看護師の東大SPH受験体験記
初めまして、Risaです。この度、東京大学大学院医学研究科公共健康医学専攻(いわゆる東大SPH)の2年コースから合格を頂きました。学部時代から東大SPHへの進学を考えていたため、大変嬉しく思います。
私自身も先輩方の受験体験記を参考にした経験があるので、受験が終わったこのタイミングで受験体験記を書いてみることにしました。再現性があるかはわかりませんが、何かのお役に立ったら嬉しいです。
SPHやMPH関する情報は調べたら沢山出てくるので、ここでは割愛させて頂きます。
私について
大学卒業後から現在まで都内の大学病院にて看護師として勤務しています。新卒三年目です。ちなみに保健師免許は持っていないです。
SPHの志望理由
大学時代に入っていた公衆衛生学研究会、当時読んでいた健康格差に関する本がきっかけとなり公衆衛生分野に関心を持つようになりました。
看護×公衆衛生=保健師のイメージが強く、どんな仕事かを知るために学部時代に東京都主催の保健師インターンシップに参加したこともありました。しかし当時の私のやりたいこととはマッチせず、長いこと悶々としていました。現在でもキャリア迷子中。(保健師免許を持っていないので、そもそも保健師として働く道は無かったです。)
キャリアの方向性に関するヒントを得るため、自身の専門性を高めるためにMPHの取得を考えるようになりました。
なぜ東大なのか
①修了者の満足度が高いから
②縦横の繋がりが強そうだから
③入学後に研究内容や研究室を決められるから
④筆記試験勝負だから
⑤進学するなら国立と決めていたから
⑥東京に住んでいるから
実際問題、学費や立地は重要なポイントでした。また、これまで研究をしたり論文を書いた経験がなく、興味関心が広い私にとって東大のシステムはマッチしているように感じました。加えて、学部時代の成績が良くない私にとっては、筆記試験でおおよその合否が決まる東大の入試方式がむしろ有難く感じました。さらにさらに、在学中の先輩からお話を聞く中で、東大SPHへ進学したいという気持ちがさらに強くなりました。
結局、東大単願で受験しました。
受験を決めた時期
本格的に考えたのは2022年の冬くらい。社会人三年目という個人的に区切りの時期であり、看護師として働き続けるつもりもなかったため、キャリアチェンジや進学をするならこのタイミングだと考えていました。
勉強開始時点の学力
受験勉強開始時点での学力はこんな感じです。
英語
大学受験レベルの単語文法は予備知識としてあり、英文を読むことには慣れてました。初見で過去問を解いた感想は、専門用語が多い英文や抽象的なテーマの英文が読みづらく感じるけど、全く歯が立たないなという風には感じませんでした。
択一
持ち合わせの知識で解けるような問題以外は全然分かりませんでした。特に医療情報システムや医療倫理周辺は苦手でした。
※持ち合わせの知識で解ける問題とは、
•二次予防に当てはまるものはどれか
•ノロウイルスはどの季節で流行ってるか など
統計
大学受験レベルの数学の予備知識はありました。大学時代に統計学も履修したけど、ほぼ抜け落ちていたので初学みたいなものでした。
専門
持ち合わせの知識で対応できそうな問題以外は全然分かりませんでした。よくよく読めば解けるであろう問題も、問題文のゴツさを前に根負けしてました。
※持ち合わせの知識で対応できる問題とは、
•世論調査の回答率を上げる方法を考える公衆衛生調査法論の大問
•英文を読んで答える精神保健の大問 など
受験勉強について
2023年3月頃から受験勉強をスタートしました。初めの頃は統計の下地を固めることに注力したので、本格的に過去問を解き始めたのは6月から。
受験勉強をする上で、「楽しいことは妥協しない」、「予定がない日は必ず机に向かう」をモットーにしました。集中力が低いこともあり、仕事がある日の勉強時間はせいぜい3時間が限界で、休日も5〜6時間くらいしか勉強できませんでした。勤務体制も不規則なので、7月末までは平均して週3日、1日4時間くらいの勉強量でしょうか。なるべく時間を見つけて勉強するようにしました。私は夜型人間だけど、どんなシフトの日でも極力朝8時に起床するようには心がけました。
例)・準夜勤の前に勉強
・深夜勤入りの日に勉強
・日勤後に勉強
・休日は遊びや飲み会の前に勉強
・飲み会の翌日は早起きして勉強
・仕事の休憩時間や就寝前に暗記
参考までに7月から8月までのシフトを載せてみます。2023年度の東大SPHの筆記試験は21日でした。
自分の集中力の無さは自分が1番良くわかっているので、集中力が切れたら開き直って夜は飲み会や遊びに出かける、突然の誘いは基本断らないというスタイルを貫きました。これが通用したのは、早いうちから勉強を始めたからだと思っています。あと、自分は割と体力がある方なのかもしれません。
また勉強する上で、「英語で失敗しても全体で60%得点すること」を目標に掲げました。普段から英語論文を読む人や帰国子女、ネイティブの人たちに対して英語でアドバンテージは取れないと悟った私は、他の科目の勉強に注力しました。
例えば、1日3時間勉強するとしたら
択一統計(90分)>専門(45分)≧英語(45分)
みたいな分量で勉強していたような気がします。
受験期は、Tootsie Rollさんのブログに大変お世話になりました。こちらで配布されている過去問解答を活用し、過去問を解いていました。英文和訳や論述の模範回答など、到底自分には再現できないなと思いつつ、合格者はこのクオリティの回答を用意してくるんだなと意識しながら勉強しました。
具体的にやったこと
【英語】
配点が大きく、英語が得意な人たちが得点を掻っ攫っていく科目だと思います。先述の通り私は英語でアドバンテージを取れる自信は無かったので、どんなに失敗しても半分は得点することを目標に対策しました。私はSPHで出題されるタイプの英文に慣れることを意識しました。主に語彙力の強化をメインに対策しましたが、必ず知らない単語は出てくるので精読の方が重要だと思います。
《用意したもの》
・過去問(2014〜2023年度)
・分からなかった単語をまとめる用ノート
・WordQuest(九州大学出版)
→学術論文で多用される単語がまとまっていてよかったです。時間も無かったのでセクションを絞って暗記しました。
《実際にしたこと》
・勉強する日は必ず過去問1題分長文を解く。
→意味が分からない箇所を分からないままにしないようにしました。
・単語帳の暗記。
・暇な時にLancetの論文を読む。
→Lancetのアカウントをフォローして、気になる論文を読みました。iPhoneの翻訳機能を使いながら読みました。
【択一】
苦手な科目だったので、過去問の類題を取りこぼさないことを目標にしました。専門科目の対策とオーバーラップする点もあります。最も勉強時間を割きましたが、実際の試験での感触は最も悪かったです。2014年の過去問から解いてますが、古い過去問を解く際は、最新の情報も確認するようにしました。
《用意したもの》
・過去問(2014〜2023年度)
・公衆衛生が見える2022-2023(MEDIC MEDIA)
・わかりやすいEBNと栄養疫学(同文書院)
・保健医療専門職のためのヘルスコミュニケーション学入門(大修館書店)
・まとめ用ノート
《実際にしたこと》
・勉強する日は必ず過去問を1年分解く。
・上記にある教科書を読む。
・分からなかった問題の周辺知識をノートにまとめて暇な時に眺める。
【統計】
配点は低いですが対策すれば安定した得点が見込めるため、しっかり得点したい科目でした。また、合格者の多くが高得点を取ってくるセクションだと思うので、失点もできないというプレッシャーもありました。過去問を解く前に基礎固めをして、あとはひたすら過去問演習をしました。
《用意したもの》
・過去問(2014〜2023年度)
・統計学演習(培風館)
・ヨビノリたくみさんの確率統計分野動画
・まとめ用ノート
《実際にやったこと》
・ヨビノリたくみさんの動画を見る。
・統計学演習の例題を一通り解く。
・勉強する日は必ず過去問を1年分解く。
・分からなかった用語などをノートにまとめて暇な時に眺める。
※現在、学び直し用に読んでいる『Newton別冊 ゼロからわかる確率と統計』が、面白くかつ分かりやすく確率と統計について学べる内容となっています。数学に苦手意識がある方や初学者の方ははじめにこちらを読んでみるのも良いかもしれません。普通に読み物として面白いです。
【専門】
論述問題が苦手な私は対策に苦戦しました。勉強も後回しにしてしまい7月くらいから始めました。大問4題を選択して回答する方式ですが、私は疫学、予防医学、健康教育、精神保健、公衆衛生調査法論の対策を中心に行いました。予防医学や精神保健は、実質は計算問題や英語の長文読解であるケースが多いのでそこまで対策に力は入れませんでした。
《用意したもの》
・過去問(2014〜2022年度)
・わかりやすいEBNと栄養疫学
《実際にやったこと》
・勉強する日は必ず過去問1年分を解く。
・上記の教科書を読む
・分からなかった問題の周辺知識をノートにまとめ、暇な時に眺める。
・疫学や公衆衛生調査法論については、最終的に問題と回答をセットで暗記した。
→目的としては考え方やアイデアをストックするため。
【小論文】
8月ごろより取り掛かり、試験1週間前に完成、そこから丸暗記しました。合計2200字程度で、時間を測って清書したりしました。また、大学の先輩や友人に何度も添削して貰いました。
受験してみた感想
英語
例年よりライティングの設問の比重が大きかったです。Write your answer in Japanese or Englishの但し書きがどこにも見当たらず、ややパニックになりました。結局、全部英語で答えました。
択一
分からない問題が多くて本気で泣きそうでしたが、ここで諦めちゃいけないと最終科目まで踏ん張りました。受験年度の最新の統計データは事前に確認しておくべきだったと後悔しました。結果論ですが、自分が得点できない問題は他の受験者も得点できていないだろう位の心意気で大丈夫だと思います。
統計
自信のない問題もありましたが、とりあえずは解けました。見直しは2回しました。
専門
本番で初めて4題を連続して解きましたが、時間ギリギリに終わりました。大問を一通り見て解けそうな問題から着手。疫学、健康教育、精神保健、公衆衛生調査法論の4つを選択しました。
健康教育の問題文を読んで「やばい分からない」と焦ったのですが、なんとなくの答えの予想と持ち合わせた知識を捻り出して回答しました。(その後に答えを調べたら結構ニアピンだった。)
部分点狙いで、とにかく回答用紙を埋めることに注力しました。反省として、4題ぶっ続けで時間測って過去問解く練習をしても良かったなと思いました。
小論文
用意したもの通りに書き上げました。10分余ったけどかなりギリギリ。余った時間は字が汚い部分を消しゴムで消して書き直したりしました。
当初、択一統計は時間が余るだろうと予想してましたが、最後まで回答を吟味してたらあっという間に終わりました。
試験前日は友達の結婚式に参列していて、感動(とお酒)で泣き疲れたこともあり、まったく勉強に集中できなかった(!)さらに試験の緊張で3時間くらいしか眠れませんでした。
朝は開場時間に到着できるように起床。待機時間はエナジードリンクを飲んで、好きな音楽を聴いてテンション上げるようにしました。お昼は本郷三丁目のローソンで買ったおにぎり二つ。血糖が下がらないようにウイダーインゼリーも買って小論文の前に飲みました。
試験翌日は首周りの筋肉痛が酷く湿布を貼って勤務しました。完治するまで2日くらい掛かりました。本当に痛かった(笑)
実際の得点開示
得点の開示請求をしてみました。結果は以下の通りでした。
英語 81点(130点満点中)
択一 24点(40点満点中)
統計 15点(20点満点中)
専門 45.5点(80点満点中)
小論文 24点(40点満点中)
当初の目標通り得点率6割くらいでした。
最後に
以上が私の受験体験記になります。合格してホッとしてますが、当日会場に入った時は受験者数の多さに圧倒されたし、みんな頭良さそうに見えるし、特に一次試験の合否がわかるまでずっとソワソワしてました。
働きながら受験勉強に臨む方、大学受験ぶりに受験勉強に臨む方も多いと思いますが、息抜きも大事にしながら頑張って下さい🍀
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