福田美蘭展「美術って、なに?」
名古屋で今話題の展示がこの「名古屋市美術館開館35周年記念・福田美蘭『美術って、なに?』」。なんとこの展示、名古屋市美術館のみで巡回しないというのです!マジか!
正直「うまい絵」はさんざん見て来たので、もうお腹がいっぱい。それよりは、新しい「視点」や「発想」のヒントとなるようなモノが見たい。そんなわたしたちの期待も決して裏切らない、いやむしろ、そっちの方がスゴイよ!というのがこの「福田美蘭展」なのでした。
下画像左上はロシアのプーチンさん、モディリアーニ風。ていうか、プーチンさんのお顔そのものがモディリアーニ!その右は、天井の角って死角すぎない?ここに額飾ったら無駄がなくなるんでは?の思い付きから額をオーダーしちゃった!という作品。
右中は仁徳天皇の和歌を元にした作品。もとは民衆のかまどから煙が上がっていないことから彼らの貧困を悟り、税収を控えたという善政を讃えた話。この絵は「爆発=日本に流入する欧米文化」の襲撃に気づかずにいる執政者(?)、という意味だそうな。
左下は写楽の浮世絵を実写風に描いたら・・・の絵。個人的にはこの絵、すごく好き。右下はわたしが手振れを起こしたのではありません。デジカメが台頭してきた頃に「写真をプリントしたらピンボケだった」という経験が貴重になるかも、の発想から描いた作。
会場にはほかにモナ・リザの休憩中の姿や、扉を開けると風景画が現れるような、大掛かりなものもあり。「ただのうまい絵」を期待して見に行ったら逆に肩透かしを食らうユニークな作品たち。
でもわたしが一番気に入ったのは「登場人物の視点で描いてみた」シリーズ。ヌードの女性とスーツの男性、どっかで見たな?と思ったら・・・
元の作品は、マネの有名な作品「草上の昼食」。向かいに寝そべる男性の視点で描かれているんですね。このシリーズ、ほかに何点かあり、どれもおもしろい!
と、ここまでは面白いモノをご紹介して来ましたが、時世を切り取ったシリアスな作品も多く、どれもに共通するのは「疑いの目」をもって物事を見るということ。それが「人と違った視点」につながっているのですね。
作風はアカデミックですが、現代アートの「ジャーナリズム精神」に満ちた作品による「東日本大震災」や「ウクライナ侵攻」「911」などを描いた作品には考えさせられます。
会場の最後に展示されていたのは、時の人ともいえるゼレンスキー大統領でした。