逸脱して、
不協和音を積極的に用いた
苦しみ、死などは不協和音で奏でるのである
それと音楽と言葉を一致させた
「言葉はアルモニアの主人であって召使いではない」
つまり、歌詞の内容や感情に合わせて音楽を作ったのである
歌詞が荒々しさや冷酷を表すと音楽も硬くトゲトゲしくなるといった感じである。
不協和音の使用は死という言葉のときであり
実は冥界と現世の世界を別にする役割を表しているのかも知れない
つまり音楽の世界をわけて
現世については和音を奏でて
冥界は不協和音で奏でるといった感じである
言行一致ならぬ 言旋一致は
感情表現を豊かにして、
心理表現を掘り下げることは、
感情を表現する人間の生の強調とみてとることができる
ルネサンス期の第一作法から進めている
つまり、ルネサンスでは宗教音楽で
みんなで一緒に歌唱していた形式から
舞台を貴族の館に移して楽器も一緒に奏でるようになったのは
バロック期に盛んになる
モンテベルディは先んじて
先駆的はオペラを作ったのである
このことからバロックへ橋渡しをしたと評価されるのだ。