白寿記念・片岡球子展~極める人間と山(日本橋三越本店・2004年5月)
日本橋三越7階ギャラリーで、2004/5/11(火)~23日(日)まで開催中の片岡球子展。珍しく初日に見て来ました。一般¥900
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実は、この方、知りませんでした・・・お恥ずかしい。
植物画展を見に行った友人を誘うと「わたしは、日本画は繊細なのが好きだから、彼女のはちょっと・・・」と言われてしまい、一人で行ってきました。
友人の言うとおり、どどーんとした、迫力ある絵。
上手、とは言いがたいような画風。
日本画家なのか洋画家なのか?と尋ねられることも多く、そう聞かれると「日本人画家」だと答えてきたとか。
珠子さんが言うように、絵を描くということは、心の全部をさらけ出すこと。むき出しの珠子さんは、きっとこの絵そのものなのだろう、と感じました。
歴史上の人物を描いた「面構(つらがまえ)シリーズ」や、富士山などの「山シリーズ」の作品が多く展示。
珠子さんの経歴に驚き!50歳まで教員、代表作は60代以降の作品
珠子さん、画家になる夢をご両親に反対されて、50歳までは小学校の先生をしていたのだそう。
勘当されながらも画業を続け、1930年(昭和5年)、25歳で院展に初入選。
1955年(昭和30年)50歳で小学校教員から女子美大の日本画家専任講師に華麗に転身。40歳で青物問屋から画家に転身した若冲と彷彿とさせますね。
代表作の面構や富士山に取り組み始めたのは1966年(昭和41年)、なんと61歳の時からだといいます。
あまりに大胆な画風から「ゲテモノ扱い」されて悩んだこともあったそうで。でも小林古径の「画風を絶対に変えてはいけない」の言葉を信じて描き続けたのですね・・・
そのとき小林は「ゲテモノと本物は紙一重の差だ」と言ったのだそう。
展覧会の感想
正直、40代頃までの作品はあまりいいとは思えませんでした。
彼女の真骨頂は、やはりライフワークとされている「面構」や山の絵なのだと思います。
特に山の絵は素晴らしい。
富士山のすそを花で飾るなど、大胆なだけではない、女性らしい、細やかな感性を感じます。
また「面構」はどれも、画伯らしい強烈な色彩の絵がほとんどですが、墨絵の大家・雪舟だけは、薄墨色で描かれています。
彼女はこんな風に言っています。
「好奇心がありすぎて、色を使わずにはいられないの。でも、墨絵色に染まったら、雪舟を描いて死のうと思っていた」
でもまだまだお元気。作品はどれも大きく、力強く、とても80代90代の女性の描いたものとは信じられないほど・・・
現在画伯は99歳。
それでもなお、精力的に作品を描き続け、100歳まで同じモデルで30年間裸婦像に取り組むなどの試みもしているそうです。
神奈川県の自宅から、愛知芸大へ、日帰りで教えに行っているそうで・・・3分の一しか生きていないわたしが、疲れたなんぞと言っては、罰が当たりますのう・・・
(執筆:2004.5.11 加筆:2025.1.24)
その4年後の2008年1月16日、珠子さんは103歳で亡くなりました。
亡くなった当時、この記事はすごくたくさんの方に読んでいただきました。